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異世界混浴物語  作者: 日々花長春
混迷の岩盤浴
69/206

第61話 拍子抜けのその後に

 『五大魔将』の一人である『炎の魔神』の隠れ家を探索し終えた俺達は、それから一週間ほど掛けてヘパイストス・ポリスへ帰還した。

 精神的にどっと疲れてしまっていたので、行きよりも足取りが重かった気がする。


 パルドーさんの屋敷に戻ってから一週間。身体を休めるだけでなく、次の旅立ちに向けての準備など色々してきた。

 『無限バスルーム』の檜風呂で、リウムちゃんの頭を洗いながらこの一週間の事を振り返ってみよう。



 まず隠れ家を一通り調べてみたのだが、地下室などの隠し部屋の類は一切無く、結局見付かったのは例のボロボロの旗と日記だけだった。

 その結果を踏まえて考えてみたのだが、やはり『炎の魔神』はあの二つをわざと残して行ったのではないだろうか。

 自分がいなくなった後、あの場所に辿り着く者が現れた時のための解答、そう考えるとしっくりくるのだ。

 まずあの旗から隠れ家の主の正体に辿り着く事が出来る。初代聖王と魔王の戦いの生き残り、『五大魔将』の一人だと分かればショックは大きいだろう。

 更に日記を解読する事が出来れば、庭の景観が悪くなったから引っ越したと言う事が判明するのだ。これはもうショックどころの話ではない。


 隠れ家の調査を終えた俺が出した結論は、『炎の魔神』はあの二つを嫌がらせのために残して行ったと言うものだった。

 文字が光の女神の祝福が無ければ読めないものであるあたり、聖王関係者――特に勇者を対象にしたトラップであった可能性が高い。

 ヘパイストス・ポリスから見えるが、通常の手段では辿り着けない場所にある隠れ家。勇者が現れれば否応なしに調べねばならないだろう。

 火山地帯に毒ガス、更にはドラゴンも潜り抜け、苦労の末に辿り着いてみると、とうの昔に引っ越していてもぬけのから。

 そして調べてみるとあの日記だ。精神的ショックがどれほどのものになるかは、今の俺達が証明している。

 春乃さんにも連絡を取って相談してみたが、やはり彼女もそれぐらいしか日記を残して行った意味は考えられないと言っていた。

 『炎の魔神』である事を知らしめるだけならば、旗だけで十分なのだ。

 もうどうしようもない事。ヘパイストス・ポリスの安全は確保されたのだ。気を取り直してそう考えるしかないだろう。



 と言う訳でヘパイストス・ポリスに戻った俺達は、『炎の魔神』の旗と日記を提出し、ありのままをヘパイストス十四世に報告した。

 ずっと警戒していた隠れ家が、百年程前から無人だったと言う話は流石にショックが大きかったようで、彼がその場に崩れ落ちてしまったのは言うまでもない。

 しかしヘパイストス十四世も流石は王と言うか切り替えは早いようで、すぐに今後の対応を検討し始める。

 例のハデス・ポリスから持ち帰った紋章入りの武具の代わりにもらえると言う話になっていた褒賞は、今回の活躍に対する褒賞に切り替える事となった。

 ドラゴンを倒した事も勲章物の活躍らしく、まとめて大奮発してくれるとの事だ。

 やはり王宮に人を集めて派手に儀式を行うらしく、その準備にしばらく掛かるそうなので、俺はその間に別の事を進めておく事にする。


 まずは戦利品の処理である。

 と言っても今回はあまり実入りが良かったとは言い難い。隠れ家では旗と日記しか手に入らなかったため、戦利品と呼べるものはカバドラゴンから得た素材だけである。

 ドラゴンの素材と言うのも相当な物なのだが、大量の武具・財宝を持ち帰る事が出来たハデス・ポリスでの戦果と比べると見劣りしてしまうのは否めない。

 もっとも、クレナに言わせればハデス・ポリスでの戦果の方が異常なのだそうだが。

