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その箱を開けた世界で  作者: ナガズボン
第1章 鳳凰院 蓮火(仮題)
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ダンジョン実習:サイド『鈴』

 鈴が気付いた時、目の前にはすでに、半透明の壁が出来ていた。


 その先で、駈がモンスター(?)と相対しているのが見える。


 尤も、言葉を喋るモンスターなど、鈴には聞いたことがなかったが。


「何ですかこの壁はーー?!」


 お下げが狼狽えた様子で叫ぶ。


「気付きません、でした。見たことがないものですが……魔法なのでしょうか……」


 アシュリーは、恐る恐る壁に触れる。


 どうやら、この場にいる全員が気付かない間に、出来たものらしかった。


 アシュリーが壁を調べていると、大きな音が彼女の横で響く。

 班員にとっては驚愕の事態だったが、鈴が壁を殴って出した音だった。


「とりあえずこれを壊して駈と合流した方がいい。あれは得体がしれない」


 そう言うと、鈴は次々と拳を繰り出していく。

 その一つ一つが凄まじい力を持っており、アシュリーたちは目を疑った。


 あの細い身体のどこに、そんな力があるというのだろうか。

 そんな疑問の目に気付いたわけではないだろうが、殴る手を止める鈴。


「やらないの?」


 そして、ジトッとした目でアシュリーたちを見る。


 一行は慌てて、各々の方法で壁を壊そうと試みる。


 しかし、一行の中でも最も高い威力を持つアシュリーの魔法を撃ってしても、鈴の馬鹿力を持ってしても、壁はびくともしないのだった。


 そうこうしていると、駈とモンスターがつばぜり合いを始めている光景が、鈴の目に入った。


 力は拮抗しているようで、ひとまずの安心を得る鈴ではあったが、両者が離れるとその顔色が変わる。

 モンスターが指を差し出したかと思えば、その先から細くて眩しい何かが放たれたのが、一瞬光って見えたからだ。


 その身に当たる前に、駈は横に転がり何とか避けたようであったが、もし自分があの場にいれば、そして、それが致命傷となるような威力を持つものであれば、ゾッとするものを鈴は感じた。


 壁を壊すことに集中したい鈴であったが、直後さらに、それを妨げる瞬間が訪れる。


 駈がうずくまったかと思えば、何かに苦しみ始めたのだ。

 

 しかし、あのモンスターが攻撃した様子は見えなかった。

 今も、苦しむ駈を見ているだけである。


 

 鈴は考えることをやめる。

 目の前の壁を壊す、ただそれだけに恐ろしいほどの集中を見せ始めるのだった。

ありがとうございました!

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