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ココノツバナシ  作者: 高岡やなせ
百鬼夜行の来襲 日の沈む前 
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第五十九話 『むかしむかし、彼らに名前は付けられた』

 むかぁし、むかしのそのまたむかし。まだ「にんげん」にとって「ようかい」も「あくま」も「てんし」も、かれらの「おう」たちでさえもひっくるめて「かみ」か「かいぶつ」だったころのおはなし。


「ようかい」たちは「にんげん」たちにとてもとてもわるいことをしました。「つみ」をおかしたのです。


 かなしんだ「あくま」の「おう」はなやんだすえに「にんげん」たちのみかたをしました。


 そして「ようかい」の「おう」も、「ようかい」たちの「つみ」にきがつき、「あくま」の「おう」といっしょになって、「つみ」をおかした「ようかい」たちをこらしめました。


 しかし、おこった「てんし」とその「おう」は、「ようかい」と「ようかい」たちの「おう」をゆるしませんでした。「ばつ」をあたえたのです。


「にんげん」たち「つみ」をおかした「ようかい」のうち、とくに「ななにん」の「ようかい」たちをおそれていました。





「ったく、やりづらい姿しやがって…」

『あれあれ、も、し、か、し、て、ためらっちゃってるのぉ?おっかしいんだ』


 ぴょんぴょん飛び回るように光森を撹乱する妖怪。しかも見た目が幼い少女なので光森としてはとても戦いづらかった。


 それに、どうやらそういう風にあたふたとしている光森の姿が彼女にとっては可笑しいらしい。イライラしている光森とは正反対にけらけら笑っている。


「あ?何がだよ」

『だってぇ、こ、こ、に、来、た、ってことはさぁ』


 光森が尋ねると、妖怪はまたけらけら笑う。


『戦う覚悟を決めたから来たんでしょ?な、の、に、さぁ…』


 ぴょんぴょん飛び回る。


『相手の姿、形だけで躊躇いが生まれるなんて…へ、ん、な、のぉ』


 突然、間近に現れた。見えなかった。光森は焦りを隠しつつ捕らえようと腕を伸ばした。


「うるっせぇ」

『てっきり、よ、わ、そ、う、だ、って馬鹿にされたのかと思った』


 が、掴めない。ひらりと身軽に妖怪は跳ねる。光森は舌打ちし、愚痴を溢した。


「…だいたいだなぁ、お前らなんでこぞって人の形をしてだよ?キツネといいお前らといい…」


 すると妖怪は驚いたように瞳を見せると、ニタァ、と馬鹿にしたように口を形付けた。光森は怪訝そうになる。


 妖怪は、まるで何処かの金髪少年のように知った顔で語り始めた。


『だ、か、ら、言ってるでしょう?こ、の、す、が、た、は、普通で私は気に入ってるのぉ』

「妖怪なら妖怪らしい姿もあるだろって言いたいんだよっ。戦闘用とか」

『え?あ、プッ、まさか、ま、さ、か…本当ぉに知らないんだぁ』

「はぁ、なんだよ、急に笑いだしやがって」


 今度はゲラゲラと笑いだした。


 馬鹿にしたように笑みではない。馬鹿にしている笑みだ。なぜだかそれはわかった。


『あんたは、ひ、と、つ、間違ってるの。なぁんだ、そっか、そうなのか。てっきりえてるから、そういう知識も力もある人間かと思ってたんだけど…なぁんだ、ただの人間かぁ』


