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再始動 -Second Life on-line- そして第二の人生が始まる  作者: 絢奈
第一章 愛した世界
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死神の聖職者

「それでこれはどういう状況なんですか!?」



 神経質そうな男の怒鳴り声がギルドの応接室で響く。


 この声を荒げている神経質そうな男は王都リライア支部ギルドマスターのウルギアと言い、訓練場に向かう前にアエリアに声をかけていた職員だった。


 当のアエリアは怒りで我を忘れており、ギルドマスターウルギアの声が全く聞こえておらず、今は何故こんな事になったのかと事情聴取を受けていた。



「だから訓練をしてただけよ」



 ウルギアがどういう状況か説明しろと怒鳴り散らすがアエリアの主張はずっと変わらずに私に突っかかってきた奴らに訓練を施していたと言うばかりである。



「あのですね…訓練で普通あの状態までやりますか…?」


「あいつらが私の一番大切にしているものを穢したからよ」


「また『疾風迅雷』ですか…あなたねぇ…」


「あんたに言っても理解されるとはこれっぽちも思っていないわよ。気に入らないならギルドカード剥奪でも何でもすればいいじゃない。私はちゃんとギルドの注意事項に乗っ取って訓練をしたのよ?それの何が悪いのかしら?」



 ギルドの注意事項には訓練場での模擬戦等は双方の合意が無ければ使用する事は出来ない。


 また、その訓練で失った装備、怪我等は自己責任である。



「ほら、ここ。ちゃんと書いてある通りに私は双方の合意の元、私対冒険者約五十人の模擬戦を実行したまでなの。それにここの注意事項、『依頼中、依頼外の怪我や死亡は自己責任』こうやって記載されてるわよね?何で私だけがここで軟禁みたいな事されて問い詰められているの?しかもよ?この注意事項、どうせ依頼かなんかしている時に恨みを買った冒険者が、依頼終了後に闇討ちでもされてギルドに泣きついて揉めに揉めたからそういう風にならない様に、ギルド側が責任逃れ出来る様にする為の注意事項でしょう?なら『双方の合意』の元試合した結果、怪我しようが腕や脚が無くなろうが死のうが関係ないわよね?試合する前に私は『こっちは準備出来たけれど、あんたらは殺される覚悟は出来たのかしら?』って、ちゃんと確認を取って戦闘を開始したわ。私には何の不備は見当たらないと思うのだけれど、そこの所はどうなのかしらウルギアさん?何なら私の犯罪歴でも見れば?私が自分の事を見た時は犯罪歴に傷害も殺人も何も現れなかったわ」


「……………」


「図星だったかしら?黙っていられても困るのだけれど?ギルドからの除名がしたいなら好きなようにすればいいわ。そうしてくれるならここのギルドはこういうギルドだってちゃんと周りにもお話してあげるから今後こういう行き違いも起きないと思うし…もう何もないなら私はこれから約束があるから行くけれどいいかしら?」


「………好きにしろ、出ていけ」


「ハッ…お咎めなしって事で。それじゃあまたねウルギアさん」



 アエリアはそう言い放ち応接室から立ち去ると、応接室に残されたウルギアは頭を抱えながら五人の冒険者の症状が書かれた書類を見て溜め息をつく。



「どうやったらここまで人体を酷く破壊出来るんだ…これで死んでいない方があり得ないだろう…」



 あの時アエリアは『疾風迅雷』を騙ったハーレムパーティだけは治さず、死なない様に初級の『ヒール』だけを使い、命だけは確実に助かる様に回復させていた。



「厄介な奴が入ってきた…Fランク…くそ…」



 頭をかき乱し一人ごちながらウルギアは書類を片付けて部屋を後にした…。





 ■





「アリエス、さっきはごめんなさいね」


「い、いえ大丈夫ですリアさん」


「さんなんていいからリアと呼んでちょうだい」


「わ…わかりましたリア。気分は落ち着きましたか?」


「ええ、だいぶ落ち着いたわ。…そういえば水晶壊しちゃったけれど大丈夫かしら?」



 アエリアが今話している相手はアエリアのギルド登録をしてくれた受付のお姉さんこと、受付嬢のアリエスという女性で、彼女はタヌキ型の獣人族で頭の上には丸い可愛らしい耳とぷっくり膨れた尻尾があり、耳も尻尾も髪の色と同じピンク色だ。



