Blade:13
「お、おい、カイル。本当にこっちで合っているのか?ちょ、歩くのが速い、もう少し速度を考えてだな……。ひゃあ!?カイル、今首元に何かが!!」
「はいはい、分かった。分かったからそんなに力を入れるな、腕がもげる」
ギャーギャー騒ぐイリーナの相手をしながら進んでやっとのこと先行していたシオンたちに追いついた。
「あっ、カイル様やっと来たんですね!……って、なんで団長がカイル様と手繋いでいるんですか?」
シオンに会った瞬間、ゾワッと悪寒が広がる。
言葉使いは丁寧なものなのにその端から棘のようなものを感じる。
え、なに?なんで怒ってるのシオンさん?
「シ、シオン?これには深い訳があってだな……、それに私だって好きでカイルと手を繋いでいるわけではないし……」
あたふたと説明を始めるイリーナ。しかしそれが余計シオンを苛立たせる。
「『カイル』?いつから団長はカイル様のことを名前で呼ぶようになったんですか?それといい加減離れてください!」
「や、やめろ!引っ張るな、転んでしまうだろ!」
わーわーと騒ぐ女性陣二人。
俺の腕にしがみついているイリーナをシオンが無理やり引き剥がそうとする。しかしイリーナは真っ暗の中を一人で歩くのはまだ不安なのか、俺の腕から離れようとしない。
涙目になりながらも必死に俺の腕にしがみついている姿からは日頃の凛々しさはどこ行く風か、団長としての威厳はまったく感じられない。
やれやれ仕方ない、助け舟を出してやるか。
「ほら、落ち着けシオン。イリーナが涙目だぞ」
「わ、私は泣いてなどいない!」
瞳を潤ませながらイリーナが抗議の声を出す。ややこしくなるからお前は黙ってろ!
「団長はズルいです!私だってカイル様と腕を組みながら歩きたいです!変わってください!」
「だから落ち着けってシオン。もう片方の腕を貸してやるから、な?」
「カイル様がそう言うのであれば……」
渋々といった感じで俺の腕をとるシオン。俺の言うことには素直に従ってくれるのだが上司であるはずのイリーナに対してはやたら好戦的である。
「なんで私の言うことは聞かないんだ。一応上司だぞ、私は……」
遂には可愛がっていた部下にすら酷い態度を取られる始末。哀れ、イリーナ。
「えへへ。カイル様……」
当のシオンは俺の腕に抱きついてご満悦の様子だ。まだまだ未発達である彼女の体を腕から感じてついつい顔がニヤける。
「なにデレデレしてるんだ。私の時はこんな顔しなかったのに……」
「ん?なんか言ったか?」
右腕でイリーナがなにかぶつぶつ言っているのでそちらに顔を向ける。なんか顔がどうとか言ってたな。
「なにも言ってなどいない!バカ!」
「ぐはぁっ!」
ガスっと脛を蹴られた。ぐおおおぉぉ…、なんて殺生な。
「むぅ、カイル様になにするんですか!」
シオンが俺を蹴ったイリーナに対して臆することなく食ってかかる。痛がる俺を心配してのことだろう。
シオンは本当にいい子だな。いいぞ、あの暴力騎士団長に言ってやれ!
「ただでさえカイル様の腕に触れるのを妥協しているのに、その上カイル様を蹴るだなんて身の程を知ってください!」
あれ?なんか怒るところが違くね?
「うるさい!私がカイルに何をしようと私の勝手だ。シオンには関係ないだろう?」
ちょっと待て。お前もなに言ってんの!?
違うからね!ちゃんと俺にも意志はあるからね!?
「むむむ……」
「ぐぬぬ……」
俺を挟んでシオンとイリーナが睨み合う。なんか昨夜にもこんなことがあったような……、デジャヴュ?
「まあまあ、落ち着いてください、二人とも。カイル殿が困っていますよ」
さすがに見兼ねたレスタが二人を宥めるように口を開く。
てかお前今までこの状況を見て楽しんでいただろ、絶対。
「「ふんっ!」」
ぷいっとそっぽを向く両者。
同じ騎士団の仲間なんだからもう少し仲良くしろよ。
「カイル殿がいないところでは仲が良いのですが……」
「え、なにその情報?それじゃあ俺が原因みたいじゃないか!」
失敬な、俺は何もしてないぞ!
「まあ、あながち間違ってませんね」
うそーん。やめてよ、本当に俺が悪いみたいだ。ぐすん。……いいもーん、こうなったらこの状況を精一杯楽しんでやる!
「ひゃあんっ!カイル様ぁ」
「お、おい。いきなり指を動かすな!」
指を動かして二人の体を這うように触れる。
太ももや腰に触れるとシオンとイリーナの体がビクンと跳ね上がり
くすぐったそうにその身をよじる。ぐへへ、役得役得。
「あら、楽しそうじゃない。カイル?」
突如暗闇の中で響いた声を聞いて金縛りでも起きたかのようにピタリと意識せずに全身の動きが止まった。ぶわっと冷や汗が溢れて足がガクガクと震える。間違いない、奴だ!
ギギギと首を後ろに向ける。そこには普段一緒に暮らしている漆黒の少女が立っていた。
「是非とも私も混ぜてくれないかしら?ねえ、カイル?」
「シェオル……」
ギラリと彼女、シェオルの瞳が光る。それはまるで俺への死刑宣告のようだった。
こうして、目的の竜に会う前に早くもパーティー『ロリコンバスターズ』は壊滅の危機に瀕したのだった。詰んだな、これ。




