末王女と市場
あらすじ 末王女来襲!どうする孤児弟!君の逃げ場は(多分)ない!!
とりあえず、末王女様を送り届けますか・・・・・・・・・・・・
そう言えば、ここに来る事を誰かに伝えてあるのかな?
「王妃殿下に伝えてありますわ。侍従官もいますし問題ないでしょう。」
「末王女様に押し切られてしまいまして・・・・・・・・・・・法務官が流石に子供相手で無体な事をしないだろうと思いましてつれてきたのですが・・・・・・・・・・ せいぜい、門前払いで仕事をしないと突っぱねる程度でしょうし。」
そりゃ、そうでしょうが無用心だな。
これで何かあったら、孤児院自体が取り潰されてしまう。そのことを考えていなかったのだろうかこのわがまま王女は・・・・・・・・・・・
「だいじょうぶですわ、その時は宰相あたりが私の首と難題を吹っかけて法務官を復職させるでしょうし目的は果たせますわ。私とこの侍従の身柄で済むならば安いものですわ。」
「・・・・・・・・・・・・・ うわぁ、それ子供の発想じゃない!!私も引くよ・・・・・・・・・・」
末王女の発言に周りが引く・・・・・・・・・・・ 侍従官も今更ながら事の重大さを気がついて青い顔をしている。
下手したら守りきれなかったと一族郎党路頭に迷いかねない状況だったし、侍従の首が物理的に飛ばされるのは確実だろうし・・・・・・・・・・・
「私助かったのですか・・・・・・・・・・」
「今のところはな、多分城に戻ってから始末書くらいは書かされるのではないかな?」
「はぁ・・・・・・・・・・・・・」
がんばれ末王女付侍従官!手伝いは出来ないが応援はするぞ。
移動願いは侍従長宛だが侍従長は王妹殿下の本が原因で療養中だから何時になるかわからないぞ。
まぁ、私も交渉につくといった手前、どのような条件にするか考えながら歩く。
・再契約なしの期間雇用である事。
・二度と復職要求をしない事。
・仕事内容は補佐である事。
これが前提だな、後は賃金面かな?
私のほかに孤児姉弟は普通に来るから三人でいくらが良いかな?
金貨10枚くらいかで半月程度か・・・・・・・・・・・・・
そんなこと考えているうちに市場の前を通る。
結構な人ごみに末王女の手が孤児弟のすそをつかむ。見慣れぬ景色と人ごみに吃驚しているのだろう。
こういうときは年相応だなと思って微笑ましく思う。
孤児弟のほうも妹にするように手を差し出す。そういう事をすると逃げられなくなるぞ。
差し出された手をおずおずと握り返す末王女、普通侍従官が抱きかかえるとかしないか?
「それは一応不敬ですから。それにこんな微笑ましい末王女様の様子に水を差すなんて無粋ですよね。」
ニヤニヤしながら言うな。それこそ不敬だぞ。
「いえいえ、末王女様の健全な成長を見守っているだけですよ。孤児弟ならば節度を保ってくれそうですし。」
「そりゃ、そうだな。でも孤児弟も男だから何時狼になるかわからんぞ。」
「それならそれで、止めますから大丈夫です。」
ならいいのだが・・・・・・・・・・・
手を握って安心したのか周りに慣れたのか末王女は色々興味を示して孤児姉弟を質問攻めにする。
念のためにそばにいた衛士に末皇女の事をそれとなく見守るようにお願いをしてこっちも若い二人のやり取りを眺めてついていく。
少々寄り道になるが交渉が長引いたと諦めてもらおう。
「孤児弟! あれはなんだ? 食べてみたいぞ!!」
「末王女様、引っ張らないでください。あれは薄焼きの麺麭に野菜のペーストを塗りつけて好みで塩蔵肉や乳酪をはさんだものです。お城に行けば、いくらでもおいしいもの食べられるのですから我慢してください!」
「嫌!おなかすいたの!侍従官。あれを買って来い。」
「王女様、わがままはなりません。王女様の食べるものではないでしょう・・・・・・・・・・」
