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再始動 -Second Life on-line- そして第二の人生が始まる  作者: 絢奈
第四章 双子の精霊が守りたいモノ
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『何か』

 ライゼンから双子の精霊の話を聞いた後、ライゼン以外の人に海上王国アクエリアに行くことを伝えて屋敷で地図と睨めっこしていた。



 遠出する準備をしていると夜になっており、仕事終わりのフリエスとアリエスが屋敷に帰ってきたので詳しい話を聞いていく。



「ねぇフリエス、アリエス。アクエリアがどういう所か情報あったりする?」


「そう言われると思って冒険者ギルドで集めておきましたよ。一応これが資料です」


「ありがとうアリエス」


「私も生産者ギルドで集めましたよ!でも多分両方ギルドの情報だから基本は同じだと思いますよ?強いて言うなら生産関連の情報か冒険者関連の情報かって感じですねー」


「フリエスもありがとう。これだけ情報あれば大丈夫だと思うからお風呂入ってきて大丈夫だよ」


「わかりました、では行ってきますね」


「いってきます!」



 情報提供にお礼を伝えた後、ピンクと黒のタヌキ姉妹はぷっくりした尻尾をふりふりさせながらお風呂に向かっていった。



 二人が集めてくれた情報をまとめると…



 ・カルフィード共和国の隣国、エルラシア王国の反対側の国。



 ・陸地から幅100m長さ10㎞の巨大な橋があり、それを渡ると海の上に建国されている海上王国アクエリアに入国出来るとの事。



 ・橋を渡った先が王都サンティエスで入国したら必ず入国証のバッジをもらい、必ず見える場所に装着し、王都に入るようになっている。



 ・領土は隣接する島で、全て王都サンティエスから出航する船で移動するようになっている。



 ・もし王都に入らず無断で領土の島に渡った場合は処罰の対象、王都に入ってもバッジを付けずに島に渡った場合も同様。



 ・数年前から国の上層部は人間至上思想で他種族への風当たりが強い。



 ・海上国なので漁業が盛んで魚料理がおいしい、食べたい。



 ・めっちゃ船酔いする。



 ・お土産が欲しい。



 という情報を手に入れ、船酔い対策とお土産を何にするか等を考えてアエリアになり、国境都市カルラシアへ転移する。



 そしてそのままコルの姿になって人目に付かないようにカルラシアから出て召喚したフェンリルの背に乗り、夜道を走って海上王国アクエリアへ向かう…。





 ■





「…あら?こんな時間に人影…襲われてるんでしょうかぁ…」



 コルがフェンリルの背に乗って移動しているとかなり遠い位置に人影が見えた…が、何かと争ってるように見えた。



 何と争っているかはまだわからないが、そのままフェンリルに乗って近づいていくと馬車が止まっていて幌の部分には何かの紋章みたいなのが描いてあり、その馬車の近くに人影が見えた。



 ようやく事態の把握が出来る程近づいたコルの目に飛び込んできたのは、盗賊と思わしき集団が馬車を襲い、女性を羽交い絞めにしながら男性に止めを刺そうとゆっくり近づいている光景だった。



「フェンリル!行って!!」


「グルルル!!!」



 コルはフェンリルに襲ってるやつらを倒してと指示を出して勢いよく背から飛び降りる。



「ちゃく…あ、あべべべっ!?」



 かなりスピードが出てたので着地がうまく出来ずに道をゴロゴロと転げまわり、身体中に土を付けながら立ち上がると既にフェンリルが制圧したらしく、襲っていた10名ほどの盗賊は地べたに倒れていた。



