表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRMMORPGの世界の果ての果ての果てまで旅をする  作者: 8TR残響
第二章、ゲームプレイ2日目
20/27

第十九話 「はじめてのダンジョン、【四聖洞窟遺跡攻略】(4)」

「よっこいしょ」

 それまで隊列の一番後ろでのんきに哨戒していたゼファーが、はじめて隊列の先頭に立って、洞窟の壁をごそごそしている。

 ズズウウウウウウウム……と低い地響きでもって、その場が揺れる。そして、岩肌の面がスライドしていって、その場に大きな、石畳の階段がでてきた……奈落への階段……。


「よくこんなもん見つけるもんだね」

 ゼファーが探っていたのは、何の変哲もない岩の陰であった。そこに、このような隠しスイッチがあるとは。

「前このあたりにキャンプ張ったときにな。そしたらアラームがめっちゃ反応示して」

「アラーム?」

「アイテムやエネミー(敵)反応用のアイテムだ。いずれお前も必須のものになってくぜ」

「それは大事だ」


 さて……ここからは、さらなる地下への道筋であった。とはいっても、今までのように、土の洞窟を探っていく、というのではない。一気に、暗い暗いお城の中といった塩梅だ……まさに「遺跡」といったほうがいいかもしれない。四聖洞窟「遺跡」……むべなるかな、と思う。


 その外壁は、こんな洞窟内だというのに、石煉瓦で積まれていて--まるで、洞窟の中に遺跡を作った、というよりは、遺跡を隠すようにして土の洞窟を作った、といったほうがまだいいような感じがする。……そこまでして、何を隠す?


「お姉ちゃん、笑ってるね」

 にこっとした表情でトルゼがいう。

「そうかいな?」

「そうだよ。……冒険にドキドキしちゃったりする?」

「まあ日頃の私たちの生活っていうのは、アンチダイナミックスの日常だからなぁ」

 バンドとか音楽生活っていうのも、なかなかに地味だよ?


「あ、ひょっとして、ルルィ明日……ってもう明日か。リアル日付は。お仕事? 寝落ちする?」

 メフィリアがそう聞いてきた。この感覚、たぶんリアル相手は社会人だな。

「大丈夫だよアネさん。私は基本的にゼファーとトルゼと合わせて大丈夫だから。ていうか、あいつらは私に合わせろ」

 あっはっは、と快活な笑い声のヒーラーさん。

「姐さんいうな、というのはともかく、ほんとに仕事仲間なんのね」

「まあねー」

「結構大変でしょう、リアルゼファーとリアルトルゼとつきあうのって」

「わかりますか姐さんっ!」

 だーから姐さんは……っていおうとしたメフィリアを制して、ゼファーとトルゼがおもいっきし振り返ってこっち向いていった。


「リアルルルィの制御のほうが大変だっつの!」

 吠えるゲーム内ギルマス。

「そうだよ、お姉ちゃん、ガイ●チなんだから!」

 吠えるゲームでもリアルでも変わらん少女。ていうか……

 ぐりぐり。私はトルゼの頭にぐりぐりする。

「私のどこが気狂いピエロだっつう話よ」

「あ、地味に痛い、地味に痛い、お姉ちゃん、リアルと同じで地味に力ある!」


「どうマッドネスだったりするんだろう、結構常識人に見えるけど、ルルィさん」

 ジュンが疑問を呈してくる。

「んーあー」

 ゼファーが言葉を濁す。まあリアルの職業をあんま明かすわけにはいかんからな……。だが、ふと、後ろをふりかえって、「あ!」と思い当たるところがあったようで、青年、語る。

「そうそう、俺らの仕事のジャンル的に言えば、MK2、おまえがリアルルルィの本質に一番近いわ」


「……いきなり振られても困るんだけど、ルルィたん、僕ちんのこれはある程度ペルソナだからね? そんな人間が実際にいるとなると、興味はあるというか、逆に不思議になってくるんだけど」

