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異世界混浴物語  作者: 日々花長春
神泉七女神の湯
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第148話 神泉七女神の湯 フロローグ


   フロローグ



 俺の名前は北條冬夜。一応『(光の)女神の(神殿の)勇者』という肩書なのだが、本当にそう名乗っていいのか疑問に思う今日この頃である。

 でもよくよく考えると、自分からそう名乗った事はあまり無いので、この件については気にしない方がいいかもしれない。

 なお、実際の立場は勇者ではなく『女神姉妹の新しい弟』が一番正確らしい。

 これは女神の夢の中で、姉妹の母『混沌の女神』と接触できるからだとか。

 当初は夢の中で会った事も覚えられなかったが、毎朝毎晩祈りを捧げているおかげか、最近はおぼろげながら記憶を残せるようになってきている。

 ラクティの弟というのには一言物申したい気もするが、小さな身体でお姉さんぶる姿が微笑ましいので、こちらも気にしない事にしよう。

 アレスでは魔王を復活させてしまうなど色々とあったが、当の魔王に再び戦いを起こすつもりが無かった事もあり、結果として新魔王の誕生を阻止する事ができた。

 しかし、その一方で『聖王の勇者』コスモスが誘拐されてしまった。彼を誘拐した一団はコスモスの船を奪って逃走したため、こちらはグラン・ノーチラス号で追跡中だ。

 しかし、こちらが出港の準備で遅れた事もあって追いつく事ができない。

「この調子では、追いつくのは難しいかもしれん」

 顎鬚を撫でながらアキレスが言う。もう一人の『聖王の勇者』神南夏樹の仲間である彼は、ユピテルの元将軍である。

「あの船は、特別製ですから……」

 そう言ってフランチェリス王女はうなだれる。あの船は、王族用として造らせた高性能船なのだそうだ。なるほど、誘拐犯が奪う訳だ。

 現在グラン・ノーチラス号、正確にはその中の『無限バスルーム』には、俺と春乃さんのパーティだけでなく、神南さんパーティと、コスモスパーティも乗り込んでいる。

 まず俺のパーティが、雪菜、クレナ、ロニ、リウムちゃん、ラクティ、ルリトラ、パルドー、マーク、シャコバ、クリッサ、ブラムス、メム。あと、一応『不死鳥』。

 春乃さんパーティは既にうちのパーティに加わっているようなものだが、セーラさん、サンドラ、リン、ルミス、デイジィ、プラエちゃん。

 神南さんのパーティは、アキレス、『百獣将軍』の少数精鋭だ。

 コスモスのパーティは、本人を除いてフランチェリス王女、フォーリィ、バルサミナ、そして親衛隊長のリコットと彼女の率いる王女親衛隊がいる。

 なんと親衛隊も合わせると総勢50人近い大所帯である。『無限バスルーム』が成長していなければ、グラン・ノーチラス号に入りきらなかっただろう。

「あの船、どこに向かっているんでしょう?」

「内海を進んでいるという事は、ネプトゥヌス・ポリスだろう」

 春乃さんの疑問に、アキレスが答えた。そこから陸路に切り替えるつもりか。

「幸い、レーダーには捉えられている。引き離されないようにして追いかけよう」

 そしてネプトゥヌス・ポリスで追いついて、コスモスを取り戻す。これしかあるまい。

 王女としてはもどかしいだろうが、こればかりは仕方がない。今はただ、ひたすらに追いかけるしかないのだ。


 出港以来、王女もコスモスの事が心配なのだろうが、周りを心配させないためか気丈に振舞っているようだ。おかげで暗い雰囲気にならずに済んでいる。

 特にプールは親衛隊の面々に好評なようで、彼女も内心はそれどころではないのだろうが、今日も王女は彼女達を引き連れてプールでくつろいでいる。

 一方神南さんは、もっぱら読書の日々を送っていた。大量の荷物を積み込んだ結果『無限バスルーム』の中にトレーニングできるだけのスペースが無くなったためだ。

 あくまで暇つぶしのようだが、例の交易商人の日記など昔の本を楽しんで読んでいるようだ。元々歴史系が好きだったらしい。

 そして俺はというと、だらだらして過ごしていた。怠けている訳ではないぞ。

 『無限バスルーム』利用者が増えた事で消費MP量が跳ね上がっている。その上夢の中でもMPを消費しているらしく、できるだけ休息を増やすようにしているのだ。

 普段の感覚と比較するに、『無限バスルーム』利用分だけではここまで消耗していないと思う。おそらく原因は『混沌の女神』との接触だろう。

 これについてはラクティも「まだ」話せないらしく、それが何を意味するのかまでは分からないが……。


 そんな船旅をしながら、ネプトゥヌスの港まであと少しというところまで進んだ。

 コスモスを乗せた船の少し先にきっちり横一列に並んで動かない反応がある。おそらく港の船だろう。入港まであと少しといったところか。

「……多くないか?」

 それにしても、やけに前方の船の数が多い気がする。いや、港だからいくつもの船が停泊しているのは当然なのだが、それを踏まえた上でも多いのだ。

 この様子だと、ネプトゥヌスの港は停泊する船で一杯なのではないだろうか。

 何事かと慎重に海中を進むと、船が所せましと停泊している港にたどり着いた。この辺りは商船などが利用する桟橋だ。

 人が集まるお祭りでもあるのかと密かに海上の様子を窺ってみる。すると全ての桟橋に同じ種類の船が並んでいた。人の姿も多い。

 コスモスの船は既に入港していた。並ぶ船に割り込むように停泊しているのだが、大型船なため非常に目立っている。

 こちらも上陸できる場所を探そうとしていると、隣で港の様子を窺っていたクレナが怪訝そうな表情で呟いた。

「ねえ、あの並んでる方の船……軍船じゃない?」

 すぐにアキレスを呼んで確認してもらったところ、ほとんどがユピテルの軍船である事が分かった。ここはネプトゥヌスなのに、どうしてユピテルの軍船が来ているのか?

 更に港に近付いてみると、桟橋などに兵士達がたむろしているのが分かった。船の数の割には人数が少ない。ここにいるのは一部で、残りは町にいるのだろうか。

 それでもあそこから上陸すれば、すぐさま兵士達に見つかってしまうだろう。

 これは場所を変えた方が良さそうだ。静かにその場を離れ、グラン・ノーチラス号の製作者、水晶術師ロンダランのドックへと向かおう。

 その辺りは主に漁師が利用する区画なので、案の定軍船の姿も兵士の姿も無かった。幸いドックの近くに漁船も無い。これなら見つからずに上陸できそうだ。


 それにしても、一体何が起きているのか。コスモスを助けるために戻ってきたが、どうやらそれだけでは済まなさそうだ。

 何かが起きようとしている。そんな予感にかられながら、俺はグラン・ノーチラス号をドック近くの桟橋へと近付けていった。

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