お疲れ様会 異世界への旅立ちの日
今日の投稿は以上で終了です。
いかかでしたか?少しでも続きが読みたいと思って頂けたら嬉しいです。
「はぁ…『SL』が今日でサービス終了なんて…」
「もーしょーがないでしょー?一年前からずーっとそうやってサービスがサービスがーーって耳たこだよ!」
「フェイナの言う通り決まってた事なんだから仕方ない」
「ほーら!アルメラも同じ事言ってるでしょ?今日ぐらいはぱーっとやってみんな笑顔でおわろーよ!ちーちゃん!」
そう言ってギルドホームの窓際で星空を眺めていた千棘をフェイナが脇に手を入れ荷物を運ぶ様にみんなの集まるリビングへ輸送する。
今、千棘がいる所は『SL』で千棘が作ったギルド【Daphne】のギルドホーム。
【Daphne】は千棘を含めて十人しかいないギルドでその内二人は千棘のサブキャラクターの為、実質八人の超少数ギルドである。
そんなギルドマスターの千棘を輸送している女性はフェイナ。
フェイナは猫型の獣人族で身長170㎝の長身、出る所は出て引っ込む所は引っ込んでいるスタイルを見せつける様に黒のチューブトップに黒のホットパンツという男なら目が釘付けになる様な格好をしながら黒猫をモチーフとした歩く度に小さくニャと鳴くスリッパを鳴らしていた。
黒曜石の様な真っ黒な髪は背中の中程の長さで所々サイドにぴょんと跳ねており、目の色は血を連想するような真っ赤な瞳、頭の上からツンっと生えている猫耳、しなやかな鞭の様にうねる細くてスラっとした尻尾はスリッパの鳴き声に合わせる様に左右に揺れている。
そして身軽そうな格好だから軽装で短剣とか弓を使う様な戦闘スタイルに見えるが実際は全くの逆。
重鎧や自分の身長と同じぐらいの大盾を使い、攻撃をその身で一心に受けるタンク職なのだ。
更には重鎧や大盾で動きが遅いと思われがちだが、あり得ない程素早い動きで味方の元へ駆けつけて攻撃を引き受け、味方の盾になる事にプライドを持ち、なかなか倒せない彼女の事を敬意を持ってプレイヤー達は『難攻不落のフェイナ』という通り名をつけた。
そのフェイナの隣を一緒に歩く女性はアルメラ。
アルメラは羊型の獣人族で身長160㎝程の本人曰く大き過ぎず小さ過ぎない丁度いい大きさで、引っ込む所はしっかり引っ込んでいるモデルの様なスタイルをしていて白のもこもことしたセーターに薄いピンクのロングスカートを履いてる。
桜を連想させるピンクの髪はお尻まで伸びるストレートロングで瞳は綺麗なマリンブルー、頭には特徴的なアモン角と呼ばれる形をした角が二つあり、羊をモチーフとした歩く度にメッと鳴くスリッパを履いており、一見落ち着きのある凛としたお姉さんに見えるアルメラは両手で扱う武器であれば何でも使えるパワーアタッカーだ。
軽鎧で身を守り素早い動きで敵の群れに突っ込み、状況に応じて適切な武器へ持ち替えて相手に大ダメージを与えながら暴れるだけ暴れて素早く退避、そして少しでも相手の意識がアルメラから離れたらまた突撃をして相手を壊滅に追い込むヒット&アウェイのスタイルを得意としていた。
そんなアルメラはその高威力な攻撃を素早く苛烈に繰り出して敵を屠って去って行くというバーサーカーそのもので、そんな姿を見たプレイヤー達は畏怖を込めてアルメラを『竜蟠虎踞のアルメラ』と呼んでいた。
「ほらランラン、きょーちゃん。ちーちゃん持って…連れてきたよ~!」
「ちー、おめぇまーだ落ち込んでるのか?最後ぐらい楽しくやろうぜ?」
「そーだぞ、ちー助。死ぬまで続くゲームなんてねぇんだ。逆に十年以上続いた事をあたい達で祝うべきだろ!」
そう言いながらあたいと言っていたランランが千棘の頭をぽんぽんと叩き、きょーちゃんが千棘の前へ酒を出す。
