輝花へのお礼
よろしくお願いいたします!
「危なかったねっ」
いつの間にか駈の隣に来ていた蓮火が冷や汗をかきながら言った。
視線の先は、もう何もない地面に向けられている。
「ええ。僕たちが縄を登っている間にあれが起きていたら……」
駈と蓮火は身震いする。
「それにしても、嘆きの館の地下にあんな部屋があったとは驚きました」
「そうだよねっ。ダンジョンの一部になってたってことだもんねっ」
「不思議なこともあるもんですねぇ」
駈は頷いた。
「でも、これは大騒ぎになりそうですねぇ」
「なるだろうな」
「うわっ、ビックリした?!」
いつの間にか輝花も駈の傍に近付いて来ていた。
「あ、先生っ! ありがとうございました!」
蓮火は輝花へ、助けてもらったお礼をする。
そのきれいな黒髪の先っぽが、地面につきそうになっていた。
「……ああ。気にするな。それよりも、だ。お前ら随分と仲良くなっているようだな」
礼を受け取った輝花は、駈と蓮火の距離感に言及してくる。
輝花の言葉に反応し、バッと勢いよく頭を上げた蓮火は、あからさまにアワアワと動揺し始めた。
「え、ええっ?! そ、そんなっ?! か、駈君とはまだ会ったばかりで、そんな仲では……」
輝花のその言葉に、蓮火は急速に血を顔へ上昇させ恥ずかしがった。
口では肯定していないが、その表情はにやけたものとなっており、満更でもないことが明らかだ。
おまけに両の人さし指同士をツンツンとさせている。
「ええ。蓮火さんには色々と助けて頂いて……」
対して駈は幾分か冷静に応えていた。
蓮火が先に驚いてくれたというのもあるが、輝花の方から何となく不穏な気配を感じたためだ。
「ほう、もう名前で呼び合うほどのものなのか。お前ら、会ってまだ一週間も経っていないだろう?」
全く。あの女といい、どうなってるんだこいつの周りは。
駈には聞こえない声で輝花は呟いた。
「え、ええ」
何だろう。
先生がすごく怒ってるような気がする。
どうすればいいのだろうか。
あっそうだ。
「先生、そう言えば!」
不機嫌そうな輝花に、駈は破れかぶれに勢い込んだ。
「……なんだ?」
輝花はまだ、眉間にシワを寄せ難しそうな表情を駈に見せている。
「あの……ありがとうございました! 今日のこととそれから、10年ダンジョンでのことについても!」
駈は輝花への感謝の気持ちを表すかのように、勢いよく頭を下げた。
間接的に、いやもはや直接的に命を助けてくれたこと、その過程で蓮火という人物と引き合わせてくれたことに。
「……フン」
しかし、輝花は相変わらずだ。
駈は一か八かの博打に出た。
もちろん、博打とは言っても、その気持ちに偽りはなかったが。
「それで、僕にできることがあれば、お礼に何かさせてください」
「……ほう?」
駈の言葉を聞いた輝花の声は、先ほどまでのぶっきらぼうなテンションとは違っていた。
「何でもか?」
「……僕にできる範囲であれば」
流石に何でもは無理だ。
だが、意外とグイグイくる輝花に対し、駈は新鮮な気持ちを持った。
「……考えておく」
輝花はもう、怒ってないようだ。
なんとか、機嫌を直してもらえたようで、駈はホッと息をつく。
むしろ輝花の機嫌が良くなっていることに駈は気付かなかったが。
「いやっ、ボクとしてはもっと仲良くなりたいと思ってはいるというか……もちろん駈君しだいではありますがっ」
蓮火は駈との今後について、トリップしていた。
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