一人で頑張るのよ
憂鬱な3連休の翌日。
ラブワールドからリアルのスマートフォンにメールが来た。
『ゴーダ様より、別居の申し込みがありました。
条件は下記の通りです。
・現在のマイホームはスーナ様が継続してお住まいになる。
・財産分与はしない。
・期間は1ヶ月。
以上です。
もし宜しければ、ゲームのメールにて返信をお願いします』
私は、そのメールに返信するためにだけゲームにログインした。
まだ、遊ぶ気分じゃなかった。
それから、1週間程は私はラブワールドから遠ざかっていた。
でも、このままじゃいけない。
もちろん、ラブワールドの世界を自分の力で切り開く事で、ゴーダ君への恋心が、依存じゃない事を証明する目的もある。
でも、時間が傷を癒してくれた今となっては、それは半分ぐらいの割合だ。
重要だけど、それほど重要ではない。
では、もう半分は何か?
決まっている。
ラブワールドはお高いのだ。
ゲーマーの人にとって月5000円がどの程度のものかは知りもしないが、私にはお高いのだ。
ゲームごとき(これ、聞かれたらゲーマーの人に怒られるわね)に5000円は高いのだぁ!
だってだって、ランチ5回分ほど。
映画だって3本ぐらい見れるし、飲み会だってやれちゃうのよ。
5000円は大金なのだ!
ならば、元を取らなくてはいけない。
そう思って、私はログインした。
ログインすると、メールがたくさん届いていた。
大体がイチローさんからの遊ばない? というメール。
私はしばらくログインしていなかった事を謝った。
約束については触れなかった。
今は、出来るだけ1人で行動したいのだ。
依存してないと、いや、依存体質、受身体質なのは否定できないけれど、ゴーダ君への愛とは無関係なのだと、証明したいのだ。
ゴーダ君からメールがないかと期待したのだけれど、1つもなかった。
けっ。あやつめ。
イチローさん以外のメールは1件だけだった。
運営からのイベントのお知らせだった。
『みなさま、こんにちは。
暦は10月を迎えましたね。
寒くなってくる季節ですから、体調管理にはお気をつけ下さい。
さて、寒いと言えば、怪談。怪談と言えば、ハロウィンですよね。
ちょっと強引でした。
それはさておき、ラブワールドでもハロウィンイベントを実施いたします。
お仕事をすると、お菓子をもらえます。
それを食べても満腹度は膨れますが……。
これは出会い系ゲーム!
お菓子と名刺を交換してもらいましょう。
プライベートカード オア トリートです。
名刺を交換するとポイントが溜まります。
そのポイントでしか買えない期間限定の自動アクションやスキル、あるいはレシピなどがありますので、是非、この機会に知り合いを増やしましょう!』
なんか、砕けたメールだった。
もっとビジネス文体なのかと思ってメールを開いた私は拍子抜けだ。
でも、イベントかぁ。
一人立ちするには良い機会かもしれない。
この日、私は1度だけお仕事でお金を稼ぎ、残りの時間は名刺について調べた。
名刺アプリ発見。
初期設定では、性別、職業、年齢、ペットが欲しいか、タバコを吸うか。
5つだった。
チェックボックス式で、チェックしたものが名刺として出力されるらしい。
内容は実に様々だった。
実名だったり、過去に付き合った人数だったり、年収だったり、はたまた相手に求める条件だったり。
私は、初期設定から職業のチェックだけ外した。
今日は、名刺の設定をして、ログアウトした。
ログアウトしてから、ラブワールドの攻略サイトでどこで知り合いを増やすかを調べ、そのまま寝ることにした。




