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ラブワールド  作者: ササデササ
代理恋愛
46/64

結婚してよ!

今回は週一更新を目標に頑張ります。よろしくお願いします。

「ほら、あなたの同級生に田中さんっていたでしょ?」


 テレビのバラエティ番組を見ていた美紀は、面倒臭そうに振り返り、ダルそうに答えた。


「あ~、りっちゃんね。あの娘がどうかしたの~?」


「結婚したんですってね」


 美紀は隠そうとしない不満顔を見せ、


「……知ってるよ」


 と答えながら視線をテレビに戻した。

 最近の美紀は『結婚』というキーワードを聞くと、あの不満顔を見せる。

 私がしつこいからだ。うるさいからだ。

 そうよね。親から結婚についてクドクド言われて喜ぶ娘など、世界中を探したってそうはいないだろう。

 美紀の気持ちを理解しつつ、それでも私は引き下がらなかった。 


「あなたはいつ結婚するの?」


「さぁ~?」


「早く孫の顔が見たいわ」


「そう」


「せめて彼氏はできないものなの?」


「へ~」


「あのね、女だからって待ってるだけじゃ駄目なのよ」


「なるほどね~」


 美紀はもう話を聞くつもりはないらしい。

 明らかに適当に相槌をうつだけだ。

 私は段々イライラしてきて、ついヒステリックにまくしたててしまう。


「あなたね、真面目に聞きなさいよ。

 良い?

 最近じゃ晩婚も珍しくないって言うけどね、私が若かった頃は、あなたの年齢なんて、29歳なんて、行き遅れも良いところでね、そりゃ~、ご近所様の噂にはなるし、親戚の間でも噂になるしでね、」


「もう! ウルサイな!! 今、テレビ見てるの!!!」


 そして美紀がヒステリーで反撃する。

 これが、もう一年は続いている我が家の週一行事になってしまった。 

 頻繁に遭遇する場面でも、やっぱり空気が重くなる。

 美紀はもうテレビを見る気分じゃないだろうに、テレビを睨みつける。

 私は小声で「本当に、もう……」と言いながら、意味もなくテーブルを拭き続ける。

 パパは新聞を持ちながら固まってしまう。

 

 そんな気まずい空気の中、テレビだけは平常運転。

 呑気に明るく、コマーシャル。

 



 日本初! と字幕スーパーが流れ、


「日本初の出会い系MMOが誕生。その名前は『ラブワールド』!」


 とナレーションが流れる。


 次に、ゲームシーンなのだろう。

 テレビの左半分におとめちっくな部屋と女性キャラが、中央に白線、右半分にシンプルな部屋と男性キャラが映し出される。

 彼らは憂鬱そうな表情で、窓から夜空を眺めていた。


「なんとなく恋人は欲しいけれど、出会い系サイトはちょっと怖い?」


 とナレーションが流れ、大きい文字が次々と画面を隠していく。

 最初に『そ』、続いて『ん』、『な』、『あ』、『な』、『た』、『!』と次々文字が現れた。

 つまり『そんなあなた!』という文字で画面が隠された。

 と思えば、


「そんなあなた、ラブワールドへいらっしゃいな!」


 とナレーション。


 文字は崩れ去り、画面が見えたかと思えば、今度は3人の女キャラと、3人の男キャラが、カラオケルームらしき場所で楽しんでる映像。 

 ノリノリで歌う男に、様々な小道具で盛り上がるその他。

 彼らはとても盛り上がっているように見える。

 恐らく、合コンなのだろう。

 と私が状況を理解すると同時に次の場面。

 今度はカップルが釣りをしていた。

 と私が状況を理解すると同時に次の場面。

 今度は男1人が4人の女とピクニック。

 と私が状況を理解すると同時に次の場面。

 今度は女1人が王座に座り、ひざまつく男、男、男、男。

 え? これ、どんな状況?

 と私が状況を理解しなくても画面は変わり、赤いテーブルクロスが引かれた机を上から映し出していた。

 その机の上に、今までのゲームシーンが写真になって、一枚一枚重なっていく。

 同時にこんなナレーションが流れた。


「どうせなら楽しく恋人を探したい? そんなあなたもラブワールドへへいらっしゃいな!」


 今度は実写で、お笑い女芸人が鏡を見ながら悩んでいるシーンが映し出され、


「顔に自信がない? 中身で選びたい? 選ばれたい? そんなあなたたちもラブワールドへようこそ!」


 とナレーション。

 

 そして、『安心安全!』と大きく字幕スーパーと、


「安心安全月額定額制、税込み5000円!!」


 のナレーション。


 最後にウエディングドレスが映し出され、


「さぁ、あなたも仮想ワールドで楽しく恋人を探しませんか?」


 というナレーションで締めくくられていた。




「ダサいCM」

 美紀は独り言。

 その表情は、特に恐ろしい目が、まだ機嫌が直ってない事を告げていた。

 しかし、私は違う。

 閃いた。


「ねぇ、あなた、これやってみなさいよ」


「これ、って何さ」


 お~、ドスがきいている。

 親にそんな声色で話すなんて、なんて恐ろしい娘なの。

 でも、私はめげない。


「ラブワールド」


「いやよ」


「じゃあ、私がやろうかな」


 パパがギョッとしながらこっちを凝視。

 でも私は無視した。

 娘はテレビからこちらに視線を移し、


「はぁ? 意味わかんないですけど」


「だから、あなたのプロフィールで登録して私がゲームするの」


 娘はため息をつきながら、テレビに視線を戻し、


「いやだ!」

 とキッパリ否定した。


「そう……」

 と私は諦めるフリをした。

 


 

 でも、私は諦めなかった。

 美紀はいくら急かそうと動かないだろう。

 ならば、私が動くしかないのだ。

 翌日、私はラブワールド事務所に電話したのだった。  

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