「ええ、大丈夫です。本当に偶になのですが、同じように壊しちゃう方もいるので…」


「あら、その人は相当な才能の持ち主なのね」


「リア程じゃないと思いますよ?私、訓練場での戦いを見ていたのですが…まさか剣や斧を砕いたり、人を吹き飛ばすなんて魔法使いじゃ素手で出来ないですよ…?」


「まぁそうでしょうね~」


「しかも最上級魔法の回復魔法や上級魔法の空間魔法まで使っちゃうし…後あれですよ!全適正なんてほんと片手で数えるぐらいしかいないんですよ?世界で!」


「あら、結構いるじゃない。そこまで珍しいものじゃないじゃない?」


「リア…私はあなたの感性を少し疑ってしまいます…」


「ん?そう?私は戦闘力以外普通よ?」


「そう言うのは私みたいな人が言う事です」


「あなたは普通じゃないわよ?可愛いじゃない」


「ひゃぁ!い、いきなり耳触らないでください!くすぐったいですよ!」


「ごめんなさいね、可愛らしい耳が頭の上にあったからついね。それじゃ私、そろそろユリスの所に行かないといけないからまた後で依頼完了報告にくるわ。またねアリエス」


「まったく…はい、気を付けてくださいね」



 歩きながら背中越しで手を振りながらギルドの外に出ていく。


 アリエスと話している間、ギルド内はずっとざわざわしており、アエリアに叩きのめされた冒険者達はアエリアを『死神の聖職者』と呼びずっとその話題で持ち切りだった。


 それはギルドの外に出ても同じで、道行く人達がその異名で呼んでおり口の軽いやつと耳の早いやつがいっぱいな王都に溜め息を吐きながらユリスと待ち合わせのカフェへ向かう。


 カフェのテラスでは飲み物を飲みながらうさ耳がピコピコして、腰辺りから短くて白いちっちゃい尻尾がぷるぷるしている真っ白な女性がおり、アエリアを見つけると元気よく手を振ってくる。



「お待たせユリス」



 近づきながら手を振りつつ挨拶すればユリスが頬を膨らませる。



「もーリア…すごい心配したんだよ?…え?な…何…?」



 真ん丸の赤い瞳で見つめてくるからその瞳をアエリアも体を乗り出してじーっと見つめ返すと顔を真っ赤にして視線を逸らす。



「悪かったわ。だって頭にきちゃったんだもん」


「だもんって…可愛く言ってもやってる事はかなりえぐかったからね…?死神の聖職者なんて呼ばれちゃうし…」


「いいのよ、好きに言わせておけば。今は目の前の子ウサギちゃんのパートナーとしてここにいるんだから」


「子ウサギじゃない!というよりリアは登録したばかりでランクはFのままなんじゃ…?一緒に依頼出来るの?」


「ユリスってランクは?」


「私はBだよ?」


「なら丁度私と同じね。なんら問題はないわ」


「え!?!?Bランク!?!?嘘でしょ!?」


「嘘じゃないわ、ほら」


「う…うそ…ゴールドのギルドカード…私頑張ってBまで上げたのに…でも何で!?」


「さっきユリスも見てたと思うけれどさっきの模擬戦で戦闘力は示したし、以前森の中でマッドベアに会って倒したのだけれど、その時の死体をアイテムボックスの中に入れているの忘れてて、それを売却したらアリエスが更新してくれたの」


「ま、マッドベア!?Bランクパーティで倒すレベルの魔獣を一人で…ああ…でもあれだけ強ければ…」


「まぁ今はそんな事どうでもいいじゃない。それでユリスは何のクエストを受けたの?」


「そんな事で片付けていい事なの?これ…えっと王都から北に進んだところに雪山があるんだけど、そこに咲く雪結晶の花の採取ってやつで二本必要なの」


「ふーん、雪結晶の花ねぇ…」



 アエリアはそう呟きながら自身の後方に腕を伸ばすと肘から先が無くなる。



「ん?リア何してるの?って腕!腕無くなってる!?」


「ユリス、雪結晶の花ってこれかしら?」



 そう言ってテーブルの上に雪の結晶の様な花弁を付けた花が二つあり、その周囲は雪が降って白くキラキラしている。



「え!雪結晶の花…!一週間以上かかると思ったのに…」


「これユリスにあげるわ。まだあるし、クエスト受ける時に邪魔しちゃったお詫びとして受け取っておいてちょうだい」



 ユリスにそう伝えるともう一度手を後方に伸ばし、そこから密閉出来るビンを二つ取り出しその中に花を入れてユリスに手渡す。



「これに入れておけば溶けたりする事は無いと思うわ。提出が終わったらそのビンはもらっちゃって良いわよ。それに入れておけば温度が変わらずに保存出来るアイ…魔道具だから」