「死ぬかと思いましたぁ…」



 土を払いながら襲われていた人達に近づいて行くと女性は男性の元に駆け寄り抱きしめていたので、その光景を見てふぅっと小さく息を吐いて言葉をかける。



「もし?大丈夫でしょうかぁ?」


「え…あなたが助けてくれたの…?」


「私というよりこの子ですねぇ」


「ワァフ!!」


「っ!ふぇ、フェンリル…?」


「ええ、そうですよぉ。それよりそちらの男性は大丈夫でしょうかぁ?お怪我しているならポーションがありますがぁ」


「頂いてもいい…?お腹を刺されたみたいでかなり血が…」


「はい~。かけても飲ませてもいいのでどうぞぉ」



 フェンリルの毛並みを撫でながら女性にポーションを渡すと、ぐったりしている男性の傷口にポーションをかける。



 するとみるみるうちに傷口が塞がり、顔の色もよくなりゆっくり目を開けた。



「…カーラ…?」


「ええ、そうよマーサー…よかった…本当によかった…」


「助かってよかったですぅ…うっ…」


「ワフ!」



 お互いの名前を呼び合いながら再び抱き合い始めたので、落ち着くまで辺りに散らばってる盗賊を縛って一ヶ所に纏め、フェンリルと見つめ合ってると顔に付いた土を取ってくれようとしたのか顔を舐められ、涎でべちゃべちゃになった…。



 抱き合ってた二人はコルがいる事を思い出したようで、バッとお互い離れて顔を真っ赤にしながらコルの方を向きお礼を伝えてくる。



「本当に助けてくれてありがとう…ポーションが無かったら助からなかったわ…」


「ああ、本当にありがとうお嬢さん…カーラを残して死ねなかった…本当にありがとう…」


「いえいえ~。私もお二人を助けれてよかったですぅ。ね?フェンリル」


「ワァフ!」



 気絶していてフェンリルを見ていなかったマーサーと呼ばれた人はひどく驚いていたが、コルの顔をめちゃめちゃに舐めているフェンリルを見て少し落ち着いたようだった。



「それはそうとお二人はどうしてこんな所にいらっしゃったんですかぁ?」


「私達はサンティエスからカルラシアに漁で採れた魚を売りに行った帰りだったんだ。本当であれば日が落ちる前にサンティエスに帰れるはずだったんだが、馬車の調子が悪くて立ち往生してしまって…本来だったらここは護衛もいらない程安全な道のはずなんだけど、多分最近王都で噂の双子の精霊を捕まえて売ろうとした奴らだと思う…」


「なるほどぉ…双子の精霊を探してたら丁度いい所に貴方達がいて狙われたって事なんですねぇ…」


「ああ、最近王都はガラの悪い奴らが多くてな…もしかして嬢ちゃんもサンティエスに行くのか?」


「ええ、そのつもりですよぉ」


「命の恩人だから案内してやりたいんだが…その…数年前から人間以外の種族の方に風当たりが強くて…多分居心地が悪い街かもしれない…」


「あらぁ…そうなのですねぇ…では行くのはやめておきますぅ。後、馬車はどこが悪いんですかぁ?」


「あ、ああ、車輪が溝に嵌った時に軸受けの部分が歪んでうまく走らなくなっちまって…」


「それぐらいなら私が直しますのでちょっと待っててくださいねぇ」



 コルは二人のそばにフェンリルを待機させて二人が乗っていた馬車の修理をしつつ王都の状況を考える。



(双子の精霊の噂が立ち始めてからガラの悪い人が多くなったぁ…まさかとは思いますがぁ…国内で懸賞金とか出してるんでしょうかぁ…?どちらにしろ早く行って早く見つけないと面倒くさい事になりそうですねぇ…)



 考え事をしながらでもしっかり修理し終わったので二人に声をかけて問題ないか確認してもらった後、馬車に縛った盗賊を放り込んで一緒に王都へ帰ってもらった。



 夜道は危ないので付いていこうかと申し出たが大丈夫と断られたので馬車を見送った後、フェンリルを送還してアエリアになって屋敷へ転移、三回お風呂に入って自室で睡眠を取った…。





 ■





「やっと着いたけれど…情報で聞くよりだいぶ迫力がすごいわね…」



 朝一で昨日カーラとマーサーが襲撃に会った場所に転移してコルで橋の近くまで移動し、アエリアに戻って橋を眺めていた。



 橋の手前では橋の向こう側へ送り迎えする為の送迎馬車が何台も止まっており、馬車が満員になったらすぐ出発して、送り届けたら王都から出る人を乗せて戻ってくる光景がずっと繰り返されていた。