フェイナがランランという愛称で呼ぶのはドワーフ族のユーラン。
彼女はドワーフ族の特徴である120㎝程の低身長で、赤い根元から毛先に向かって真っ白になっていくグラデーションの髪を背中の中程まで伸ばし、無造作に纏めたポニーテールにしていて瞳の色は奇抜なショッキングピンク。
今の服装は黒のチューブトップに臍辺りまで短くした白の半纏を羽織って黒の袴を履いており、袴の裾からは鍛冶で使う金床やハンマーの模様が描かれているスリッパが見え隠れしていた。
そんなユーランは格好から見ても分かる通り鍛冶師を生業とし、戦闘はあんまりせずに金属系統の武器や防具、アクセサリーを作るのに心血を注いでいるのだが…戦闘をあんまりしないと言っても戦闘が出来ない訳ではなかった。
戦えば【Daphne】の中でもかなり強く、自身で作った攻城兵器での攻撃であったり、いつも作っている武器を使って次々と敵を倒していくというスタイルだ。
ユーランが鍛冶師であるのにも関わらず、【Daphne】の中でも上位の戦闘力を持っているのはユーランが作った武器という存在が理由だ。
自分で作った武器に特殊能力を付与してその特殊能力を相手へぶっ放す事を目的として作られた武器は一つ一つがとても強力で、その強力な能力の代償として一回使っただけで壊れてしまうという癖が強いものだ。
戦闘技術?読み合い?戦術?何それおいしいの?という脳筋を地で行くタイプで大雑把な戦い方をするユーランの足元には武器の残骸が散らばっている事からいつも戦場のど真ん中の様な有様になり、ド迫力の攻撃をする事からプレイヤー達は警戒を持ってユーランに『砲煙弾雨のユーラン』という通り名をつけた。
そしてフェイナがユーランと一緒に名前を呼んでいたきょーちゃんは六月一日 鏡という名で、身長は190㎝とかなり高身長で細く筋肉質なエルフ族の男性だ。
髪色は綺麗なブロンドでアルメラと同じぐらいの髪の長さ、緩い三つ編みにして胸の前に髪を持ってくる髪型をしていて切れ長の目にはアメジストの様な紫の瞳があり超絶美形。
今はギルドホームで寛いでいるのでいつもの魔法使いの様な水色のローブ姿ではなく、黒のタートルネックに黒の足首まであるぴったりパンツという姿でローブと指揮棒の模様が描かれているスリッパを履いており、粗暴な喋り方故に口を開かなければ絵画の様な美しさなのだ。
そんな鏡の戦闘スタイルはスリッパの模様と同じ水色のローブに指揮棒の様な細く短い杖を使い、味方にはステータスが上がるバフを、敵にはステータス低下や状態異常等のデバフを使う絡め手が得意なバッファーだ。
ギルドホームから一歩外へ出たらロールプレイの都合で丁寧な口調で話している為、鏡が指揮棒を振りながら戦闘している姿と街で見かけた時の姿を見てプレイヤー達は憧れを込めて鏡に『石破天驚の鏡』と通り名をつけた。
「ほら、ちーちゃん笑って?」
「ほら、ちーちゃんスマイル!」
「エルリ、ルエリ…」
そう言って瓜二つの双子が千棘のほっぺを左右から人差し指でぷにぷにと突く。
千棘の頬を左右から突いている双子は精霊族で、姉のエルリと弟のルエリという名前だ。
二人とも身長は150㎝ピッタリで髪は白に近いプラチナブロンド、背中からは半透明の羽が生えており髪型は二人ともツインテールで解けば肩甲骨辺りまでの髪の長さになるだろう。
瞳の色は綺麗なトパーズみたいな黄色、服も全部一緒で赤いベレー帽に赤い襟のセーラー服、黒のショートパンツを履いてひざ下までの黒ソックスがずり落ちないよう膝上にソックスベルトで固定していて、エルリとルエリの二人は何もかもが同じの様に思えるが明確に違う事が二つある…それは戦闘のスタイルと武装だ。