 確かに魔王城から持ち帰った財宝の量は異常だ。簡単には換金出来ないぐらいに。あちらの世界にいた、埋蔵金などを追う冒険家の気持ちが少し分かった気がした。


 それはともかくドラゴンの素材だが、皆で話し合った結果、骨はルリトラ用の新しい鎧に、翡翠のウロコはクレナ用のスケイルアーマーに仕立てる事になった。

 スケイルアーマーと言うのは、本来はウロコ型の金属片で補強した鎧の事で、重さの割には防御的にも優れているとは言い難い代物だ。

 金属製のリングを鎖状に編んだチェインメイルと比べて勝っている部分は、デザインの良さと、加工が簡単な分安価であると言う点ぐらいである。

 しかし、クレナのために仕立てるこれは違う。金属片よりも軽く丈夫で美しいと言う三拍子揃ったドラゴンのウロコを使うのだ。

 形状はスケイルアーマーだが、この場合は「ドラゴン・スケイルアーマー」と呼ぶべきかも知れない。

 その分お高くなってしまうだろうが、良い防具で安全を買えると考えれば安いものだと言えるだろう。

「え? 人間の鍛冶師に頼んだ方が良いのか?」

「それぞれ得手不得手があるにゃ。この場合は金属を鍛えたりしないし」

 パルドーさんの勧めで、ドラゴン・スケイルーアーマーは人間の鍛冶師に頼む事になった。もちろん、腕の良い人を紹介してもらっている。

 ちなみにレザーアーマーの類も人間の鍛冶師の方が良いらしく、俺もロニのためにレッドリザードの革を使った鎧を注文している。

 逆に骨を使ったルリトラの鎧に関しては、やたらと硬い骨を削って加工する必要があるため、ケトルトの鍛冶師に頼んだ方が良いそうだ。

 骨を使った鎧を得意とする家がケトルト鍛冶師十二家の一つにあるそうなので、こちらもパルドーさんに紹介してもらった。

 こちらは「ドラゴン・ボーンアーマー」と言ったところか。


 この話を聞いたヘパイストス十四世から、勲章と褒賞の授与を行う儀式を完成したドラゴンアーマーお披露目の場としたいと言う申し出があった。

 人間とケトルトの双方の鍛冶師に頼んだのが良かったらしい。

 二つの種族が上手く共存している国だが、やはり相応の苦労があるのかも知れない。


 俺自身はドラゴンの牙を使ってドラゴンキラーでも作れないかと思っていたが、残念ながらこれは上手く行かなかった。

 と言うのもあのカバドラゴン、巨大長エノキをすり潰す臼歯は発達していても、獲物の肉を食い千切る犬歯は持ち合わせていなかったのだ。

 形状的には剣に向いているとは言えないだろう。ドラゴンキラーと言えば「剣」をイメージしていた俺にとっては少々期待外れである。

 とは言え頑丈な物である事は確かなので、一番大きな牙と言うか臼歯を使ってメイスを一つ作ってもらう事にした。

 もちろん牙をそのまま使うのではなく、削って形を整えた上である。この手の彫刻が得意なのはシャコバさんらしいので彼に頼む事にする。

 そして残りの牙はクレナ達とも相談した上で、探索を手伝ってもらったお礼としてパルドーさん達に譲っている。

 ちなみにマークは、ドラゴンの牙からウォーハンマーを作るのだそうだ。自分の頭ほどのサイズがあるドラゴンの牙を抱えながら、嬉しそうに張り切っていた。



 そんな風に戦利品の処理を終えた頃、俺の所に妙な申し出が舞い込んできた。

「はい? 付いて来る?」

「そうにゃ」

「クリッサは?」

「もちろん一緒にゃ」

 にゃんと、いや、なんと、パルドーさんが俺達の旅に同行したいと申し出て来たのだ。しかもクリッサも一緒にである。

「クリッサは良いのか?」

「はい、戦う事は出来ませんが、労働レイバーのようにゃお仕事にゃらお手伝い出来るかと。

 それに、父だけを行かせるのは心配ですし……」

 俺はクリッサに確認してみたが、彼女は旅に出る事よりも自分の手の届かないところでパルドーさんが何かやらかさないかを心配していた。

 聞けば彼女は、モンスターとの遭遇を避けたり、遭遇しても身を守りながら逃げるぐらいは出来るらしい。

