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その箱を開けた世界で  作者: ナガズボン
第1章 鳳凰院 蓮火(仮題)
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アカズのダンジョンと旧きもの12

よろしくお願いいたします!

 ごほん。


 駈と蓮火の喜びの舞いは、そんなリストの咳払いで終わりを告げる。

 蓮火が一方的に跳ねていただけだが。


「はっ?!」


 駈はリストの催促とも取れる音を聞き、蓮火にストップをかける。


「れ、蓮火さんっ。あの、ありがとうございました!そろそろ……」


「えっ、あっ、そ、そうだねっ!あはは……」


 蓮火は駈の声に反応すると、おもむろに彼の手を握っている自分の手を見つけると、パッと手を離す。

 そして、恥ずかしそうに顔を俯かせ、両手の人さし指同士をツンツンと付き合わせている。

 耳が赤くなっていた。


 嬉しかったが、そんなに恥ずかしがるならやらなくても、いや、でも柔らかかったしなぁ。

 駈はそんな複雑な心境になっていた。

 この男わがままだ。


「で、だ」


 そう言うとリストは、駈の力によって中身を見せた宝箱を確認する。


 そして、今思い出したというようにグーにした手でポンと手の平を叩く。


「ああそうそう。そう言えばこんなものを入れていたな」


「えっ?!」


 リストのその言葉に駈は驚きを見せる。

 疑問を口に乗せる。


「リストさん箱の中身を知っていたんですか!?」


「ああ。知っていたというか中身をこの箱の中に入れたの私だしな」


「で、でもさっきは分からないって…」


 箱の中身について、リストの先ほどの回答を思い出し、蓮火はそんな問いかけをする。


「ああ、あれね。忘れてたよ。中を見て今思い出した」


 いやーすまん、あっはっはっはっ。

 あっけらかんとそんなことを言う。


 ツッコもうかと思った駈だったが、何となく止めたほうがいい気がして。

 箱の中身について、リストに聞き直す。


「それで、リストさん。これは何なんでしょう?」


 中身を目に写し、駈はリストに何何する。

 

 それを聞いたリストは少し不思議そうな顔をして、


「む、珍しいな、カケル君。今のわたしの言動にツッコミを入れないとは」


「入れてほしかったんですか?」


「……むう、中々やるな」


 それだけを言うと、リストは宝箱について説明し出した。


「まず、中身よりこの箱について説明しようか」


「そう言えば、先ほどこの箱の中に中身を入れたって」


「うん、よく覚えてたね」


 蓮火の言葉に少し嬉しそうにしながら頷きを返すリスト。


 そして続ける。


「この箱は友人からもらったものなんだけどね。とあるダンジョンの宝箱の中にこの箱が入っていたらしい。箱の中に箱が入っていたとはこれいかに、という感じだな。はっはっはっ」


「ちょっ、話が脱線しかけてますよ!」


「ああ、すまんね。それで、この箱なんだが、冒険者ギルドで1番に優れている鑑定士に見てもらったらしいんだ。そしたら」


「そしたら?」


「詳しいことは分からないと言われたそうだ」


「小ボケはもういいよ!!」


「いや、失礼。詳しいことは分からなかったが名前は判明したそうでな。成長の箱と言うらしい」


「成長の……箱……」


「うん。まあ、名前から推測するしかないが、中に入れたものに何かしら良い影響を与えるのだろうと、あたりを付けてな。これを入れておいたのだよ」


 そう言って、駈によってフタが開いた宝箱から中身を取り出す。

 それは、丈夫そうな上下一セットの服、上着とズボンだった。

 何の変哲もなさそうなそれら、しかし何故か駈はそこから目が離せなかった。

 駈の様子を見たリストは満足そうに一つ頷きを入れ。


「どうやら気に入ってもらえたようだね」


「……あっ、いやっ、失礼しました!」


「ああ、いいんだ。もともと君にあげるつもりのものだったから」


「えぇ?!いや、でも……」


「遠慮することはない。これはあれだ、お礼も兼ねているんだから」


「お礼?」


 不思議そうにする駈。

 リストは珍しく、その頬を赤く染め口ごもりながらも駈に答える。

 その変化は、わずかなものだったので蓮火しか気付かなかったが。


「……ああ。わたしを、まあわたしが最も希望する形ではないが、仲間にしてくれた。そのささやかなお礼だ」


 そんなリストの不意討ちに、何だか無性に恥ずかしくなってしまう駈なのだった。

 


お読みいただきありがとうございました!

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