アカズのダンジョン3
よろしくお願いいたします!
「そう言えばさ」
お互いに照れくさくなる事件、とも言えない出来事が終わった後。
しばらくダンジョンを進んでいた時にふと、蓮火は話を切り出した。
「ここって何階まであるのかな?」
「えぇっと、確か今のところ7階まで確認されていますね」
「へぇ、そうなんだ。って、いつの間に確認してたの?」
「ギルドにいた時、ボードに書いてありました」
「すごいや……よく見てるね。ボクなんてそんなこと気にしたことないや」
「結構役立つ情報が載ってるんですよねぇ、ギルドのボードって。でも意外と見ていない人が多くて。僕にとっては非常に助かってます」
死活問題ですからね、と駈は続けた。
「えーと、自分で授業料とかも稼いでるんだっけ?すごいよね。ボクの親は、お金だけは出してくれるからね」
そう言うと、蓮火はダンジョン内を歩いていた足を止め、何かを考えるような仕草を見せ始める。
駈も一緒に足を止め、蓮火の方を仰ぎ見た。
少し経つと、決めた、という声が駈の耳に聞こえてくる。
蓮火は駈の方に向き直り、接近してきた。
その距離は相変わらず近く、きっと目が悪いんだろうと、現実逃避をする駈。
「ボクも自分で稼ぐようにするよ!生活費とか授業料とか。親からもらえるお金は断るようにする!」
蓮火の突然の宣言を聞いた駈は目を白黒させ、身体を仰け反らせた。
「いやいやいや?!もったいないですって!いいんですよ、人それぞれなんですから」
「それにさ」
駈の言葉を聞いていないような様子で蓮火は告げる。
「た、たまには君とこうやって一緒にダンジョンに潜って、君のて、手伝いをするよ!」
ダメ、かな……?と蓮火は駈の顔をチラと見た。
さっきからズルい、と。
反応が可愛すぎる、と。
でも天然でそういうことやってるんだろうなぁ、悪い男とかに引っ掛からないといいなあ、駈はそう思った。
「えぇっと……ダメ、というか!そこまでやってもらうのは申し訳ないですし、費用を自分で稼ぐのって意外と疲れるんですよ!精神的に。だから止めといた方がいいと思います!」
そう説得する駈だったが。
「いーや、ボクはもう決めたんだ!あと正直、君って見てて危なっかしくて仕方ないしさ!それにさ……」
蓮火はそこで言葉を区切る。
それは次に言うことに対して緊張しながら、それでいて、大事にしながら丁寧に準備をしているような。
そんな印象を駈は覚えた。
あと、何気に酷いことを言われたような気もする。
「て、手伝ってあげたいって思ったんだ……だって、と、と、友達……だから」
「鳳凰院、さん……」
駈は感動していた。
その言葉はカミカミだったが、だからこそ、伝えたいという気持ちが溢れているように感じた。
顔赤くなってないかな、と駈は自分の顔を触る。
そんなことをしても全く分からなかったが。
因みに蓮火の顔は、自らが出す炎の魔法のように。
いや、むしろそれよりも赤くなっていたのではなかろうかと駈の目には見えた。
「え、えぇっと。じゃ、じゃあ無理の無い範囲で手伝っていただけるなら助かります」
「蓮火」
「はい?」
「蓮火って呼んでくれたら、手伝ってあげるよ」
友達って名前で呼び合うものだよね、言外にそういった意味が込められているよう駈には思えた。
「えぇっと。蓮火さん、でいいですか?」
むう、と少し膨れっ面を見せる蓮火。
「呼び捨てでもいいんだけど」
「いやいやいや!年上ですし、いくら友達でもいきなり呼び捨てはハードルが高いですって!」
「むむう……そういうものなのかな?」
「そういうもんです」
「ほんとは敬語もいらないんだけど」
「蓮火さん、すんません!ほんと、これで勘弁してください!」
何とか納得してくれ。
祈るような心地で駈は蓮火の答えを待つ。
その祈りが届いたのか、届かなかったのか定かではないが。
「うーん、分かったよ。今は、とりあえずそれでいいよ。じゃあこれからよろしくね!」
「えぇっと、よろしくお願いします」
いつの間にか手伝ってもらうことが規定路線になっている気がしたが、非常に助かることではあるので、まぁいいかと。
それ以上、考えることを止める駈なのだった。
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