エルリとルエリの二人は【Daphne】のメンバーの中で最速と言っていい速さを誇り、二人で戦場を飛ぶ様に駆け抜け相手の陣形を崩しながらダメージを与えるスピードアタッカーなのだが、姉のエルリは双剣を、弟のルエリは魔法とレイピアを使って戦闘するのだ。
姉のエルリは正確な攻撃と双剣の手数の多さを利用し、持ち前のスピードで相手にダメージを与えながら油断している敵を見つけたらすぐさまターゲットを移し一直線に駆け抜け戦うスタイル。
そしてそんな姉のサポートをする弟のルエリは発動が速く、弾速が速い魔法を好んで使って姉の後ろから魔法でサポートし、時には同じ速さでレイピアを捌き相手の隙を突いて姉を助ける。
もし姉のエルリのサポートを別のプレイヤーがするとなると、縦横無尽に走りまくるエルリに間違えて魔法を当ててしまったり付いていけずに取り残されて撃破されてしまう程難しく、【Daphne】のメンバーでもこの二人をサポートするのはかなり骨が折れるのでこの戦い方はこの双子だけで完結する双子ならではの戦闘スタイルなのだ。
戦場を駆け抜け、敵を高速で殲滅していく姿を見たプレイヤー達は絶望の表れとしてエルリとルエリに『疾風迅雷のエルエリ』と通り名をつけていた。
ちなみに姉のエルリが双剣で、弟のルエリがレイピアと魔法陣の模様が描かれているスリッパを愛用している。
「エルリ、ルエリ。千棘はここにいる誰よりも『SL』が大好きだったんだから落ち込むのも仕方ないですよ。でも千棘?誰よりも落ち込んでいるのはわかっていますが、私たちは既に『SL』だけの関係ではないでしょう?」
「それはそうだけど…でもピュリエット?僕達が一緒に過ごしたこの『SL』もギルドホームももう来れなくなるなんて悲しいじゃんか…」
そう言いながら千棘は双子のぷにぷに攻撃をやんわりと辞めさせてくれた背に翼を持つ翼人族の男性、ピュリエットの隣に座る。
ピュリエットは身長180㎝程で紫の髪色に片目が隠れているアシメ、瞳の色は隠れている左目が薄い黄色で隠れてない右目は薄い水色、トレードマークの翼は鷹の様な翼で羽の色は黒。
ピュリエットはユーランと同じ生産職で戦闘はあまりせず、回復薬や毒薬等の薬品系と服や革鎧と金属を使わない防具や消耗品の作成に注力しているが、ピュリエットもユーランと同じく戦闘が出来ない訳ではなかった。
ピュリエットは空を飛ぶ召喚獣の背に乗って空を飛び、自分で作った薬品をばら撒いて弓でガラス瓶を割って薬品の雨を降らせたり、そのまま空から弓で敵の後方部隊をめちゃくちゃにする戦法を得意としており、空からいきなり酸や毒なんかが降り注いだら普通に阿鼻叫喚だ。
空を自由に飛び、薬品等を弓で打ち抜いて降らせたり自由に戦うピュリエットの姿を見たプレイヤー達は最大の警戒を持ってピュリエットに『天馬行空のピュリエット』と通り名をつけた。
ちなみにピュリエットの履いているスリッパは弓と黒い羽が一枚、試験管の様な細いビンの模様が描かれている。
「そうですね…それはここにいるみんながきっと思っている事です。だから最後は悲しい思い出ではなく楽しい思い出として残し、またリアルで皆と遊びませんか?」
「……そうだね、ありがとうピュリエット。最後ぐらいこのホームでみんなとどんちゃん騒ぎしよっか!」
「ええ、これは千棘の分です。…今からあの輪に入るのはだいぶ気合を入れないといけませんからね!…っぷは!いきましょう千棘!」
「…っくぅ~!よっしゃー!みんなー!」
ピュリエットから強いお酒の入ったグラスを受け取ると二人で飲み干し、リビングの広い所でどんちゃん騒ぎして揉みくちゃになっている集団目がけてダイブする。