 最低限の自衛が出来ると言うのであれば、俺としても強く反対はしない。と言うか、もしかしたらラクティよりも安心して見ていられるのではないだろうか。

 特に俺の場合は、夜は『無限バスルーム』の中で休む事が出来る。普通の旅人と違って夜営の危険性は著しく低いと言えた。

「ワシも行くにゃ!」

「俺も行くぜ!」

 更にシャコバさん親子も同行したいと言い出した。

 特に鼻息が荒いのはマークだ。やはりクリッサの話が効いているのだろう。

 当のクリッサは、やる気を見せるマークをあらあらと微笑ましそうに見詰めていたが。やっぱり弟扱いだな、マーク。


「理由をお伺いしてもよろしいですかな?」

 この申し出はルリトラも予想外だったようで、尋ねる彼も困惑した表情である。

「魔将の隠れ家を見ていて気付いたにゃ。トウヤ殿の『無限バスルーム』は、あの隠れ家に似ているって」

「……まぁ、和室もあるし、雰囲気は近いかもな」

 『炎の魔神』の隠れ家も日本家屋そのものではなく。それっぽく似せて造られた「和風もどき」であった。『炎の魔神』に日本家屋を再現する技術がなかったのだろう。

 そして俺の無限バスルームは、風呂が檜風呂になったり、闇の女神の祝福で和室が出来たりと、こちらもどことなく和風っぽい雰囲気があった。

「あの今まで見た事のにゃい技法に興味があるにゃ!」

「自然と調和した美! あれは新しい世界にゃ!」

 興奮気味に身を乗り出してくるパルドーさんとシャコバさん。

 どうやら彼等は和風文化に興味を抱いたらしい。

 更に詳しく話を聞いてみると、パルドーさんの方は炎の祭壇にも興味があるようだが、シャコバさんの方は純粋に「和風の美」を求めているようだ。

 パルドーさん曰く、二人が揃って美しいと思ったのは初めてとの事である。なるほど、それで二人はこんなに興奮しているのか。

 マークの方は和風文化には特に興味は無いらしい。彼の場合は興奮気味のパルドーさんにクリッサが付いて行く方が重要なようだ。


 俺にとって和風の風景は、見慣れているとは言わないが当たり前の光景過ぎて、自然と調和していると言われてもいまいちピンと来ない。

 しかし、派手ではないと言うのは分かる気がする。パルドーさんが美しさを見出したのはその辺りではないだろうか。

 なんと言うか、彼等の反応は外国人が日本文化に感動する様に近いような気がした。

「『ワビサビ』……だっけ?」

「にゃにそれ?」

「ああ言うのを表す言葉だ」

 俺も詳しくはないが、大体の言葉の意味だけは知っている。

 茶道とかの日本文化における美意識を表す言葉――だったはずだ。漢字で書くと「侘び寂び」だったと思う。多分。

「にゃるほど、ワサビ……」

 『侘び寂び』だって。


 とにかく、彼等の目的は分かった。彼等が求める未知の和風文化を知る鍵が異世界から召喚された俺であり、『無限バスルーム』なのだ。

 旅に同行させてもらえるなら、俺をリーダーとして立てるので、ルリトラのように配下として扱ってくれて構わないとの事。この辺りはパーティとしてのけじめの話であろう。

 彼等がただの工房内で仕事をするだけの鍛冶師ではなく、モンスターと戦えるだけの腕を持っている事は分かっている。

 いや、この世界においては、時には素材を得るためにモンスターのいる場所にも出向く彼等こそが「ただの鍛冶師」なのだが。

 パーティの人数が増えるとなると、クリッサの手伝いも有難い話であった。


「ところで、家の方はどうするのよ?」

 次に問い掛けたのはクレナ。貴族出身だけあって、そちらの事が気になるようだ。

「他の十二家に頼んでるにゃ」

「旅立ちの許可は、ちゃんと取ってるにゃ」

 これに対するパルドーさん達の答えはあっさりしたものだった。

 流石は鍛冶仕事に集中するために、奪われた王権をそのままあっさりと譲ってしまったケトルトである。