 語る口調に嘲りが混じる。なぜだろう、金髪少年と同じようだと考えたことを謝罪したくなった。こいつはそれ以上に腹が立つ。


 隠しようのない優越感、「傲慢」さが目立つのだ。


『あっちの人間と同じで、な、ん、に、も、力を感じないくせに私たちに挑むから、ど、ん、な、人間かと楽しみにしてたのになぁ』


 九津を差して言っているようだ。小さく聞こえる。馬鹿にしたように口を曲げて、つまんないの、と。


「なんだってんだよ、いったい」

『仕方がないから無知なあんたにも、わ、か、る、よ、う、に、教えてあげるよ』


 そしてギラリと瞳を輝かせ、ニヤリと優越感に浸るように語り出した。


『あんたたちは、に、ん、げ、ん。私たちはな、の』


 戸惑いながらも光森は考えた。聞き覚えがあった気がしたからだ。人間と人。最近、何処かで聞いた単語。


『意味が、わ、か、ら、な、い、って顔してるよね』

「ああ、したな…聞いた気はするが思い出せねぇ」


 考えたが適切な意味が、言いたいことの全貌が結局わからなかった。妖怪と人間は違う。だが、人間と人は同じではないのだろうか。


 素直な光森の反応は、どうやら彼女のお気に召したらしい。ご満悦そうだ。


『あのねぇ、ひ、と、っていうのが私たち妖怪や悪魔、天使や菩薩のこと。でぇ…に、ん、げ、ん、って言うのは、この星界せかいで人の型に進化するように仕込まれた間の生き物のことを言うの』

「…は?なんだよ、そりゃ」


 饒舌な彼女に対して光森は困惑して歯切れの悪いことしか言えない。


『だから、む、か、し、は、言い聞かせてたのになぁ』


 彼女は語る。その「むかし」を思い出すように。


『人成らざる者、って言葉をさぁ…』

 

 ただその語る顔には、


『言っとくけどお前らのことだよ、下位種族にんげん。人にも成れない間の生き物。あ~あ、なぁんにも知らない奴を相手にしても、つ、ま、ん、な、いっ』


 一辺の懐かしさもなく、ただ相手を嘲笑うような「傲慢」さしか張り付いていなかった。





 ひとりめはわがままでざんきゃくなこんじきにかがやくうさぎのような「ようかい」でした。


 わがままな「ようかい」は、じぶんのすがたをばかにするやつらを「にんげん」「てんし」かまわずころしていました。


 わらいながら、たのしそうに。


 わがままなその「ようかい」は、じぶんのすがたにおそれる「にんげん」たちをかろんじながらころしていました。


 わらいながら、たのしそうに。


 まるで「にんげん」たちのいきしにのすべてを、その「ようかい」がきめるのだというように、なんども、なんにんも、ころしました。


 そのかんがえが、わがままにいきすぎるそのいきかたこそが、その「ようかい」の「つみ」となりました。





 罪名は「傲慢」。


 金色に輝くその姿と、皇たちの作り上げたものに手をあげた反逆の証からつけられたこの世界でのその妖怪の名を――と言った。





 ここでも戦いは始まっていた。


『どーだー』

「負けないのですよー」


 真剣な、戦いだ。





 筒音と対峙している妖怪は穏やかな口調で尋ねた。


『あなたはなぜ、間堕まだをされたのですか、ここ数百年では珍しい方だ』

『…強く、なりたかったからじゃな』


 それが筒音の神経を逆撫でするしようと構わずに。筒音自身も薄々そういった事も狙いのひとつだろう、そう考えてはいたのだが、だんだんと口調と質問にイライラが募ってきていた。