今日の夜24時になった瞬間にこの『SL』の世界は無くなる…ゲームを提供している運営会社が今日の夜24時を持ってサービス終了のお知らせを出したのは今日から遡って丁度一年前の事で、その告知を見た千棘は絶望していた。
この世界が無くなるなんて、みんなと過ごしたこの世界が…と。
でもそれと同時に『終わるなら『SL』の世界の全てを遊びつくさないと!』と声をかけてくれたメンバーのおかげでやる気を出し始めたのは絶望してから次の日だった。
今までも本気でプレイをしていたがこれ以上は無理だと自分が満足するまでダンジョンのタイムアタックだったり、ボス討伐のタイムアタック、ソロ撃破等を遊べる限り遊び、更にはアップデートで追加されていった新しいマップ全てを練り歩いてこれでもか!というほど遊び尽くした。
常人からしたら考えられない執念でプレイしていた千棘は『SL』での戦闘項目、生産項目、全てのランキングをメインキャラの千棘とサブキャラクターの名前で埋め尽くしていた…もちろん1位で。
そのランキング埋めが終わったのはサービス終了1週間前、この時手伝ってくれたフレンドやメンバー達には頭が上がらない気持ちだった。
更に千棘主動で何でもありのギルドVSギルドのイベントを開催して戦争をしまくり、そこにはもちろん百人から千人規模のギルドも参加したり、相手が連合を組んで【Daphne】VS複数ギルドでの戦争もした。
もちろん楽勝なんて事はなく、本当にギリギリの戦争もあったがギルドメンバーのおかげで全ての戦争で勝利を収め、最後に全プレイヤーの称賛と共に【Daphne】が最強ギルドだと認められ、イベントは無事終了した。
『SL』で手に入るものは何でも手に入れた。
余っているお金で課金もしまくった。
だけど時間をかけて手に入れたものが無くなる日が近づくにつれて千棘は落ち込んでいった。
そしてフェイナが『最後の日、お疲れ様会しよ!』という一言でみんなが集まり、最後に対戦したり、プレイヤーを背中に乗せて空を飛べる召喚獣を呼び出してメンバー全員で世界旅行をした後、ギルドホームに集まって今に至る。
「落ち着いちゃったね…まぁ、あれだけ騒げば体は疲れないけど精神的に疲れるよね。嫌な疲れ方じゃないけど」
「そーだなー。ちーは終わった後別のゲームやるのか?」
呟きの様な千棘の言葉に鏡が聞いてくる。
「んー、今の所は正直そんな気分になれないかなぁ…でもみんなが同じゲームやるならやってもいいかなって感じかな?まぁ、まったりプレイするけど」
「あん?ちーにはまったりプレイはぜってー無理だろ?賭けてやってもいいぞ?」
「僕だってまったりプレイぐらい…でもハマったらやりこんじゃいそう…」
「今からそんなんじゃ賭けは絶対に俺様の勝ちだぜ?」
そんな軽口をギルドメンバー全員と交わしながら時間が過ぎていく中、千棘は手を前に向け左から右へスライドし、ギルドのシステムウィンドウを開く。
千棘のそんな動作を見たメンバー達は全員同じ動きをしてギルドのシステムウィンドウ開く。
そして千棘は【Daphne】に所属しているメンバーの名前を呼んでいく。
「【Daphne】ギルドマスターの僕、千棘がメンバーに今日の確認を行うよ」
そう言いながら千棘がテーブルを囲んでいる皆へ視線を向けると皆は笑みを浮かべる。
「はーい!」
「わかった」
「おう」
「はいはーい!」
「はいはーい!」
「あいよ!」
「わかりました」
「よし…まず、フェイナ」
名前を呼ばれたフェイナは満面の笑みを浮かべた。
「ん!みんなとの楽しい思い出がいっぱい作れたから大満足だよ!」
「アルメラ」
名前を呼ばれたアルメラも笑みを浮かべる。