「法務官だって普通に食べるものだから王女の私だって食べられるもの。」
「法務官は悪食ですから大抵のものを食べてもはら壊さないですけど王女様はおなかが弱いですから当たりますよ。」
「侍従官、お前に言われたくないぞ・・・・・・・」
「おなか壊すようなものをわがこくみんがうるわけないだろうが!侍従官我が王国民を見くびるな!!」
「末王女様、あと少しで王城ですから我慢は出来ませんか?」
「できない!あたしはあれがたべたいのだ!!たべたいのだ、たべたいのだ!!」
「末王女様、一つ買ってあげますからこれ以上ねだらないでくださいね。」
末王女に負けた孤児姉が一つ乳酪をはさんだ麺麭を買って末王女に与える。
おっかなびっくり一口齧るが、お気に召したらしく次の一口は大きくかぶりつく。
口のまわりがべとべとになるが気にもせず無心にかぶりつく。
食べ終えた末王女の口を孤児弟が手巾で拭い、いつの間にか用意したのか飲み物を渡す。
何処にでもあるような柑橘と蜂蜜を水で割ったものだが、物珍しさと甘さに一気に飲み干す。
まだ欲しそうな顔をしているのだがこれ以上は翌朝世界地図を描くことになるからと侍従官に止められる。
「乙女の恥をさらすなんて侍従官は残酷だ。」
「確かに非道ございます。でも、侍従官様の苦言もお聞き入れくださいませ末王女様。」
「世界地図なんて書かないのだ!」
「そうでございましょう、末王女様。あまり食べ過ぎても歩けなくなりますよ、ここら辺で抑えておいてくださいませんか。」
「うむ、孤児弟がそういうのならばその言受け入れて使わす。」
「ありがたき幸せ・・・・・・・・・・」
孤児弟、末王女との相性がよさそうだな。この分だと侍従としてもいけるのではないか?
「それは面白いかもしれませんな。侍従長に進言してみますか・・・・・・・・・・・・」
「流石に苦労すると決まっている職場に送り込むほど私も非道ではないぞ・・・・・・・」
「法務官、聞こえておるぞ。あたしは子供だがそこまで非道な主ではないはずだが。」
「そうでしょうとも末王女様。ただ、周りの王族と関わりあう事自体が苦難でありましょう。」
「否定できない事がつらい・・・・・・・・・・・」
「末王女様、大変なのですねぇ・・・・・」
「判るか孤児姉。あたしもあれが血を分けた一族だという事を否定したいのだが・・・・・・・・・・・・・」
そんなやり取りはさて置き、色々なものを見て店の者を質問攻めにして困らせたりしているが全裸賢者の連れという事でお目こぼしして貰っている。
店によっては果物とかを一切れご馳走になったりしている。意外とちゃっかりしているなこの姫様は・・・・・・・・
迷惑料代わりに一品二品と品物を買う侍従官。無理して買うことはないのだが・・・・・・・・・
そんな末王女に振り回されつつ孤児弟はかいがいしく世話を焼く。
迷子にならないように手を繋いで、質問に答えながら売り子達に丁寧に礼を言ったり、暴走しがちな末王女を嗜めたり・・・・・・・・・・・
はしゃいでいる弟妹の面倒を見ているようである。
そのうち焼き菓子を買ってもらったり(弟妹達のお土産用に買ったのを奪い取ったともいう)しているうちにべったりと懐いてしまっている。如何見ても手のかかるわがままな妹と仕方なしに面倒見てる兄という構図である。
「あの子も意外と面倒見がいいから・・・・・・・・・・・ あのまま末王女様に振り回されてしまうんじゃないです?」
まぁ、肝心なところでは手綱取ってるから問題なかろう。
そんなこんなで市場を楽しんでいる末王女であった。
「もう、満腹だ! 市場には色々美味なものがあるという事がわかった。あとで料理人に作ってもらおう。」
「あれだけ食べればねぇ・・・・・・・」
末王女の食い扶持を払わされた孤児弟は少々涙目・・・・・・・・・・・・ 後で補填してやるから泣くな。