 別に我慢する必要はないのだ。言いたいことは言ってやろう。


『おおー、ようやく答えてくれましたね。とても嬉しいかぎりですよ』


 妖怪が嬉しそうに手を叩くが、筒音は耳をほじる。乙女の姿としてはどうかと思うが、せめてもの対抗心からだ。さらに悪態をつく。


『お前がうるさいからじゃ。なんじゃさっきから。いつ来たのか、あの者たちとの繋がりは、あれはどうだ、これはどうだと…戦う気があるのか』

『ええ、もちろん。相手のことを知るのも私なりの戦いなので…趣味と実用を兼ねてるのです』

『お喋りが過ぎると自滅するぞ』


 ふん、と鼻を鳴らしてふんぞり返る。少しはスッキリした。本当に少しだけ。あとは、少々実戦でうさを晴らそうかと、


『ご安心を。あなた程度・・を相手にするのなら大丈夫です』


 したところでそう言われてしまった。眉毛がぴくぴく、頬がひくひくする。イラつきが脳天を突き抜けそうになった。


 あなた程度。よう言うたな。しかしこんなことで怒り狂うほど妾は戦いに不慣れではないぞ。筒音は落ち着いた声で答えようと、


『…………ほぉ 』

『おや、怒りが顔に表れてますよ。楽しくなさそうだ』


 駄目だったらしい。隠しきれなかったようだ。ならば仕方がないと開き直るしかない。


『ああ、つまらんのじゃよ。お前という者を相手にするのはな。なんせ、本気を出さぬという馬鹿者を相手にしておるのじゃからのぉ』


 すると妖怪は、うーん、と考えるように唸り始めた。


 戦いの最中だと言うのに馬鹿にしているのか。そう考えたが、これは違うなと自分で否定した。


 これは本当に考えているのだろう。そしてこれがこいつの戦い方なのだろう。そう自分を落ち着かそうと悟っていると、中断させられた。


 妖怪が、閃いた、と言わんばかりに手を叩いたからだ。


『わかりました。では、こうしましょう』


 穏やかな口調。諭すような仕種。本当にいちいち面倒で、神経を逆撫でする。


『一撃ずつ交互に相手を攻撃するのです。そうですね、妖怪らしく妖術のみにしましょうか?』


 間違いなく、この全てのやり取りがこの妖怪の戦闘状態なのだろう。


『それのどこに妾が乗る意味がある?』

『一回受けきるごとに相手の要望に答えるのです。例えば回答だったり、実力の底上げだったり』

『フン、なるほどのぉ…少しは楽しそうじゃのぉ…いいじゃろう、乗ってやる』


 この際だ。その遊戯に乗ってやる。筒音は、相手の舞台で戦い勝つことでうさを晴らすことにした。


 相手の舞台に乗る。浅はかだと言われてもそれが一番自分を納得させられたからだ。


 そして、


『ではまずあなたからどうぞ』

『あ?』

『私は早くあなたの答えが知りたいのです。さぁ、どうぞ』


 そして本当にいちいち腹立たしい。だから物静かを貫こうとするあの顔面に、早く一撃を喰らわせてやりたかった。


 筒音は初手からかなりの妖力を得意の炎の形に変化させた。


『ならば遠慮はせぬぞっ』


 相手にも瞳にも写るほどの輝き。妖怪は、とくに動かない。が、こちらにも遠慮はない。


 筒音の火球が妖怪を襲う。


『どうじゃっ』

『素晴らしい。妖力を魔力で底上げする…間堕まだのもつ二種の力を混じらせるという良きところを活かした攻撃を使うとは、お見事です』


 直撃、爆炎、砂埃。そこからの無傷の生還と腹立たしい落ち着いた声。


『ちっ、仕留めきれなんだか』