「えっえ!!魔道具!?そんな高価なもの…」


「いいのよ。これからも仲良くして欲しいし、悪い事しちゃったからこれでチャラって事にしてくれるかしら?」


「リアありがとう!また私がクエスト受けたりする時には声かけてもいい?」


「ええ、いいわよ。でも私、ホームが無くてその日暮らしなのよねぇ…」


「そうなの?じゃあ、ホームが決まるまでは私が泊まっている宿屋教えるからここにきて!依頼受けてる時はいないけど!」


「あら、ありがとユリス。1クエストお手伝いする約束も果たしたし、私はちょっとホーム探しでもしてみようかしら」


「ん!そしたらここのお店がいいよ!安くていい物件結構用意してくれるから!」


「何から何まで悪いわね。もし決まったら伝えに行くから遊びに来てちょうだい。ユリスはこのクエストが終わったらしばらくはクエスト受けないのかしら?」


「うん!しばらくはそのつもりだよ!」


「そう、わかったわ。ありがとねユリス」



 お礼を伝えながらユリスのうさ耳の間に手を置き優しく撫でてあげる。


 ユリスは突然手を置かれたことに体がビクッとしたが、アエリアの撫でテクで顔が人前では見せていけないぐらい緩んでいたので、



「ユリス、顔すごいわよ」


「だ、誰のせいよ!」



 真っ赤になりながら講義してくるのでユリスとカフェで別れ、教えてもらった不動産へ足を運ぶ。



「いらっしゃいませ。物件のお探しでよろしいですか?」


「ええ、しばらくは王都に居ようと思って物件を探しに来たのだけれど」


「わかりました、ではこちらにどうぞ」



 と、男性スタッフに促されカウンターの席に着くと様々な物件が描かれた書類をカウンターに広げた。



「まずご条件をお伺いしても?」


「んーそうね…あんまり騒がしくない所で大きい家とかない?」


「そうですね…結構割高になってしまいますがよろしいですか?」


「ええ、その辺は大丈夫よ」


「わかりました、では…」



 物件を紹介されてはあーでもないこーでもないと男性スタッフと書類を睨めっこして、条件に合う様な物件がなく諦めかけた時に男性スタッフが神妙な面持ちで口を開く。



「…この際、事故物件とかどうでしょうか…?」


「それ、スタッフさんが薦めていいものなの?でも興味があるわ」



 詳細を聞くととある貴族が王国でクーデターを起こそうとしたが失敗に終わり、一家根絶やしになった物件との事。



「ふ~ん…物騒な事故物件ねぇ…」


「ここであればお値段も先ほどご案内した金額の1/3の金額でご提供出来ますよ」


「マジ?ちなみに月おいくらなの?」


「本来であれば先ほどの条件で別の物件だと月30万ニルになるんですが、ここは月10万ニルで、先ほどの条件に全て当てはまります。ですが南区のスラムが近いので治安がいいかは…」


「ここにするわ!!」


「ス、スラムが近いですが大丈夫ですか?」


「ええ、問題ないわ!ちなみに買取だとおいくらかしら?」


「か、買取!?しょ、少々を待ちください…別の者にも確認してまいりますので…」



 書類を抱えて店の裏に行き別の店員と何やら相談しているようだった。



「お待たせしました。買取であれば…200万ニルでどうでしょう?」


「買ったわ!」



 そう言いながらインベントリから200万ニル分の金貨が詰まった袋をカウンターにドンッと置き、スタッフに渡すと慌てた様子で200万ニルあるか計算してくれる。



「…はい、確かに200万ニル確認しました。ではこちらが権利書にですのでここに署名と…」



 諸々の手続きをスタッフと交わした後に先ほどのスタッフが物件まで案内してくれるとの事で馬車に乗りながら目的地を目指す。



「お待たせしました、ここが購入された物件です」


「おおお…!これはいい感じね…!」



 二階建ての建物で窓の数から二階に八部屋と、向かいに同じ部屋が八部屋で計十六部屋、一階も応接室やらホールやらなんやらで広々している。



「気に入って頂けてよかったです。ですが注意してくださいね…もしかしたら幽霊とかが出るかもしれないですので…」


「ここまで助かったわ、本当にありがとう。また何かあったら相談させてもらうからよろしくね。安心して、やっぱり無しなんて言わないから」



 相談するといった時にスタッフが不安そうな顔をしたのでそういう意味での相談ではない事をしっかり伝えて屋敷の前の門で別れる。



「さーて、ここが私の拠点になるわ…!ちゃっちゃと魔改造して住みやすくしてみんなを探せるように情報を集めないといけないわね!」



 そう言いながら門を潜ったアエリアはこの後、この屋敷で待ち受ける試練に立ち向かう事に…ならなかった。


 スタッフに幽霊がいるかもしれないと言われて一人になったタイミングで聖域(サンクチュアリ)で土地全体を清めてしまった。


 聖域を張った時に色々な悲鳴が聞こえたが、アエリアは『これでよし!』と言いながら屋敷に入って行くのであった…。

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