「私も概ねフェイナと一緒。最高のギルドメンバーに恵まれて私も大満足」
「六月一日 鏡」
名前を呼ばれた鏡は口端を吊り上げた。
「ここにいる全員、最高にバカで最高にイッてる連中だったが、俺様も大満足だ!」
「エルリ」
名前を呼ばれたエルリは瞳を潤ませながらも笑みを浮かべた。
「私もここにいるみんなが大好き。この世界は無くなって悲しいけれど…私も大満足!私たちは『SL』じゃなくてもみんなが死ぬまで最高の仲間でいる事が出来るって信じて…ううん、確信してる!」
「ルエリ」
名前を呼ばれたルエリもエルリと同じ様に笑みを浮かべる。
「僕もエルリと同じで大満足!きっとおじいちゃんおばあちゃんになっても笑って一緒にいるって確信してる!」
「ユーラン」
名前を呼ばれたユーランは満面の笑みを浮かべながら瞳から雫を零す。
「あたいも大満足だ!ここにいるみんな親友で…掛け替えのない…グスッ…大切な仲間達だ…!」
「…ピュリエット」
名前を呼ばれたピュリエットは目を閉じ、感慨深げに口を開く。
「私も大満足です。こんな素敵な仲間が現れる事なんて今後一生ないって思えるほど最高のメンバーです」
「最後に僕、千棘───」
「おいおい、ちー。最後はないんじゃないか?まだ二人ほど顔を出してない奴がいんだろー?んー?」
「そーだそーだ!アエリアちゃんとコルちゃんを出せー!!」
「ちょ、今までそんな事言った事なかったじゃん…まぁいいや。よし、ちょっと待っててね」
鏡とフェイナが不満とばかりに声を上げ、千棘は苦笑しながらシステムウィンドウを操作して【Daphne】に所属している自分のサブキャラクターへと入れ替わる。
「みんな待たせたわね」
「全然待ってないよ!アエリアちゃん!」
「ちゃんを付けないでって何度言ったらわかるのかしら」
「おーおーいつ見てもすげーなその人格の変わりっぷり。本当にちーなのかって思うぜ」
「毎回キャラをチェンジする所を見てますが…本当にその通りですね」
「本当にすごい。別人みたい」
「すごいすごーい!」
「すごいすごーい!」
「ほんと人が変わるからちー助だと…グスッ…思えないんだよな…」
「だから、私はアエリア。今は千棘と一緒にしないでちょうだい」
フェイナ、鏡、ピュリエット、アルメラ、エルリとルエリ、ユーランの順番で好き勝手な事を言い合う。
アエリアは千棘のサブキャラクターで身長はフェイナと同じ170㎝、髪はアルメラや鏡と同じくお尻まで長く、髪の色は真ん中から右が白、左側は黒のストレートロング、瞳の色は赤の人間族の女性キャラクター。
いつもの服装は黒のシスター服でスカートを短くしており、黒のニーハイをソックスベルトで太ももに止めて絶対領域を演出し、編み上げブーツを履いて非常にパンクな感じなのだが、今はゆったりとしたセーターに細いパンツ、足元は魔法陣とメリケンサックの模様が描かれたスリッパを履いていた。
「んんっ…まぁいいわ。私、アエリアは今日一日みんなでPvPをしたり世界旅行に行ったり、こうしてあなた達みんなと過ごせた事に大満足しているわ。あなた達はこれからも私の最高の仲間で最高の親友よ。今まで本当にありがとう、そしてこれからもよろしくお願いするわ」
アエリアはそう言うと皆に視線を向け、みんなが笑顔で頷いてくれたことを確認した後、またシステムウィンドを操作してもう一体のサブキャラクターへと入れ替わる。
「ふふっ、皆さんお待たせしましたぁ」
「コルちゃん待ってましたー!」
「ほんと、どんだけ人格切り分けてんだってーの…」
「雰囲気まで変わるから凄いとしか言えない」
「そうですね。一番人格の落差が激しいのはアエリアからのコルでしょうね…」
「コルちゃん!あの子達出して!