 そんな馬車の停留所に向かい、乗車賃を払って馬車に乗せてもらうと10㎞の道のりを進んでいく馬車に一緒に乗っている冒険者達の会話に少し聞き耳を立てて情報収集をする。



「精霊捕まえたら遊んで暮らせる金が出るってマジなのかな…」


「わかんねぇ。そもそも精霊とかほんとにいるのか?デマじゃないのか?」


「まぁ大昔に姿消したってしか聞いた事ないしな…だからこそ遊んで暮らせる金額なんじゃないか?」


「そこまでして捕らえたいってなんか理由でもあんのかね?」


「さぁ…?」



(やっぱり懸賞金懸けてるっぽいわね…さっさと見つけて連れ帰るしかないわ…)



 エルリとルエリに懸賞金がかけられているという情報を耳にして溜め息を吐き、外の様子を見ながら海上王国アクエリア、王都サンティエスへ入っていく…。





 ■





「あ、おじさん、このアカウネの串焼きちょうだい」



 アエリアは王都サンティエスに入り、気になる情報がないか街を歩きつつフリエスとアリエスのお土産を買い込み、屋台巡りをしていた。



 タコの足によく似た串焼きがあり、それを頬張りながら王都を練り歩いているが聞こえてくる話は「双子の精霊を捕まえる」という話題だけで、初めは幸運を運んでくれるなんて噂が立っていたのにその噂をする者は殆どいなかった。



 そんな事実に顔を顰め、「結局、昔のクズ達と何も変わらない」と思いながら歩いていると孤児院を見つけた。



「孤児院…随分とボロボロねぇ…」



 孤児院は潮風で傷んでいるのかかなり荒れており、所々素人が頑張って修繕したであろう形跡もあって何処にでもこういう場所はあるのかと思うと胸が痛くなり、自然と手が胸にあたる。



 しばらく孤児院を見つめて立ち去ろうとした時…



「やめてください!!!」


「っ!?」



 孤児院の方で何かが割れる音と女性の悲痛な叫び声が聞こえ、その叫び声が聞こえた瞬間アエリアは瞬発してその声の元まで駆けつける。



「っ!?…な、何してんのよあんた…!!」



 すると声を出したであろうボロボロのシスター服の女性は何かを抱きかかえ地面に蹲りながらずっとやめてくださいと叫んでおり、その女性を足蹴にしている鎧姿の人が見えた。



 アエリアはその鎧姿の人を見た時に人と認識出来ず、鎧を着た『何か』が喜びながら女性を蹴っているように見えた。



「この…!!!!」



 緑色の雑草が生えた場所には女性から流れたであろう血が飛び散っており、頭の中が真っ白になったアエリアはその『何か』が女性に乗せている脚を空間魔法で消し飛ばした。



「ハハハハ!!!…は?」



『何か』は女性を踏みつけて身体を支えていた足がいきなり無くなり、バランスが崩れて地面に倒れるが何が起きたかわからない様子で呆けた表情で辺りを見回していた。



「は…?…あ、足…ぎゃあああああああああああ!!!!!!」



 数秒後、自分の脚が無くなってる事に気付いた何かは叫び声を上げるが、即座に風魔法で周囲に音が聞こえないようにして女性へ近づく。



「ねぇ、あなた…大丈夫?…今治してあげるからちょっと待っててね…」



 そう伝えて地面に血まみれで蹲ってる女性に治癒魔法をかけてあげ、暴れている『何か』に近寄り動けないよう重力魔法で押さえつけ声が聞こえるようにする。



「ねぇ…何していたの…?」


「き、貴様ァ!!!私の脚をどうしてくれるんだ!?ふざけるんじゃない!!」


「ふざけてるのはあんたでしょ…?この人が何をしたって言うのよ…?言ってみなさいよ…」


「お前は誰に向かってそんな口を聞いているのかわかっているのか!!!!ぐうううう!脚がぁぁ!!くそ!!誰かこいつを殺せ!!!早く!!!誰でもいい!!」


「話が全く通じない…もういいわ」



『何か』の周囲をもう一度無音状態に戻してまだ蹲っている女性にもう一度話しかける。



「ねぇ、あなた本当に大丈夫?まだどこか痛い所あるのかしら?」


「あ、あなたは…?」


「私はリアって言うの。あなたのお名前は?どうしてこんな事になったのかしら?」


「わ、私はサリィって言います…さっきの人はこの国の軍の人で……こ、この子を渡せって…」



 そう言って蹲っていた体勢を変えて身体を張って守っていた子をアエリアに見えるようにした。



「狐型の獣人族…そう…人間至上思想ね…」


「はい…この孤児院は数年前まで国が運営していて支援を頂いてやりくりしていたのですが…突然支援を打ち切られてしまい、満足に運営が出来なくなってしまったのです…私は孤児院で食べる物を探してお店に廃棄する食料がないか相談している時にこの子がゴミ捨て場に埋もれているのを見つけて助けたのですが…それを軍の人に見つかってしまって…亜人種はこの国のゴミだ処分しなくちゃいけないって言いながら…」



