アカズのダンジョンと旧きもの24
よろしくお願いいたします!
そう言えば、駈君!
駈がリストから受け取った装備を確認していると。
蓮火が駈に呼び掛けた。
「何でしょうか蓮火さん?」
「今って何時かな?」
「げ」
駈は慌てて、恐る恐る腕に着けた時計の針を確認する。
時刻は既に三時を回っていた。
アカズのダンジョンに入ったのが、夜九時過ぎだったため、六時間ぼどはダンジョンにいたことになる。
意識すると、駈と蓮火の身体にどっと疲労が押し寄せてきた。
「何か疲れたね……」
「ええ。そうですね……」
駈と蓮火は二人してため息をつき、同じタイミングでリストの方をチラと見た。
二人に見られたリストは不思議そうにコテンと首を傾げた。
「む、どうした二人とも」
「いえ……」
「別に……」
「息がピッタリだな。まるでお互い共通の厄介者を相手にしているような感じだ」
「まあ……」
「そうですね……」
「なんだなんだ。若者がそんなに疲れてちゃいかんぞ」
疲れた原因の一つが目の前にいるのだが、それは言わない駈。
「ちなみにここからどうやって帰ろうかな?あと、そもそもこのダンジョンから出れるのかな?」
蓮火が不安そうに駈に如何を問う。
駈もどうすればいいか分からなかったので、リストに相談を切り出した。
「んー、どうでしょう。リストさん、ここから地上まで出る方法ってあるんですか?」
突然話を振られたリストは、困ったように眉尻を下げて駈に返答する。
「わたしに聞かれても困るんだが……」
取りあえず。
と上を見上げながら、リストが呟く。
「天井をぶち抜いてみるか」
「なんて短絡的っ!!」
「今ならいけそうな気がするんだ。君たちがこの部屋に入ってくる前まではうまく魔法が使えなくてね」
まあ上手くいけば。
とリストが明るい口調で提案する。
「君たちが進んできた道を引き返すよりも手っ取り早いかもしれないよ?」
それはリストの甘い誘惑だった。
正直、疲労困憊だった駈と蓮火は悪魔の誘いに乗ってしまう。
「まあ、駄目元でやってもらうくらいだったらいいのかな?」
「そうですねぇ。結局のところ、もしダメなのであれば元来た道を引き返していくしかないですからねぇ」
二人は頷き合う。
「じゃあ、リストさん。お願いしても良いですか?」
「任されたよ。君たちの期待に応えることができるよう頑張るよ」
危ないから離れていろ。
リストから注意を受けた駈と蓮火はこの部屋の出入口付近で待つことにした。
二人はリストが何かするのを見学していた。
リストがやおらに天井に向かって手の平を向けると、隠し部屋の天井にゴソッと穴が開く。
「あれは何の魔法なんでしょうか?そもそも魔法なんでしょうか?」
「んー、なんだろうね。魔法だとしても普通属性ではないと思うんだけど」
駈と蓮火には、リストが起こした現象を説明できるだけの知識がなかった。
「穴を開けたはいいんだが……さて」
「なんか幸先が悪そうになっていませんか?」
「うーん。穴を開けてから何もしないね」
「よし。それしかないか」
リストがやおらに頷いた。
「なんか呟いていますね」
「うん。なんだかとっても嫌な予感がするんだ」
「奇遇ですねぇ。僕もです」
リストがおもむろに、両手の平を交互に上へ突き出し始めた。
リストの手がピンと伸びるたびに、天井に穴が空いていく。
「あの人は何をしようとしているんでしょうか?」
「分からないけど、天井が穴ボコになってきたね」
「そうですねぇ。あっ、なんか崩れそうですよ」
「うん。さっきからメシミシいってるよね」
「危ないですねぇ」
「そうだね」
二人は軽く現実逃避していた。
やがて満足したのか、リストがうんと一つ頷いた。
「おーい2人ともー」
「呼んでますよ。蓮火さん」
「うん。そうだね」
「天井が崩れるから気をつけろー」
「「終わる前に言えや?!」」
全速力で部屋から出た駈と蓮火。
「突拍子もないことをしますねぇ」
「うん。まあ、薄々とは予想してたけどね」
天井に穴あけてたし。
蓮火が付け加える。
「旧きものっていうのはみんな、ああもぶっ飛んでるもんなんですかねぇ」
「まあ、ボクたち人間の常識には合わせない方が良いだろうね」
「そう言えば、リストさん部屋に置いてきてしまいましたが、大丈夫ですかね?」
「うん、自分でやったんだから何とかしてるでしょ」
「そうですね」
やがて崩壊の音が聞こえなくなったため。
駈と蓮火の二人はリストがいる部屋に戻るのだった。
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