期間雇用と傷薬
あらすじ、小売商の息子が副長付補佐官にクラスアップ。あと、顔腫れまくり。男前だね。
しっかし、男前になったなぁ・・・・・
見事に腫れあがった小売商の息子の頬をつつきながら薬の準備をする。
「痛いからつつくのやめてくれない?賢者様。」
「お前みたいな突進馬鹿にはこのくらい痛みがないと駄目だろう。薬塗ってやるから大人しくしとれ!」
ふと親切心を出した私は傷跡娘を呼ぶと彼の顔に薬を塗るように命ずる。
傷跡娘は自分のために立ち上がって傷ついた小さな勇者に祝福を与えるために薬を手に取り塗り付ける。
「染みる染みる染みる!!いたたたたたたたたっ!」
腫れて敏感なところに触れられたものだから悲鳴を上げる小売商の息子。
「男ならば我慢しろ!傷跡娘が不安がって涙目になっているだろう!彼女のために立ち上がったんならば最後まで意地を張り通せ!」
「ご、ごめん・・・・・痛かった?」
おずおずと視線を下げる傷跡娘に
「大丈夫!染みて痛いけど我慢できないほどじゃない!」
「痛かったら言ってね・・・・・・・」
「さっさと・・・・・・・・・・・・ って、いたいいいいっ!!」
微笑ましい小さな恋のメロディーを見ながら孤児弟が質問する。
「だんなぁ、あれはそんなに染みるんですかい?」
「ああ、効き目は一番だが痛みが一時的に倍増するのが欠点だな。」
「何で痛みが倍増するのだろう?」
「なんでも痛みが治癒力を促進させる効果があるからだと言う説明をされた事があるが、如何考えても薬の製作者は加虐嗜好だろうな。」
「孤児弟よ、あれは本当に染みて痛いぞ。」
「俺は酒場の喧嘩で怪我をする馬鹿のために考案されたと聞いたことがある。効き目は抜群なんだがなぁ・・・・・下手な霊薬並みに回復するんだが・・・・・・・・・染みるんだよなぁ・・・・・」
口々に怪我をした経験(ロクでもない原因だったりするのは共通)から怪我した以上に酷い目にあったとつぶやく大人たち。
子供達は薬も満足に宛がわれない環境だったからそんな事知らず一歩引いて彼を見ている。
「だんな、小売商の息子に対する仕返しですかい?」
「まさか、私は可愛い眷族の為に立ち上がってくれた彼に最高の治療を施しているだけだぞ。」
「うわぁ、白々しい・・・・・・・・・」
「ご主人様あの程度の怪我でしたら唾つけとけば治るのでは?」
「孤児姉も言うねぇ・・・・」
そんな周りのやり取りを聞いていた小売商の息子は
「この薬をわざと選びやがったな! この腐れ賢者!黒官僚!おれにこんな酷い薬塗りやがって!お前なんか王妹殿下の妄想素材になって触手人間から後ろから貫かれてしまえ!!」
「人聞き悪いなぁ・・・・・ 我が弟子よ。この薬は欠点があるが良い薬だ。痛いのはお前が殴られるようなことをした結果だ!」
「殴られたって殺されたって腑抜けて良い場面じゃなかったろう!理不尽に泣く人間に更に石を投げるような真似をする屑は許せない!」
「其処までわめければ大丈夫だな。礼を言うぞ、糞餓鬼。私の可愛い眷族のために立ち上がってくれて・・・・・・・・・・」
「ふんっ!賢者様の礼なんか要らないよ!おれは勝手に殴りかかってやられただけだ!」
「意地っ張りが、其処まで元気あるならば西の庭園に行ってこの書類を届けて来い! もう喧嘩売るんじゃないぞ!」
「判った、行って来る・・・・・・・・・・」
小売商の息子は書類を受け取ると駆け出していった。
元気が有り余っているなぁ・・・・・
「そういえば法務官、庭園公のところに書類なんて良く在ったなぁ・・・・」
「あれか?糞餓鬼の治療依頼だ。庭園公は治癒術の使い手だし少し頭冷やすにはちょうど良いだろう・・・・・・・・・・」
「で、知っているか法務官?」
「なんだ式部官?」