「コルちゃん!あの子達出して!」
「はいはい、ちょーっと待っててくださいねぇ。…えい!」
「ありがとー!」
「ありがとー!」
「ちー助、あたいにもあかまるを出してくれ!」
「あかまるじゃなくてサラマンダーですよぉ?…えい!」
「おー!あかまる!元気にしていたか!?よしよし…」
フェイナはここぞとばかりに膝をついてコルを抱きしめ、鏡、アルメラ、ピュリエット、エルリとルエリ、ユーランの順番でまた好き放題言い始める。
エルリとルエリの為に真っ白な猫と真っ白な狼を召喚するとエルリは猫、ルエリは狼に抱き着いてじゃれ合い、ユーランも手の平に乗るほど小さいサラマンダーを人差し指で愛で始めたのを見てコルは優し気に目を細める。
コルは千棘のサブキャラクターで身長は双子と同じ150㎝、薄い水色の髪色で瞳の色も水色、頭の上には狼の耳、尻尾はふわっとした狐みたいな尻尾があり、膝裏まで伸びた長い髪をゆったりとした三つ編みにして鏡と同じように体の前に持ってきている狼型の獣人族の女性キャラクター。
服装は赤を基調としたエプロンドレスでどことなく赤ずきんちゃんの様な服装、足元のスリッパは狼と葉っぱの模様が描かれていて歩く度にワフと小さく鳴くようになっていた。
「私はこの『SL』で皆さんという大切な仲間を得た事にとっっっっても大満足しています。このメンバーの中で誰かが立ち止まってしまった時、誰かが挫けそうな時はここにいるメンバーで背中を押して、手を伸ばし、手を取ってみんなと同じ歩幅で一緒に歩めるよう精一杯手助けさせて頂きます。…もし、私が立ち止まり、挫けてしまった時…みんなも私の事を助けてくださいね?」
そう言いつつコルはみんなの顔を見渡すと、満面の笑みでメンバー達からそれぞれの言葉で当たり前だ、言われなくてもわかってると言葉をもらい笑みを浮かべる。
「ふふっ…ありがとうございます。では最後に私達、【Daphne】のギルドマスターと交代させて頂きますね?…よしよし…えいっ!」
コルがそんな声を出しながら召喚した3匹を手元に呼び戻し、元の場所へ送還するとコルの姿がメインキャラクターである千棘に替わる。
「ふぅ…全くみんな最後の最後で無茶振りするんだから…」
やれやれと言った表情で千棘はメンバー全員の笑顔を見た後、ゆっくりと口を開く。
「最後にギルドマスターの千棘…一年前のサービス終了告知の後、すごい落ち込んでた時にみんな色々声をかけてくれて本当にありがとう。あれから今日まで僕の自己満足で『SL』のランキングを千棘やアエリア、コルの名前で塗り替えるのにも協力してくれて本っ当にありがとう。しかも最後にはユーザーイベントのギルド対ギルドの戦争のおかげで『SL』最強のギルドは【Daphne】と認められた。たかがゲームの結果、たかがプレイヤー達の言葉だけど、確実にここにいるみんなと必死になって作り上げた最高の結果で宝物だと僕は思ってる。だからサービスが終了して全てが消える前にはこのギルドの建物自体は取り壊して、ホームの物は全部回収しようと思っている。今まで誰も欠けずに僕についてきてくれて本っっっっっ当にありがとう!!僕は今日、みんなとここに居る事に大満足している!そしてリアルでも別のゲームでも僕たちはこれからも仲間で親友だ!以上!」
千棘はそう言って最後まで声が震えず言えた事に安心し、じわじわと溢れそうになる涙を拭く。