 その先の言葉はぐしゃぐしゃに泣いているサリィの嗚咽に混ざって聞き取れなかった。



 泣きすぎて身体が酷く痙攣しているサリィの背中を優しく撫でながら、身を挺して庇っていた狐型の獣人族の子を見る。



「酷い…折れてるじゃない…」



 サリィが駆け付ける前に何度か蹴られていたみたいで気を失っており、所々青くなって腕が向いてはいけない方向に向いていたので治癒魔法で完璧に治し、頭を撫でてぼさぼさの髪の毛を整える。



「サリィ、もう大丈夫よ。これから起こる事をあなたに見せたくないから一度孤児院の中にその子と一緒に戻っててもらえるかしら?」


「な、何をするつもりですか…?」


「知らなくていいわ。ほらすぐ行くから待っててちょうだい」



 サリィを無理やり孤児院の中に帰し、『何か』に近づいて転移魔法でカーラとマーサーが襲われていた森まで転移する。



 いきなり知らない場所に連れてこられた『何か』はずっと喚いていたが周囲の音を消しているのでアエリアの耳には届かず、髪を掴んで引きずって森の奥へ移動していく。



 誰にも声が届かないような所まで連れてきたアエリアは魔法を解いて質問する。



「…これからどうなるか覚悟出来てるかしら?」


「き、きさまぁ!!私にこんな事してタダで済むと思うな!!!」


「あなた、会話出来ないのかしら?」


「き、きさまぁ!!私にこんな事してタダで済むと思うな!!!」


「こっちの質問に答えろって言ってんのよ」



 そう吐き捨て『何か』の顔に蹴りを入れるが…



「き、きさまぁ!!私にこんな事してタダで済むと思うな!!!」


「…?」


「き、きさまぁ!!私にこんな事してタダで済むと思うな!!!」


「何かおかしい…」


「き、きさまぁ!!私にこんな事してタダで済むと思うな!!!」



 さっきから同じ言葉しか繰り返さなくなった『何か』に違和感を感じ、『何か』を鑑定してステータスを確認する。



 すると『何か』の名前や年齢がわかるが状態の項目が『洗脳』となっているのを見つけた。



「洗脳…?」



 と一言呟くと、さっきまで同じ言葉を繰り返していた『何か』はピタリと動きを止め、虚空を見つめる。



「ちょっとあんた…ねぇ、いきなり黙られてもっ!?」



 そこから頬を叩いても何も反応を示さなくなり、消し飛ばした脚と洗脳状態を治そうとした瞬間、いきなり『何か』の頭が弾けた。



 即座にバックステップで『何か』と距離を開き、周囲を確認するが特に何もなく、『何か』の残骸の吐き気を堪えたまま現状を整理する。



(あれを洗脳して操っていた奴がいるのかしら…?いったい誰がそんな事を…それに王都からここに転移してから同じ言葉しか話さなくなったわよね…洗脳を解いて情報を引き出そうとしたら頭が弾けたのかしら…明らかに情報が国の外に漏れないよう細工していたって事よね…?でも街の人はそんな感じがしないわ…そもそもライゼンから情報を聞いた時、この国の上層部は()()人間以外の種族には風当たりが強いっていう感じの話し方だったわ…でもフリエスやアリエスの情報だと()()()…ここで助けたカーラとマーサーも()()()からそういう思想になったって言ってたわよね…()()()()()って言う所にも引っかかる…何かがおかしいわ…)



 何かが決定的におかしいと感じたアエリアはイヤリングに手を添え、赤い侍をイメージしながら口を開く。



『ライゼン聞こえるかしら…あなた…今どこにいるの?』



 だがその返答は待っても返って来ることは無かった…。

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