Blade:7
俺の勝利が会場全体に知らされると観客席から多数の歓声が湧き上がった。
「うおおおお!カイルの奴勝ちやがった!」
「カイルくん、かっこよかったよー」
「変態勝ったー!」
「まさか騎士団長に勝つとは……」
「カイルってあんなに強かったのか!?」
「大したもんだな」
「いや、俺はカイルが勝つって信じてたね」
「お前始まる前と言ってることが違うじゃねーか!」
「鬼畜!鬼畜!」
「カイルー!シェオルちゃんを出せー!」
「なにこの胸の高鳴りは?まさか、……恋!?」
「カイル!つけ払えー!」
ふふふ、みんなやっとこの俺の偉大さに気がついたか。
散々人のことをバカにしやがって、俺だってナンパばかりしているわけではないぞ!
まあ、だが俺は心が広い。
今までのことは全部水に流そう。
俺ってちょー優しい!
「うおおお!勝ったぞー!」
観客席に向けて手を振る。
するとガヤガヤとしていた歓声はまたひときわ大きくなった。
「ではこれにてイリーナ=フォルテシモとカイル=アルヴァルトの決闘はカイル=アルヴァルトの勝利で閉幕する。両者とも素晴らしい戦いだった!両者に拍手を!」
国王様の号令によりたくさんの拍手を貰いこの決闘に幕が降りた。
あー、久しぶりに頑張ったから疲れたわー。
*
「先ほどに戦い実に見事だったよ。カイル君」
「ありがとうございます。国王様」
王室にて俺は国王様からお褒めの言葉をいただく。この人見た目は厳ついけど意外と気さくで話しやすい。王様ってなんかみんな顔にシワを寄せているイメージがあったんだけど偏見だったのかな。
「まさか、イリーナが負けるとは正直思っていなかった」
「……申し訳ございません。国王様」
同じく同席しているイリーナが済まなそうに頭を下げる。
まあ、一国の騎士団長だからな。その辺の名もない傭兵に負けたらそりゃカッコつかないわな。
「いや、責めているわけではない。イリーナ、君もよく頑張っていたよ。でも今回は相手が強すぎただけだ。気に病むことはない」
「……ありがとうございます」
うーん、国王様の言葉を理解はしているけど納得はしていないといった顔をしているな。
しゃーない、ここは俺が一肌脱ぎますか!
「気にするなよ、イリーナ。お前が放った最後のあれ、凄かったぞ」
「貴様からの情けは受けん!!」
ありゃりゃ、一刀両断。嫌われたもんだな俺も。
そんな俺たちのやり取りを見てガハハと国王様が笑う。ちょっと王様、笑ってないでなんか言ってやってくださいよ。
「ホントに君は不思議な男だよ。こんなにイリーナが感情を出すところを私は見たことない」
「はあ……、そうなんですか?」
チラリとイリーナを見る。イリーナも俺を見ていたのか視線があったが一瞬睨まれたあとすぐに逸らされた。うわ、本格的に嫌われてんのな、俺。
「それにしても何故君ほどの男がその名を知られていないのだ?あの剣捌きはこの国、いや世界でもトップクラスだろうに」
「私もそれが気になります。この男は性根は腐っていますが剣技に関していえば私を遥かに超える腕を持っています。……剣技だけですが」
まあ、確かにこの大陸で俺の剣の腕を知っているのはごく少数だ。
それも俺の依頼の受け方が深く関わっている。
「俺は一度もパーティーを組んだことが無いんですよ。ソロで活動しているから誰も俺の実力を知らなかったんだと思います」
そう、俺はこの世界に生まれてこのかた一度もパーティーを組んだことが無いのだ!べ、別に組んでくれる人がいないわけじゃないもん!まて、人をそんな可哀想な奴を見るような目で見ないで!余計惨めになる……。
「そ、そうか。君も大変だったんだな。ところでそんな君の腕を買って一つ頼みがあるのだ!」
「わ、わあ!この男に依頼ですか、ガルド様!」
あからさまに話をそらす国王様とイリーナ。
てかイリーナ、お前キャラ崩壊してるぞ!なんだその大袈裟な驚きかたは。あまりの大根役者っぷりにこっちが驚きだわ。
てかやめてくれ、ホントに惨めになる。
同情なんていらない!同情するなら愛をくれ!