「最近庭園公のところに王妹殿下が入り浸っているのを・・・・・・・・・・ 彼女らの茶会もあそこで開かれているぞ・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・王妹殿下の存在を考えていなかった。と言うか庭園公が腐化していたなんて知らなかった・・・・・・・・・ 前々からその傾向があったのだが・・・・・・・・・・ 其処まで進行していたとは・・・・・・・・」
「孤児弟!急いでいって連れ戻せ!!必要ならば近衛兵とか借りても構わん!!早く行け!!」
「はいっ!!」
「無事でいてくれよ・・・・・・・・・・・・・」
心配で手がつかない男達とはべつに孤児娘たちはテキパキと仕事をこなしていく・・・・・・・・・
孤児弟が急いで駆け出して行ったのだが、遅かったようでしばらくして戻ってきた二人はげっそりとやつれて泣きそうな顔をしている・・・・・・・・・・・
「だんな、ただいま戻りました・・・・・・・・・」
「賢者のだんな、治療はしてもらえたんですがお茶会に巻きこまれてしまいました・・・・・・・・・・・」
「二人とも済まなかった・・・・・・・・・・・大丈夫だったか?」
「何とか貞操だけは・・・・・・・・・色々着替えさせられてもみくちゃにされてしまいましたが・・・・・・・・・・・」
「おれも・・・・・・・・・・・・・・・うわぁぁぁぁ・・・・・・・・・・貴婦人怖い貴婦人怖い・・・・・・・・・ おれはそんなもの入らないよぉぉぉ・・・・」
「しっかりしろ小売商の息子!! 大丈夫だよ、ここにはお前らを脅かすものなんて居ないんだから・・・・・・・・・・!!」
「法務副長さまぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・(泣」
数刻でこの威力。恐るべし王妹殿下・・・・・・・・・・しかし、この二人がこの状態だと仕事にならんな・・・・・・・・
「法務官、まずこの子達の心の安定が重要だ。今日の所は我々が進めておくから君はこの子達を連れて落ち着かせてくれ。」
「済まない民部官。」
「いや、我々もまた王妹殿下の被害者なんだから・・・・・・・・・・・ この子達の痛み存分にわかる。」
同情の視線を二人に注ぐ男達、私は孤児達を連れて退出する・・・・・・・・・
孤児院には連れて行けないな、性愛神殿で治療してもらえるだろうか?無理だな・・・・・・・・・・・
小売商の息子を親元に帰すのは流石にまずいし寮に連れて行くか・・・・・・・・・・・あそこなら安心できる・・・・・・・・・・・
寮母ならば二人の面倒くらい見てくれるだろう・・・・・・・・・・・・
帰るか
「ねぇねぇ、孤児姉。王妹殿下ってそんなに凄い人なの?」
「凄いと言えば凄い方で王宮の女性陣の何割かは彼女の属性に染められていると言うか・・・・・・・・・・前、孤児院に持ち込まれた宰相国王本の作者と言えばわかるのでは・・・・・・・・・・・」
「あの本ドキドキした・・・・・・・」「手に入らないかなぁ・・・・・・」
ごすっ!
私は思わず染まりかけた孤児娘達に拳骨を落とす。
痛いだの酷いだの言う彼女達に一言。
「あれに染まったら人として終わりだからな!あれだけは本当に駄目だから・・・・・・・・・」
見てみると男達もうんうんうなづいている・・・・・・・・・
男達の真剣な様子に孤児娘達も理解してくれたようだ。
気をつけないとここに王妹殿下だけは連れて来てはいけないと・・・・・・・・・・・
「副長、王妹殿下避けの結界張れませんか?」
「難しいだろうが警備を増やす方向で進めよう・・・・・・・・」
さて、寮に行こうか・・・・・・・・・・・・
「もう、おなかぺこぺこ・・・・・・・・」
「そういえば昼食べていなかったものね。」
「賢者様、食事もよろしくぅ☆」
すっかり仕事していて忘れていた。寮による前に何か食べていこうか・・・・・・・・・・
「「やったーーー!」」
娘たちは色気より食い気のようだ。犠牲者も美味しい物食べれば少しは回復するだろう・・・・・・・・・
あれ?どうしてこうなったのだろう?