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その箱を開けた世界で  作者: ナガズボン
第1章 鳳凰院 蓮火(仮題)
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アカズのダンジョンと旧きもの14

よろしくお願いいたします!

「ごほん」


 駈とリストの掛け合いを傍観していた蓮火だったが、遂に我慢ならずといった調子で、咳払いによって二人の間に割って入る。

 一点を除いて先ほどのリストと同じだった。


「どうし……」


 た、と続けようとしたリストの言葉がそこで止まる。

 彼女にしては珍しいことである。

 駈はリストと同じく視線を滑らすと、なるほど、と冷や汗を流しながら納得した。


 蓮火が無表情になっている。

 茶化せるような雰囲気は皆無である。

 先ほどのリストの咳払いと違う点だ。


 ここでふざけられるとしたらウダくらいしかいないだろう。

 いや彼も鈴を恐がっていたから無理か。


 なぜ、年頃の少女の無表情は時々、こんなにも恐ろしく感じるのか。


 多分ではあるが、鈴と蓮火、その二人の顔が整っているだけに、十割増しで恐くなるのだろう。

 有名な画家が書いた不気味な人物画のように。

 実習用のダンジョンで一緒になった美少女のアシュリーもあんな顔をするのだろうか。

 きっとするのだろう。


 自分があんな表情をしても精々、出来の悪いオモチャである。

 リスト当りには、ご褒美だ、と言って吹き出されるに違いない。


 駈はわりとどうでもいいことを頭に思い浮かべていた。


「終わった?」


 蓮火がその美しく端正な、ただ今は無機質な美術品のようにしか見えない顔をしながら、駈とリストに問い掛ける。

 二人はまるで、最終通告を聞き入れる罪人のような気持ちで答える。


「あ、ああ。終わったよ。な、カケル君?」


「はい、終わりました。蓮火さんすいませんでした……」


 駈は誠心誠意、頭を下げて蓮火に謝った。

 リストも駈に習う。


 二人の謝罪を聞き入れたのか、蓮火はうん、と一つ頷きを入れた。


「別に喋るなっていうわけじゃないんだけどさ、さっきから2人とも真面目に話をしないし全然話が進まないし」


 それに、と。

 もじもじと口ごもりながらも蓮火は続ける。


「なんだか2人だけで仲良さそうに話をして、ボクは中々そこに混ざれないし」


 ついには泣きベソをかき。


「拗ねちゃった。ごめんなさい」


 今度は蓮火が謝った。

 それに慌てふためくのはリストでなく駈だった。


「れ、蓮火さん!ご、ごごごめんなさい」


 それでも、下を向いたままでいる蓮火を見て、リストが駈にとあるジェスチャーを与える。


 どうやらそれをやれと言っているらしかった。

 そう判断した駈は、恐る恐る蓮火に近づき、その華奢な身をそっと抱き締め背中をポンポンと叩いた。

 ついでに頭を撫でる。

 子どもをあやすように。


「蓮火さん。本当にすいませんでした」


「……ううん。何だかごめんね?小っちゃな子どもみたいだね…」


「……いえ。僕も友達と一緒にいる時に他の人とずっと話しをされてたら良い気はしません」


「友達……か。ボクたち、そう言えば友達なんだよね」


「はい。それは自信を持って言えます。誰にも否定はさせません」


「……そっかっ。ありがとうっ!もう大丈夫だよ!」


 駈はその言葉を聞き抱擁を解く。

 蓮火の顔を仰ぎ見ると彼女らしい表情が戻っており、ホッと胸を撫で下ろす。


 いつかは友達以上になれるといいな。

 だから駈は、そんな呟きを聞き取ることが出来ないのだった。

お読みいただきありがとうございました!


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