 ともあれ彼等の方に問題がないと言うのであれば、俺としては断る理由は無い。

 能力的には問題ない事は分かっているし、『魔力喰い』を調整する間一緒に暮らしていたので気心も知れている。

 ルリトラ達の方を見て確認してみても、特に反対するものはいなかった。少々呆れ気味ではあったが。

「分かった。パルドー、シャコバ、マーク、クリッサ、よろしく頼む!」

 俺は彼等の申し出を受ける事にした。

 こちらもパーティリーダーのけじめとして、パルドーとシャコバをルリトラと同じように「さん」を付けずに呼び、彼等四人と握手をした。

「…………」

「どうかしたかにゃ?」

「いや、何でもない。

 勲章授与が終わったら旅立つ事になると思うから、準備を進めておいてくれ」

 努めて平静を装って俺はそう言ったが、その心は全く別の所にあった。

 肉球の感触が心地良かったのだ。



 これがこの一週間で起きた出来事だ。

 鎧の作成を頼んだ鍛冶師は、それが完成しなければ勲章授与の儀式が行えないと言う事で超特急で仕上げてくれたらしい。

 おかげで注文の品は全て完成し、今日の午後に儀式が行われる事になっている。

 今はその準備として身を清めているのだ。

「はい、おしまいっと」

 ゆっくりとお湯を掛けて泡を流してやると、リウムちゃんはぷるぷると頭を振って水滴を飛ばした。

 なんと言うか、なごむなぁ。

 これがロニやクレナならこうはいかない。

 ロニは引き締まっているが出るところはきっちり出ている少女らしい体型で、俺も髪を洗いながら照れが入ってしまうのだ。

 クレナにいたっては、鼻息荒く興奮してしまう。ハッキリ言ってこの四人の中ではスタイルが段違いなのだ。

 その点、リウムちゃんとラクティはなごむのである。二人とも思わず頭を撫でてあげたくなってしまうほどに。

「それじゃ、お風呂につかろうか」

 コクリと小さく頷くリウムちゃんと手を繋ぎ、俺はクレナ、ロニ、ラクティの待つ皆でゆったりとつかれる檜風呂へと向かった。




 それから身を清めて数刻後、着替えた俺達はへパイストス王宮の謁見の間にいた。

 正装と言っても、俺は『魔力喰い』の鎧を身に着けてマントを羽織り、兜は脇に抱えている。 流石に武器は持っていないが。

 この状態でも魔法は使えるので良いのかと思ったが、他ならぬヘパイストス十四世の要望なので構わないとの事。相変わらず豪快な人である。


 謁見の間には儀式を一目見ようと集まった大勢の見物客がいて、俺達は盛大な拍手で出迎えられた。

 視線や歓声の中に若干怯えの色が混じっているのは、おそらく気のせいではない。

 『魔力喰い』の見た目は黒鬼なので仕方がないが、責任の半分はルリトラの強面のせいだと思いたいところだ。

 と言うか緊張する。右手右足が同時に出るような事にはなっていないが、転ばないようにゆっくり慎重に歩こう。


 ルリトラはドラゴンの骨で作ったドラゴン・ボーンアーマーだ。

 大きな下アゴの骨を利用して、利き腕でない左腕部分が仰々しく大きく作られているのが特徴だ。

 ジャイアントスコーピオンの刺々しさは無くなったが、迫力は増している。

 胸を張って堂々とした態度だが、こう言う場に慣れていないせいか、その表情にはわずかに緊張が見える。


 クレナのドラゴン・スケイルアーマーは、まさに宝飾品と見紛う程の美しさだった。

 以前の防具は、装飾的なサーコートで隠していたが、今はあえて見せている。彼女もそれだけあの鎧をお気に召したのだろう。


 ロニの新調したレッドリザードのレザーアーマーは、このヘパイストスでは有り触れた物ではあるが、腕が良い職人が作っただけあって、こちらも立派な物である。

 胸元に装飾を施した赤みがかったレザーアーマーは、地味過ぎず、華美過ぎず、それでいて防具としても高性能と言う逸品だ。

 こう言う雰囲気には慣れているのか、クレナとロニは二人揃って堂々としたものだ。


