蓮火の胸のうち
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蓮火の太ももの上で駈がみじろぎした。
駈が寝やすいよう蓮火もそれに合わせる。
頭を撫でる手はそのままだった。
幼い寝顔だ。
蓮火は駈の寝姿を見て、そんなことを思った。
というのも、彼は年の割りにどこか飄々としているというか達観しているようなところがある気がしていたからだ。
あの時もそうだ、と蓮火は駈と会った十年ダンジョンでの出来事を思い出す。
自分よりも明らかに格上の強大なモンスターを相手に、剣も折れて服もボロボロになっていて、それでもなお必死に足掻いているようだった。
結局、その努力は報われることなく壁に追い込まれ、ついにはもうダメだと、死にたくないという絶望の表情を浮かべるのかと思えば。
笑っていたのだ。
その顔は何かを覚悟したか、それともしょうがないという諦めを意味していたのか。
それは定かではないが、確かに静かに笑っていたのだ。
彼は死にたかったのだろうか、これでやっと終われる、そんなことを考えていたのだろうか、それは分からないが。
なんでたろう。
その顔は笑っていたはずなのに、迷子になってどうすればいいのか分からなくなった子どものような、そんな寂しそうなものに見えた。
彼の表情を見たら、何故か身体が勝手に魔法を使っていた。
本当は見殺しにしようと思っていたのに。
冒険者なんてどこで死のうが、自己責任だ。
それは冒険者学校の学生であっても変わらない。
無謀なチャレンジをして死んだ同級生を見たり、話を聞いたりして。
自分はああならないようにしようと、気を付けようと、遅まきながら気付くべきなのだ。
死は間近にあると。
確かにお金を稼ぐチャンスは、普通に生きるよりも格段に増えることだろう。
ただそれは、ダンジョンに潜るという危険な行為が伴うものなのだ。
そこから目を背けて、メリットだけを享受しようなどと都合の良い考えは、冒険者では通用しない。
そんな甘い考えが捨てられなければ、どことも知れない場所で寂しく死んでいくだけだ。
ましてや、こんなダンジョンに一人でいたのだ。
自業自得である。
彼の顔を見るまでは、そう思っていたのに。
知りもしない、その日初めて見ただけの彼のために。
助けたって何かが変わるわけでもないっていうのに、そんな損得勘定なしに彼を救うために動いていた。
どうせ、自分の名前を聞いたら、彼も簡単に離れていくだろうに。
その目に侮蔑の感情を乗せて。
そう……思っていたのに。
『なんで関わんない方がいいんでしたっけ?』
その言葉を聞いた時は、頭が止まった。
なんでも何も自分の名前を聞いたら、普通はそうすべきなのだ。
なのに。
『あなたに会ってから助けられてしかいないですしねぇ。それで関わんないなんてほざいたらそれこそ図々しいような気がしますし』
そんなことを言われて、ダンジョンに潜る手伝いを頼まれて、いつの間にか了承してしまっていた。
楽しかった。
自分の名前を聞いて、それでもそんなことを言ってきた人は初めてだったから。
しかもそれだけじゃなく。
ずっと友達でいたいと思っていますし。
友達って。
それも生まれてから初めてだった、そんなことを言われたのは。
友達でいたいなんて。
初めて尽くしだ、彼と会ってから。
そしたらなぜか、彼が慌てておこがしまかったなんて言うもんだから、自分も慌ててそんなことないって、友達になろうよって食い気味に叫んでいた。
嬉しかった。
心の底から笑っていたと思う。
自分もこんな顔が出来るんだって、してもいいんだって、そう思えた。
ダンジョンに潜ってる時々に、いや、その前からもか。
彼にからかわれて、彼がいたずらっ子のように笑っていて、自分はプンスカ怒るけどそれでも彼は笑っていて、自分も最後は笑っていた。
そんなやり取りも、新鮮で楽しかったんだ。
だから、この部屋に入ってきて、リスト様と親しげに話す彼を見て、怒って。
いや、リスト様に嫉妬して、拗ねてしまった。
彼はそれでも、優しく慰めてくれたけど。
そしたら、また嫌なことが起きた。
リスト様が彼に、ち、ち、ちゅー。
をしていた。
取られると思った。
彼をリスト様に取られてしまう、そんなことを思ってしまった。
だからボクもーーーーー
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