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異世界混浴物語  作者: 日々花長春
神泉七女神の湯
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第149話 まずは情報収集から

 軍船や兵士達に見つからないまま、上手く漁師区画の桟橋までたどり着く事ができた。

 すぐに上陸してロンダランのところに向かいたかったが、移動するには皆を外に出して『無限バスルーム』を閉じる必要があるため、俺は下船できない。

 そこでブラムスとメムに手紙を預け、こっそりと行ってもらう事にする。二人ならばそう易々と見つかりはしないだろう。

 移動範囲ギリギリである甲板に出て淡い青色の石材でできた町を眺める。どうせなら遊びに来たかったが、それは今言っても仕方がない。


「おおっ! 戻ってきおったか!」

 声の方を見ると、相変わらずの爆発ヘアをしたロンダランがドタドタと駆け寄ってきていた。元気そうでなによりである。

「声抑えて」

 でも、静かにしてくれ。兵士が来たら困る。

「おっと、スマン。話はあやつらから聞いた。大変な事になっとるらしいの」

「それはこの町もでしょう。何があったんです?」

「ああ、それはな……来とるんじゃよ、勇者が」

「……はい?」

 俺と春乃さん、それに神南さんはここにいる。誘拐されているコスモスが連れて来るはずが無いし……今、ユピテルに戻っているはずの中花律か。

「あの軍船も?」

「さあのぅ? ここしばらく留まっておるようじゃが」

 ロンダランはこの件について、あまり詳しくないようだ。

 ここでフランチェリス王女がリコットを連れてやってきた。ネプトゥヌスに到着して、少しは元気が出たのだろうか。表情に強さが戻ってきたように感じられる。

「リツの仲間の中に、今回の件に関わっている者がいるかもしれませんね。あれだけいれば、そういう者達を潜り込ませる事もできるでしょう。兄ならやりかねません」

 お兄さんの事をどういう目で見ているのだろうか、王女。

「中花さんが主導している可能性もあると思うんですけど」

「そちらも否定しませんし、二人が協力している可能性も考えられますね」

 その辺りは、今ある情報では分からないか。こればかりは仕方がない。

「それよりもトウヤさん達は、いつでも出港できるように準備しておいてください。私達はナツキ様達と町に出て、コスモス様を探します」

「兵士が大勢いるようですが、大丈夫ですか?」

「できるだけ隠密行動を心掛けますが、いざという時は、いつでも逃げられるよう備えておいてください」

「おぬしら、この町で何をやらかす気じゃ?」

 ロンダランが思わずツッコんできたが、やらかされた側なんだよな、こっちは。

 とはいえ、いざとなったら逃げる事も考えておかないといけないか。

「そういう事なら、食料の補給とかは早めに終わらせておいた方が良さそうですね」

「お願いします。親衛隊を半分ほど残していきますので、使ってください」

「俺はここから動けませんので、ありがたく使わせてもらいます」

 話が決まったところで行動開始だ。

 ロンダランは一度グラン・ノーチラス号を陸に上げてチェックしたかったらしいが、残念ながらそんな時間は無さそうだ。

 しかしコスモス誘拐の件を知った彼は仕方がないと、ひとまず納得。ここでできるだけのチェックをすると、パルドー達を連れて道具を取りに戻っていった。

 春乃さんやクレナ達には二手に分かれて買い物に行ってきてもらう。町は兵士が多いだろうから安全のために目立たない格好をしてだ。

 ブラムスとメムは周囲の気配を察知する事ができるらしいので、それぞれに付いて行ってもらうとしよう。


 皆が出掛け、俺とルリトラとプラエちゃんが残された。二人が町を歩くと目立って仕方がないので留守番だ。今は見張りも兼ねて甲板で休んでいる。

 休むなら『無限バスルーム』に戻った方が良いのだが、これには訳があるのだ。

 しばらくすると外がざわざわとし始める。見ると外に漁師達が集まっていた。その中に見知った顔もある。グラン・ノーチラス号を見て集まってきたのだろう。

「やっぱり若様じゃない!」

 俺に気付いて声を上げたのは花柄のワンピースを着た女性。グラン・ノーチラス号を作るためこの町に滞在していた際、よく新鮮な魚を差し入れてくれていた漁師の奥さんだ。

 他の面々もほとんどが顔見知り、漁師関係者である。グラン・ノーチラス号が桟橋に停泊しているのを見つけて集まってきたのだろう。