 リウムちゃんとラクティは普段から防具らしい防具は身に着けていないため、今回は二人とも可愛らしいドレスを用意した。どちらもよく似合っている。

 こう言う時しか着られない物で普段は荷物になるだけだが、『無限バスルーム』に仕舞っておけば大丈夫だろう。

 今回は着ていないが、もちろんクレナとロニのドレスも一緒に買ってプレゼントしてある。ロニが恐縮しまくっていたが、俺の気持ちと言う事で受け取ってもらった。

 リウムちゃんは全く緊張していない様子で堂々としているが、ラクティの方は落ち着かない様子で辺りをきょろきょろと見回している。

 こう言う場に一番慣れていないのは彼女のようだ。


 更に後ろには今回の探索に協力してくれたパルドー、シャコバ、マーク。三人ともタキシードみたいな正装に身を包んでいる。

 流石と言うか、パルドーとシャコバはいつもと変わらぬ自然体だ。

 観客に混じってクリッサが大きく手を振っている。可愛い弟ポジションの晴れの舞台にいつもよりもはしゃいでいるようだ。

 対するマークは恥ずかしそうに顔を伏せているようだ。きっと緊張しているのではなく、はしゃぐクリッサの事が恥ずかしいに違いない。



 ヘパイストス十四世の前まで進むと、彼は儀式だからといってかしこまった表情になったりはせず、前に見たのと同じような笑みを浮かべていた。

 この笑みを見ていると緊張も吹き飛んでしまうと言うか、緊張しているのがバカらしくなってしまう。そう言う意味では有難いかも知れない。

「勇者トウヤよ! 此度の働き、まことに大儀であった!」

 こちらも儀式の手順は事前にしっかり聞いていたので、滞りなく勲章授与の儀式は進んでいけた。


 今回、俺に授与される勲章は三つだ。

 勲章はあくまで功績を分かりやすく表す物であって、これそのものは褒賞ではない。勲章そのものもそれなりに高価なものではあるが。

 褒賞のメインは現金や宝物などなのだが、そう言うのはこの場では目録でもらう事になっている。きっと人前でやっても盛り上がらないか、妬まれるからだろう。


 と言う訳で、一つは『火の山の勇士勲章』。

 剣を持ったケトルトのレリーフが施されたこの勲章は、ヘパイストスに対し多大な功績を残した者に贈られる物らしい。

 ちなみにこのレリーフのケトルトは、旧ヘパイストス王家の初代国王がモチーフになっているそうだ。

 長年に渡る懸念であった魔将の隠れ家探索を成功させた事が評価されたのだろう。

 この勲章は、俺だけでなく探索に参加した者全員に贈られた。


 二つ目は『スレイヤー勲章』。

 強大なモンスターの討伐に成功した者を称える勲章で、剣にドラゴンが巻き付いているような形をしている。

 これは倒したモンスターの種類によって勲章の形状が異なるらしい。これの場合は『ドラゴン・スレイヤー勲章』と言ったところか。


 三つ目は『黄金のネコミミ勲章』。

 ネコの顔をモチーフにした、見た目には可愛らしい勲章である。

 これは旧王家に連なる十二家に選ばれた者に授与される勲章なのだそうだ。

 十二家に認められた証であり、何かあればいつでも協力すると言う彼等の意志表示でもあるらしい。

 パルドー達が俺達の旅に同行出来るのはこの勲章のおかげなのだとか。


 褒賞の目録を受け取り、羽織ったマントの胸元に三つの勲章を付けてもらって振り返ると、観客達からわっと歓声が上がった。一瞬謁見の間が揺れたかのような錯覚を覚える。

 春乃さんもアテナで勲章を授かったらしいが、あちらもこんな感じだったのだろうか。

 これで春乃さんに並ぶ事が出来たかな。そう思うと誇らしい気持ちになってくる。

 俺は堂々と胸を張り、晴々とした表情で割れるような歓声の中を歩いて行った。

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