ちなみにガルドというのは国王様の名前だ。テラカッケーぜ。
「その頼みというのは?」
「うむ。イリーナの言うとおりこの国からの正式な依頼だよ。カイル君、君のその剣の腕を買って頼む。最近この国の周りに住み着いた〈地竜〉の討伐を依頼したい」
「〈地竜〉、ですか?」
〈地竜〉。翼の持たない竜は全てこの名称で呼ばれる。
〈翼竜〉や〈海竜〉とは違い動きは遅いがその分攻撃力が高く、ギルドでの依頼では四人以上のパーティーでしか行けない。それほどに倒すのが困難な相手なのだ。
「ああ、何でも新しく発見した新種で鱗がバカみたいに硬いらしい。でも君の剣の腕をもってすれば倒せると思うのだよ。この依頼を受けてくれないだろうか?」
うーん、どうしようかな。
ぶっちゃけ〈地竜〉とか面倒くさい。
だが、これは国王様の依頼だ。もし俺が姫様と付き合う、……わかりやすくするとにゃんにゃんするような関係になった時、父親である国王様の印象はいい方がいいに決まっている。
でもなー、………そうだ!
「その依頼、謹んで受けさせていただきます」
「おお!そうか、やってくれるのか!」
「ですが、こちらからも一つお願いがあります」
そう、これは国王様と対等に取引出来るいいチャンスだ。この機会を逃すわけにはいかない!!
「なんだ?報酬ならたんまり払うが?」
「いいえ、お金ではないです。でも代わりにそこのイリーナを貰い受けたい」
「はあっ!?何を言ってるんだお前は!!」
うがあ!とイリーナが吠えるが無視。今俺が質問しているのは国王様だ。お前の意見は聞いてない。
「何故だ?」
「彼女はまだまだ強くなれます。世界を知って腕を磨いたほうが彼女のためだと俺は思うのです。……というのは建前で勿論剣の腕も上げて欲しいのですがそれより俺のメイドになってほしいです」
だって、こいつからかうと面白いし。欲望丸出しだな、俺。
「ふざけるな、このバカが!私は騎士だぞ?メイドになどならん!ガルド様もこのバカになんか言ってやって下さい!」
「前向きに検討しよう」
「ガルド様までええええええええ!?」
がーん、といったような感じでイリーナが放心する。
くっくっく、さすが国王様。話が分かるお方だ。
「待ってください、ガルド様!ここで騎士団長である私が抜けたら騎士団は大変なことになりますよ!?」
「大丈夫だ。お前が仕切っていただけあり彼らは結束力が強い。団長のお前が抜けてもしっかりと機能するだろう」
「ですが、他の国が急に攻めてきたら……!」
「その場合は彼がなんとかしてくれるであろう。なあ、カイル君?」
ニヤリと国王様が笑う。
薄々思っていたが、この人なんか俺に似てるな。人をおちょくるのが好きなところとか筋が通っているようで実際はメチャクチャなところとかまさに自分の未来を見ているようだ。
そんなイタズラ好きの国王様に俺もニヤリと笑みを返す。
「もちろんです。俺もこの国が好きなんでね、誠心誠意守らせていただきます」
「うがあああああ!!」
ついにイリーナが発狂した。
その姿を見て俺と国王様は爆笑する。
ホントに飽きないな、こいつは。
国王様もゲラゲラと一通り笑い転げたあと、涙を拭きながら俺に言った。
「こんなにも愉快な人間が我が国に居たとはこの国も捨てたもんじゃないな」
「俺もそう思います。ここまで話が合う人は国王様が初めてです!」
他の連中はやけに俺に厳しいし。例えばシェオルとかシェオルとかシェオルとか。
「これからも一つ宜しく頼むよ。カイル君」
「はい、国王様!」
バシッと握手を交わす。
こうして俺と国王様は年齢や身分の違いを超え、マブダチとなったのだった。
「なぜこのようなことに……」
男同士の友情が芽生えたその時、一人イリーナは部屋の隅でいじけていたとかいないとか。