 それだけの問題ではなかったが、悔しがるつもりもなかった。


『それでは質問その一、そうですね…』


 相手が考える。今のうちに攻撃してやろうかとさえ思う。しかしやらない。今するのは、絶対に面白くないからだ。


 とりあえず、急かしてみる。


『なんじゃ、はようせい』

『そうだ。まだ続くでしょうし、少し些細なことを。その言い回しはどうされたんですか?ここしばらくの人間たちは観察するにそんな口調はなかったと思いますが?』

『フン、知らんのか、知りたがりよ』

『申し訳ありません、勉強不足です』


 素直にそう言う。その態度もわざとだろうか。だが今は流そう。


『これはな、強い奴らが使っておる口調じゃよ。漫画の中では常識じゃぞ、とくに妖怪の親玉なんぞはな』

『なんと、そうでしたか。漫画…最近流行りの絵を主体とした娯楽文学ですね。私としたことが本当に勉強不足でした』


 ほぉほぉ、と頷き自分の中で咀嚼して受け入れているようだ。その時、気のせいだろうか。相手の妖気が僅かだが強まった。


 訝かしんでいると、


『では、次は私の番ですね。勉強させていただいたお礼もかねて、二段階ほど上げていきますよ』


 そう言って、広げた両手の中心部へと砂を集めている。塊は妖怪の肩幅ほどの直径の球になった。


 にこり。微笑みと同時に投げつけてきた。放たれた砂球。溢れる妖気。受け止める筒音。


『くっ……く』

『どうですか』


 想像の二割増し程度は、強かった。


『あと八段階はあるので、ご鞭撻、ご教授、お願いしますね』


 ぬけぬけとよく言うわ。とは言わなかった。





 ふたりめの「ようかい」はしりたがりでした。


「おう」たちのつくったせかいをしりたがりました。そのしりたがりはとうぜん、「にんげん」にもむけられたのです。


「にんげん」をばらばらにしてみました。たくさんばらばらにしてみて、くっつけて、いろいろなじっけんをしました。


 とちゅう、「おう」たちからちゅういをうけたのでやめるまでつづきました。


 どうしようかとかんがえた「ようかい」は、こんどはからだ、ではなく、こころ、をためしはじめたのです。


 くりかえされるといかけに「にんげん」たちは、たましいからうまれたこころをこわされました。


「ようかい」はもろさを、はかなさを、よわさを、そしてほんのすこしのつよさをしり、それでまんぞく…できませんでした。


 それがその「ようかい」の「つみ」となったのです。





 罪名、強欲。


 砂のように知識を吸収する生きざまと、皇たちの作り上げたものに手を伸ばした強奪の証としてつけられたこの世界でのその妖怪の名は、ーーとなった。





 砂浜での小さな戦いも続く。


『このやろうー』

「あなた、女の子に向かってこの野郎とはなんなのですか!」


 まだまだ続く。





『ふふふ、やるなぁ、魔術師の剣士よ』


 妖怪は妖艶に笑った。大剣を大胆に砂浜に突き立て片手で柄を持ち。その様は歴戦の女剣士のようにも見えた。


 妖怪なのに剣技しか使ってきていないことを含めて。


「…妖術は使わないんですか」

『ん?まぁ、そのうちな。それにお前は剣の方が得意なのだろう。まずは合わせるさ』

「え、私は…」


 思わず尋ねてみて、思いがけず尋ね返された。言い淀む包女。剣の方が得意かと問われれば、肉体強化の魔術(ふかまじゅつ)の使い手なので肯定するために躊躇いがちに頷いた。


