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Blade:6

夏休み、キタァァァッァァァァァアアア!!


遂に今年もやってきてくれました。もう遊んで遊んで遊びまくりますよ!!

勉強?んなもの誰が好きこのんでやるかあああ!!


去年みたいに腕が真っ赤になるまで遊び尽くしてやりますよ。サイコー、ビバ☆夏休み!!





「先手必勝!〈閃光の砲弾(シャイン・バースト)〉 !!」


光の球体が弧を描きながら迫る。

あーあ、いきなり魔法かよ。いいですね、適性の高い人は。


「あらよっと」


パシュンッ!

ピカピカの球体を〈断魔の白刃(パニッシャー)〉で切り裂く。この〈断魔の白刃(パニッシャー)〉の能力は魔力の吸収。その刃に触れたもの全てから魔力を吸い取る完全な対魔法武器だ。

さて団長さんよ、こんなんじゃ話にもならないぞ?


「本命はこっちだ!」


なるほど、球体を囮に使ったのか。

俺があれに気を取られているうちに後ろに回りこんだのね。まあ、なんていうかメジャーだな。うん。


「もらっ……!?」


ガキンッ!

火花が散る。器用に腕を回して後ろからの一撃を防ぐ。ホント考えていることがバレバレだな、こいつは。

この距離で防がれると思っていなかったのだろう。イリーナの顔は驚愕に染まっていた。あら、可愛い。


「残念♩てか、王国騎士が後ろからの不意打ちをするってどうよ?」


「くっ、うるさい!貴様に言われなくても正々堂々倒してやる!……ハアアアアア!!」


剣同士が交差し、この決闘場全体に激しい剣戟の金属音が響き渡る。

何度も打ち合い、穿ち、薙ぎ払う。

確かに王国騎士の団長を務めているだけのことはある。イリーナ剣は一撃一撃が重いし、技のキレも悪くない。女性の身でありながら騎士団長を任されるのも頷ける。

これなら並大抵の奴では彼女の練習相手にすらならないだろう。

ーーーだけど、


「今回は相手が悪かったな」


そう、それはあくまで相手が並大抵の奴ならばだ。

シェオルに鍛えあげられた俺はその並大抵の中には含まれない。

それに剣越しではあるが〈断魔の白刃(パニッシャー)〉が着々とイリーナの魔力を吸収している。

この剣戟が長引けば長引くほどイリーナの魔力は消耗していくのだ。


「くっ、何故私の剣が貴様には通じない!」


ジリ貧の状態にイリーナが歯噛みする。まあ、今まで彼女が騎士団の中で最強だったのだろう。

だがそれも俺には通用しない!


「悪いな、こちとら毎日命のやり取りをしているんでね。強くないと生き残れないんだよ」


シェオルとの鍛錬と魔物との実戦を五年間も繰り返してきた俺にとって戦いの勝敗はまさに生と死そのもの。

負けることの許されない一本勝負を繰り返してきた俺にとってイリーナは敵にすらならない。


「お前は強いよ、さすが騎士団を任されるだけある。ただ単に俺がおかしいだけだ」




こんな俺に戦いを挑んだんだ。さあ覚悟はいいな、騎士団長さん?








◇◆◇◆








勝てない。

打っても打っても私の剣は弾かれ、躱され、流される。

それに心なしか魔力の消費が激しい。これは奴がなにかやっているのか?分からない。

こんなに圧倒的なのは初めてだ。

騎士団長であることに誇りを持っていた。そのためにたくさんの努力をしてきたと思う。

稽古に励み、戦術を磨き、苦手だった魔法まで身につけた。


なのに今、目の前の男にはそれが通用しない。

あれだけ磨いた自分の戦術の一つ一つが簡単に突破される。


「はぁ……はぁ……」


息があがる。体力もそろそろ限界だ。私と同じ数打ち合っているというのにあの男は汗一つ流していない。これが本当に人間なのか?


「そろそろ、投了(ゲームセット)か?」


ニヤニヤと奴が嗤う。

その不気味な笑みが脳裏に焼き付いて私を惑わす。


「はぁ、ぐっ!巫山戯るな!私はまだ降参してはいない!!」


そうだ、私は騎士団の長なのだ。

ここで降参するわけにはいかない!

とはいえ、もう体は限界だ。だから次の一撃に全魔力を費やす。


「集え、断罪の雨〈極光の弾幕(セイクリッド・レイン)〉!!」


天井に魔力が集束し、そして光の雨となって四方八方から奴に直撃する。

その破壊力によりフィールドが割れて辺りに砂埃が舞う。


完全に決まった。これで私の勝ちだ!



「うっわ~、あっぶねーな。おい」



だがそこに聞こえるはずない声が響いた。ありえない。そんな、でもあれは……、


「さすが団長クラスだな。ちょっと侮ってたわ」


土煙が晴れた先には変わらず奴が立っていた。

何故、どうしてあの弾幕を受けてもなお無傷でいられたんだ!?


「なっ……!?どうして?」


「別にこれで捌いただけだぞ?」


そう言って奴は自身の双剣を私に見せつける。

バカな!あれほどの弾幕をたった二つの剣で捌いただと!?


「確かに量は凄いが一つ一つの威力が弱い。もう少し質量を上げたらどうだ?」


私は最大出力を出した。なのに威力が弱いだと?こいつに限界というものはないのか!?


「で、どうするよ。まだ続ける?」


「あぅぁ……」


もう無理だ。腕は上がらないし魔力も空っぽだ。そしてなにより完全に心を砕かれた。戦意なんてものは私には残っていない。

騎士団長なんて聞いて呆れる。

所詮私は井の中の蛙だったのだ。

狭い世界で煽てられ自分に自惚れていた。

世界にはこんなにも強い人間が居るとは知らなかった。

奴……カイルと私ではもはや戦いになっていない。桁違いを超えて次元が違う。


「……私の負けだ」


「しょ、勝者、カイル=アルヴァルト!」


こうして私の完全敗北によりこの決闘は勝敗を決した。

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