色々な思い出が沸き上がり、心の中がぐちゃぐちゃになる感覚を覚えながらもメンバー達はギルドホームの外へ向かい、最後に外に出てギルドホームをじっと見つめている千棘の後ろ姿を見つめる。
「じゃあ、みんな…ギルドホームを片付けるね…」
千棘は後ろから聞こえてくるみんなの鼻を啜る音を聞きながらシステムウィンドウを操作し、『ギルドホームの解体』と表記されているボタンを震える指で押す。
するとギルドホームが淡い光に包まれ、しばらく眺めていると…そこにはもう何もなかった。
周りを見渡すと辺りは木、木ばかりでここが森の中だということがわかる。
そして皆が近づいてきて───
「ギルマス、最後の仕事…お疲れ様」
みんないつものあだ名ではなく千棘の事をギルマスと呼び、労いの言葉をかけてくれる。
「んーーーー!!無くなってすっごい寂しいけど、でもなんか肩の荷が下りたって感じがする!」
と、千棘が笑いながら言うと、
「そりゃそーだろ?こんな最高にぶっ飛んでる俺たちをまとめてたんだ!大変じゃないわけないだろ!」
「えらそーに言う事じゃないでしょー!まったくー!」
「そーだそーだ!」
「そーだそーだ!」
「このメンバーの中で最高にぶっ飛んでる双子がなんか言ってんぜ?ギルマスどうにかした方がいいんじゃねぇか?」
「僕に振らないでよ…」
皆も寂しさを紛らわす為に無理やり明るく振舞い…そんな姿を見た千棘は叶わないたらればを零した。
「あーあ、ここが本当の世界になればいいのになぁ…」
「んな夢物語あるわけねーだろ、ったく…まぁでも、そう思いたい気持ちもわかっからな~」
「ね~!でもそんな事になったら今度はどうする?みんなで国とか作っちゃう!?」
「そんな事簡単に出来ないよフェイナ」
「もー!アルメラ!もーちょっと夢みよーよ!」
「はいはい」
「もしそんな事になったら…あたいはどんな武器が作れるんだろうなぁ…」
「ランランは剣作ってぶっ壊してずーっと借金まみれじゃない?」
「はぁ!?あたいはそんなドジじゃねぇ!ちゃんと生活出来るぐらい残すわ!この馬鹿猫!」
「なにをー!やんのかこの金欠幼女!」
「───!!───!!」
わきゃわきゃしながら取っ組み合う…いつもの光景を皆で見つめつつ千棘のたらればに想いを馳せる皆。
「全く…最後なのに取っ組み合いまでする必要ないはないでしょう…でも…もしみんなと行けるなら私も行ってみたいですね…」
「もしそんな世界があったら『SL』にはいない動物とかいるのかなー?」
「どうかなー?ルエリはどんな動物がいてほしいの?」
「んー…ぱっとは思いつかない!エルリは?」
「私もぱっとは思いつかないかも…でも見たことない動物がいるなら私も見てみたい!」
「ねー!」
「ねー!」
そしてメンバー全員が思い思いの時間を過ごし…
「よし、そろそろ時間だよ」
千棘がそう言うと時計は23:58と表示されている。
そして誰が何を言うわけでも無く全員が握手をして離れて目を閉じる。
時計が23:59と表示され…
「じゃあみんなまた今度!」
「はーい!」
「わかった」
「おう」
「はーい!」
「はーい!」
「またリアルで会いましょう」
「またな!」
0:00 ───『Second Life on-line』サービス終了───したはずだった。
《千弦さん…千弦さん…?》
次の話から千弦は異世界へ転移します。
お楽しみに。




