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VRMMORPGの世界の果ての果ての果てまで旅をする  作者: 8TR残響
第一章、ゲームプレイ1日目
9/27

第八話 「はじめてのアイテム、ワルスベルグの町(1)」

 ざわざわ、がやがやという声がする。というか雑踏のざわめきが手に取れるようで。ゼファーとトルゼに連れられてきたここは、この町の市場らしい。

 町を一直線に突っ切る道路の両脇に、とにかく店舗だの、露天商だのが軒を連ねている。縁日といったら言い過ぎだけど、どこかそんな雰囲気かな。西欧や中近東のバザール、といってもいいかも。

 空は相変わらず、カラっと晴れていた。春の陽気だ。そんな中、このように活気がある市場に身を浸していると、どことなくわくわくしてくる。

 しかし……

「数多いよね」

 私は二人にそう言うのであった。

「そりゃなぁ。生産系の巣窟だし、ここは」

「作ったものを売り買いするといったら、こういうところになるからね。町の隅っこで、しょぼしょぼと商売していても、よほどレアアイテムじゃない限り、認知はされないでしょ?」

「うーん、リアリティ」

 そこはかとなく納得する私だった。

「まぁ、ゲームとはいえ、人間のすることだしなぁ。たいてい、どの町もこういうモンだと思っておいたほうがいいぜ。例外もあるがな」

「これ全部が、商人カテゴリに属するひとたちなの?」

「NPCがやってる商店系施設と、一般商人プレイヤーが露天出してるのが半々、っていうとこだ。なかなかこういう区画に店を構えるとなると、金がかかるからな。先立つものがなんとやら、ってやつだ」

「うーん、リアリティ」

 そこはかとなく納得する私だった。

 ゲームといえども、全部が全部都合よくいく、ってわけではないようだ。むしろそこも含めての「生産系クエスト」なんだろうけど。

「で、どこ行けばいいの?」

「まず初心者を、海千山千の商人どもに連れていくのはなぁ」

「ボラれるってこと?」

「ないわけじゃないよ。でも、そこまで露骨なことをするひとも少ないかな。だいたい周りとのつきあいってのもあるからね。ここもまた人と人との関係だよ。それに、初心者向けに装備揃えたようなとこは、だいたい初心者向けセット組んでるからね。そこよりは、私たちみたいなのが、見繕ったほうがいいんじゃないかな」

「まあ、お頼み申し上げます」


 それで、市場の通りを中くらいまで行ったところで、私たちはとある商店に入っていった。カランカラン、とドアを開けると、狭いカウンターの先に、頑固そうな親父さんがいる。

「いらっしゃい」

 それだけ告げて、こっちをじっと見てくる親父さん。ひょっとして……

「この店、じゃあさっき言ったように、NPCの店なんだ」

「まあふつうのRPGの店と同じようなもんだな。駆け引きもなく、しかし扱うものは、間違いはない。お前の場合、今回主に初心者向けの装備とアイテムを揃えるんだから、こういう店で十分だ。それに……」

「それに?」

「お姉ちゃん、最初にログインしたばかりでしょ。所持金、初期設定の1000G (ゴールド)しかないんじゃない?」

 YES、その通りですな。

 もちろん、目の前の二人に融資してもらう、って手もあるけど、初手からそれは、私はなんかイヤだ。二人も、それを見透かしているんだろう。私がそういうことを言うタチじゃない、ってことを。

 まあ、そういうことを考えていくと、露天(商人プレイヤー)といろいろやったりするよりも、まずはこういった店で、装備やアイテムのあれこれをきちんと知ったほうがいいのかもね。

 ゼファーは検討しながらいう。

「武器、防具に400G、アイテムを備蓄しておくのに400G、かな」

「200G残したのはどういうこと?」

「保険だよお姉ちゃん。最低限の回復アイテムとか、宿屋とかを使うのに、それくらいは必要でしょう」

「おお、現実的だ。トルゼとは思えない」

「お姉ちゃんは私をどういうふうに思ってるのかなー?」

 私はさっと微笑んでそれを流す。

 んで。

「私――花屋、の武器っていったら、なんか、【鎌】なんだけど。あるの? こういうとこに」

「そもそも花屋がどういう職業なのかが俺にはわからんのだが……ここにはねえなぁ。そもそも鎌ってマイナー武器だし」

「そうなの? 日本の昔は、忍者とかが使ってた、ほら鎖鎌」

「おいおい、ここは西洋ファンタジーの世界だっつの。それよりは、鎌っていったら、背丈ほどもある大鎌のほうがメジャーだな。それこそ、おまえのルックスのような死神が持つような」