 そう、俺が甲板に残っていたのは、彼女達から話を聞くためだ。

 初めて見る人ばかりなためか、プラエちゃんは俺の背中に隠れて小さくなっている。

 ぴったりとくっつかれている様子をあらあらと温かく見守られつつ、今この町がどうなっているのか住人達から直接聞くとしよう。

「ああ、最初は一隻だけ来たんだよ。勇者様が乗って」

「それからどんどん追加で来てさぁ。見たかい? 向こうの港」

「ええ、すごい数でしたね」

「流石にこの辺までは来ないんだけど、今は『潮騒の乙女』亭を貸し切りにして遊んでるらしいよ。何しに来たんだろねぇ」

 観光……かな? いや、それだけだと、後からきた軍船の意味が分からないか。

 そんな話をしているとロンダラン達が戻ってきた。彼等はそのまま船内でチェックを始めたので、それには参加しないクリッサに、軽く食べられるものなどを用意してもらう。

 それらを漁師達に振る舞い、更に詳しい話を聞くとしよう。

「乗ってきた兵士達の様子は?」

「ああ、なんかピリピリしてるぜ。あいつら夜酒場に集まってもその調子なもんだから、行きにくくってしょうがねえ」

 毎晩の楽しみを邪魔されているらしい漁師のおじさんは、怒りを露わにしている。

 しかしその兵士達の様子、中花さんを護衛中だから緊張していると考えるには数が多過ぎる気がする。何か別の目的があると見ていいだろう。

 問題はそれが何かという事だが、流石にそれは分からないようだ。

 更に話を聞いてみたが、それ以上の情報は得られなかった。

 まとめると、中花さんが連れてきた軍勢は一部で、他は別の部隊である可能性がある。

しかし、単に別動隊として動いていた可能性もあるので断言はできない。

 そして詳細は不明だが、兵が緊張するような目的があると思われる。

 ここから動いていないのにも理由があると思うのだが、これも分からない。誘拐したコスモスが到着するのを待っていたのだろうか?

 分からない事だらけだが、この先は本格的に調査する必要がある。

 という訳で頭を切り替え、ここからは世間話でもするとしよう。

 漁師のおじさん達によると、例のギルマンの島に出向く人が増えてきているそうだ。

 主に若い頃に水の女神を信仰していたお年寄りが水の祭壇に参拝しているらしいが、漁に行く際に豊漁をお祈りしにいく漁師も増えてきているとか。

 島のギルマン達と諍いを起こす事も無く、上手くやっているそうなので一安心である。

 それと光の神殿に譲った馬車だが、現在は神殿で祀られているため港側の人達は見た事が無いらしい。馬は近くの牧場に預けられているはずだが、元気でやっているだろうか。

 時間に余裕があれば一度会いにいきたいところだが、今抱えている問題が解決しない事には難しそうだ。

「あら~、クレナちゃんじゃな~い」

 外からはしゃいだ声が聞こえてきた。クレナ達が買い物を終えて帰ってきたらしい。

 大量に買ってきたようで、ブラムスが借り物であろう荷車を曳いている。これは積み込むのが大変そうだ。

「ルリトラ、プラエちゃん」

「荷物を運び込むのですね」

「まっかせて~♪」

 俺は『無限バスルーム』の関係で外まで取りに行けないため、二人に任せる。

 二人は積み重ねられた木箱をひょいと持ち上げ、どんどん中へと運び込んでいった。

「あれ? ラクティは一緒じゃなかったのか?」

「ハルノ達ってこの町は初めてだから、リウムと一緒に向こうに回ってもらったわ」

 なるほど、道案内か。あの二人はこの町に慣れているので問題無いだろう。

 荷物を運び込んでいる間に町を見てきたクレナから話を聞こうとすると、再び外から声が聞こえてきた。

「あら、ラクティちゃん!」

「そちらのお嬢さんは初めて見る顔ね。あなたも若様の?」

 春乃さん達も帰ってきたようだ。というか若様の何だというのか。いや、分かるけど。

「そ、そんな、私と冬夜君はまだ清いお付き合いで……」

 対する春乃さんは照れながらも、放っておくと色々と口を滑らせてしまいそうだ。

 あのまま放っておくと、周りの奥さん達がどんな風に盛り上がるか分かったものではない。早くこちらに呼んでしまおう。

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[気になる点] 王女の兄に対する発言で白面鬼を連想しました。
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