 妖怪は嬉しそうに頷いた。


『わかっているつもりだぞ、あの方もそうだった』

「あの方?」

『魔術師ならば知っているだろう?記憶が無くても血が覚えているはずだ』

「…なんのこと」

『なんだ、本当にわからないのか?』


 妖怪はとても意外そうに目を見開いた。そのあと困ったように口を尖らせた。


『お前たち人間の魔術師はみな、あの方の赤き力を受け継いでいるはずだぞ』


 尖り口で文句を言う様は、先ほどの妖艶さとは真逆で幼稚さが見えた。


『全ての魔術の使い手たちの頂点にして魔界にただ一人君臨される、慈愛と美しさを兼ね揃えたあの皇』


 ん、と包女は疑問符を浮かべた。


 魔術の頂点にして魔界に君臨する、とは。


 何で妖怪である相手が、悪魔たちの「皇」を語るのか、と。


 そんな包女の疑問符をよそに、妖怪は続けた。熱狂的な信仰心を力に変えているような力強さで。


『魔王様の一部あかを』

「……え?いや、ちょっと待って…え、魔王?魔王って、あの?」


 言い切った妖怪に驚く包女。妖怪は当然だと強く頷いた。


『この人間の世の文献でもあの方の存在はわずかとはいえ残っていることを聞いた。思い出せなくとも、お前が魔王様をご存じというのであれば間違いはないと思うぞ』

「でも、私たちが普段知ってる魔王と言えば…」


 どうだっただろうか。よく言われている文献を頭の中に浮かべる。その中には九津からこの間教わったことも一応に浮かんだ。しかし、


『あの方は種族の域を越え、私のような罪深き妖怪にもその手を差しのべて下さった』


 瞬間的に腑に落ちなかった。どうしても今までの「魔王」のイメージが抜けきれなかったからだ。


「これじゃぁ、まるでイメージが違う。ううん、一緒・・なんだ。悟月くんの言っていた悪魔と」

『強きその姿は勇敢で、とくに魔術に次いで剣の使い手でもあったあの方は一振りの剣を持っておられたのだ』


 そして目の前の妖怪は「魔王」のことを崇拝しているようだ。その瞳は、憧れそのものを写し出していた。


「筒音も言ってた…本当の悪魔は優しいって」

『恥ずかしながら私もあの方を真似て剣を握った。だから人間の魔術師よ、私はお前に合わせてやるのだ。妖術が見てみたいのなら引き出してみせろ』


 だが、包女がその執着にも似た憧れに気がつくまでが遅かった。包女は自分で噛み砕いて理解しようと、言ってしまったのだ。


 この妖怪にとっての禁句を。


「悪魔が、魔王が悪いって思っているのは、やっぱり人間だけなんだ」


 時が止まったのかと思った。今まで雄弁に語っていた妖怪が静かになったからだ。


『…………おい、人間。今、なんと言った?』


 低い声。


「本当の悪魔は優しい…」

『違うっ。そのあとだ』


 震えている声。包女はこの声を知っている。怒りを抑えている者の声だ。


「魔王が悪いって思っているのは、人間だけ」

『なんだと?』


 遮るような声。


 気のせいか、妖怪から漏れていた妖気の質が変わった気がした。滲み出るような、ひりひりとしたような。そんな感覚だ。


「…っ、」


 唐突に当てられ過ぎたのか言葉が上手く出なかった。妖怪はそんなことは気にしていない。先ほどとは別の感情のままに口を開いた。


『人間は、そんなことを勘違いして生きているのか?』


 大剣を持つ手が震えている。感情が体を支配し始めている証拠だ。


『あの方の優しさ…覚えていないのなら仕方がないと諦めもつくが、よもはやあの方が悪だと?そう生きて来たのかぁっ』

「…雰囲気が全然違う」


 目には怒りを。声には狂気が。妖怪は吼える。


『人間がどれほど腑抜け、あの方の大恩を忘れてもかまわない。が、しかしだっ』


 大剣を抜く。その切っ先は包女に向けられる。かと思ったが、


『あの方を侮辱するような生き方をさらすのならば、やはり強き制裁は必要だな』

「殺気…それに、な、涙?」


 誰に対して言っているのか。自分か。違うな。包女はそう感じた。むしろ自分の後ろにいる誰かを恨んでいるようだ。


『人間の剣士よ、気が変わった』


 妖怪は言う。


『ここ以外にも個人的に夜行をしなくてなならなくなったのでな。先を急がしてもらうぞ』

「……いいえ、あなたは進めません。私はあなたを倒し、止めてみせます」


 包女は答えた。


『愚かだぞ、あの方の一部あかを受け継いでいる者…だが、他のためにその身を捧げる姿、あの方の面影を見せてもらった』


 互いに刃を構えた。





 さんにんめの「ようかい」はいろいろなものをねたんでいました。


 それは、「ようかい」のつよすぎるちからによるものがげんいんでした。「ようかい」のちからはなかまである「ようかい」たちをふくめて、いきているものをいしにしてしまったからなのです。


 じぶんのちからでいきているものをいしにしてしまうことをかなしんだ「ようかい」は、ずいぶんとながいあいだひとりでいきていました。


 あるひ、その「ようかい」にやさしくよりそってくれるあいてがあらわれたのです。


 それは「あくま」たちの「おう」でした。ひとりぼっちの「ようかい」のことをしんぱいしてくれたのです。


「ようかい」はとてもよろこびました。「おう」とであったあとは、たのしくすごせました。ひとりぼっちではなくなったからです。


 しかし、それにもおわりがきたのです。


 すべてにやさしい「あくま」の「おう」は、よわすぎる「にんげん」たちにこんどはよりそうようになったからです。


 そうしてきがつけば「ようかい」は、よわいものたちをねたむようになりました。ねたみは「にんげん」をころすりゆうとなり、それが「つみ」とよばるれるほどになったのです。


 ほんとうは、そんなことをすればあのやさしい「おう」がかなしむことをしっていたことも、「つみ」をおおきくしたのです。





 罪名、「嫉妬」。


 純粋たる好意の反転たる行為と、皇たちが作り上げた理想への冒涜の証からつけられたこの世界でのその妖怪の名はーーとなった。





 砂浜での二人。


『な、なんか他のところがー、すごい険悪なことになっているんだけどー』

「あ、あなた本当にあの方がたの仲間なのですか?ものすごくがくぶるではないですか」


 なぜかその距離は近づいていた。







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