「ゼファー、そもそも何で鎌なのかな?」

 トルゼがきょとんとした顔でゼファーに聞いた。するとゼファーはどことなく渋い顔をして、

「わかんねえ……ほんとわかんねえ。そもそも花屋って、ほのぼの系ファンタジーラノベじゃあるまいし、そんなんがジョブになったとこで、戦闘で何するって話だし」

「花屋を選んだ私の前でよくもまあ」

「実際そうだろう。んで、こういう初心者向けのところでは、だいたい扱ってるのは、剣、槍、ナイフといった基本装備だから、マイナー武器はない」

「じゃあそういったとこに行こうよ」

「ところが、ちゃんとした鎌っていうのは高ぇんだ。だから、それまでは……そうだな、店主、これをまずは」

「マイド」

 そうしてゼファーから手渡されたのは、小振りなナイフだった。何の変哲もない、ただのナイフ。

「……これが武器?」

「まあ花屋が剣を扱えるわけでもなし。お前、ステータス画面を見てみろよ、攻撃力補正、どうなってる?」

 ナイフを手に取った私は、ステータス画面を見てみた。そうすると、

「あ、ちょっとあがってる」

「それと、こっちの剣を持ってみろ」

「んー?」

 私はゼファーの剣と、私 (のものになったらしき)ナイフを交換する。……って、

「うっわっ、なんて攻撃力が上昇するんだろう、っていうか明らかに私のほかのステータスと違いすぎる……」

「ゼファーの装備も、廃人仕様だからねー」

「おい、ガチゲーム廃人、俺にそれを言うか?」

 ジト目でトルゼに言うゼファー。で、ゼファーは私に引き続いてこういった。

「でも、武器特性の特別補正効果はかかんねえだろ?」

「あ、ほんとだ」

 ナイフのときにあった、数値の横の上向きの矢印がない。むしろ下向きの矢印がある。かなりガッツのある感じの下向き矢印だ。

「ようするに、それはお前向きの装備じゃない、ってことだ。このあたりをしっかり認識しとかないと、無駄な買い物になっちまう」

「うーん、まあ私一人だったら、たぶん剣とか買ってたと思うな。うん。それに、ナイフは旅に不可欠だから、いいんか」

「鎌は不可欠かどうか怪しいがな……」

 ゼファーは暗い面もちになる。それを言われたら、私も返す言葉がない。

「じゃあ次は防具だね」

 トルゼが言う。そこなんだけど……。

「防具って、重いじゃん」

「何言ってんだ、こいつ!?」

 ゼファーが思いっきりあきれる。

「だって、私は長旅するんであって、防具をあんまり重いものにすると、疲れるじゃん」

「まあそれはそうだが……。でも、お前の装甲、完全に紙だぜ」

「装甲紙ってどういう意味?」

「モンスターに攻撃されたらオダブツって奴だ」

「うーん、防具をあんまり買わなくて、防御力あげる方法ってなんかないかいな……」

「RPGこれまでにやってたらそういう言葉死んでも口にしないよね……」

 逆に関心するトルゼだった。呆れを通り越して、一周して逆に尊敬している様子すら伺える。

「それより私、靴がほしいんだよね」

「靴!」

「靴!」

 二人揃ってハモって驚愕する。

「だって、今履いてる靴、あくまで「ふつー」って感じなだもん。長旅には、そんな靴じゃだめでしょう」

「まあ、特殊効果持ちの靴じゃないとだめだな、確かに……でも、高いぜ、そういうの」

「靴を最初に買おうとするプレイヤーってはじめてだよ……」

「そんな奴、俺も見たことがねえ……さすがルルィだぜ……」

 まあ、この店ではそのあたりは工面できないようだ。これからこの周辺でお金を貯めてからの勝負ということかな。

 それに、防具といったら、

「私のこのマントってどうなの? 防御力的に」

「あー……まあ、ふつうよりはあるんじゃね、トルゼの町ルックよりは格段に」

「町ルックと比べてどうすんのさ、ゼファー」

 笑うトルゼ。でもそれに続けることには、

「あ、そうだ。そのマントに付与魔法エンチャントをかければ、鎧並みにはなるかもね」

「その手があったか。でもそれも高いコースだな」

「要は、魔法かけて、すごーいマントにするってこと?」

「お前さんのプレイ哲学じゃそっちのほうがいいだろう。でも、こっちも結構ムズいぜ、今のままじゃ」

「うーん、結構長旅って用意がムズかしいね」

「そもそも世界一周っていうのが無理ゲーなんだよ。それに比べれば、こんなの用意するなんて、屁みたいなもんだろ?」

「それもそうだね。それに、これくらいのことを成し遂げられないようじゃ、世界一周も無理ってことか」

「んだなぁ」

「お姉ちゃん、その意気だよ!」

 よし、ちょっとクエストに対するやる気がでてきた。当面は稼ぐことに邁進しよう。

「じゃあ、防具はとりあえず保留。その代わり、回復アイテムをしこたま買い込むぞ」

「そうだね、それがお姉ちゃんの防御力の代わりってことで。じゃあおじさん、ポーション10コ、毒消し5コ!」

 ポーションは1個30G、毒消しは1個50Gだ。合計550G。ナイフの200Gと併せて、750G。

「残り250G、か」

「この残りは、ポーションが無くなったら補充しろや。それに、宿屋は今は使う必要がないだろう、俺らのギルドハウスの回復施設使えばいい」

「悪いね」

「まあ、1000Gなんて、クエストやれば一瞬で稼げる金額だから。お前がさっさと俺らに頼れば、ハナっから10000Gくらいやるのに」

「それはあんまりなぁ」

「だろうね、お姉ちゃんの性格だと。借金って大嫌いでしょ」

「うん」

「そこんとこの潔癖さは……まあ、今はいい、か」

「ところでさ」

「ん? なんだ、ルルィ」

「ポーションって、今のやりとりから類推すれば、体力を回復するものだよね。で、毒消しっていうのは、それ以外の何かを解除するようなもの?」

 頭を抱えるゼファーとトルゼ。

「どうしようゼファー……この素人っぷり……」

「まあ、そこはフィールド戦闘でガシっと鍛えるか……」

 もう少し私もゲームとかやっといたほうがよかったかいな。でも今さらだし。

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