 私も同感だ。この知性と痴性の同居人と、私がどう違う。違うところばっかりだろうが。


「簡単に言えば、俺らのジャンルにおける、超オタク・マニア気質。それさえやってりゃいい、みたいな廃人さん」

「なるほどねー」

 案外メフィリア姐さんが納得してしまった。なんでやねん。

「なんでそんな簡単に納得されるんだろう」

「んー、貴女って、すごい美人さんなんだけど、どこか女っぽくないというか、そんなとこ。そんな女のカン」

「女のカンで私の女っぽくなさを切られたぜ……」

 うごごご……これは何を示すのか……




 で、そんなことをダラダラしゃべっていたら、遺跡の最深部にたどり着いた。

 そこは、碁盤状に配置された、正方形の無数のマジックパネルが明滅する、不思議な空間だった。暗闇の虚空の中に、パネル平面ただひとつ。やってきた階段のほかには、なにもなし。その外側は、まさに深淵。落ちたら二度と戻ってこれない奈落。


 パネルの大きさは人ひとりぶんが立てるくらいあって、もうたいまつも灯りの魔法もいらないくらい、この明滅が明るくて。

 ……とても静か。こおおおお……と、虚空がたてる独特の残響音だけがする。本当に、洞窟の内部だ。ちょっと寒いような気もする。


「ここはどういうことなの、ゼファー」

「今までは【四聖洞窟遺跡】だったが、ここからはフィールド名は【失われた大陸】だ」

「【失われた大陸】?」

「このゲーム世界、アーヴリィ世界は、かなり複雑でカオティックな構造をしてるってことはいったな」

「それはもう」

「で、今はもう行き来してない世界ってのもあんだよ、結構。ここの明滅は、その世界にフタをした魔法的仕組みの跡……という設定」

「実際は?」

「もう使わなくなって放置されたゲームフィールドにフタをしたって具合」

 せちがらいなー。でも……

「ここから先にいけるとしたら、その【放置された世界】、すなわち【忘れられた大陸】にいける、ってことだね」

「一応、な。いけないわけでもない。でも、行く価値はない。サーバも移転するし……」


 そこまで話したら、ふと、今までと違う声が聞こえてくる。何かが燃えるような、何かが飛んでくるような。そして何かの叫び声のような……!

 不吉な予感がする。不穏な空気が流れる。この場にこれ以上いていいものか、ということすら考える。


 ――すると、一瞬の間に、無限の奈落の底から、一匹の巨大な、赤い赤いドラゴンが飛来し、我々の前に登場した!


「はぁっ!?」

「な、何よこれ!」

「イミフいミふ」


 突現の敵襲、というより、感じ的にはある意味大型車がつっこんできた、というのに似ている。

 パーティ、混乱する。そりゃそうだ……しかし一人ゼファーは冷静に、

「……レイド級……装備足りねえ……安全性……よし、逃げるぞっ!」

 パン、と手をたたいて、勢いよく振り返り、眼孔一閃、その場をシメる。こういう予知せぬ状況のとき、こいつは本当に強い。きっと何事にも動じない「自分」を持っているのだろう。

 

「そ、そうか、相手する必要ないな」

 まずジュンが目を覚ました。そう、それでいい。

「脱出アイテム、誰が持ってる? 魔法でも!」

 メフィリアが叫ぶ。

「僕ちんがいく、魔法とアイテム両がけっ」

 MK2、実際の行動をとろうとする。


 だが――

 フレイムドラゴンは、なぜかこの初手から……渾身の一撃をくりだしてきた! 体を振り絞って、その巨躯以上の質量を誇る、炎のブレスを吐いてきた!


「――――――!!!!」


 その場の全員が驚愕し、その炎のブレスを避けきれなかった。火炎が……私たちを包む……ッ!!!

このフレイムドラゴン登場が、序盤物語の転機です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