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4.作戦開始です。






「あ、の!」


息を切らしながらユーレアはハンカチを持って走った。


「あの、これ…落としましたよっ」


「あら?」


振り向いたメリアは粗末な平服姿の女性からハンカチを受け取る。


「まぁありがとう。よろしければお礼をさせて頂戴な。」


おっとりと微笑むと、彼女を誘った。



…これが、「仲良し大作戦」そのいちである。

王宮侍女が休暇に街に出た先で落とし物を拾い追いかけ仲良くなる。という作戦になったのだ。


どうしてこうなったかというと、ノクオリオ伯爵家令嬢であり長女のメリアとセズバーン子爵家の三女であるユーレアとでは関わる人間の層が違い過ぎていたからだ。

それもそのはず。

基礎として身分階級があるのだから家庭内でも優劣は如実にあるもの。

男も女も長子として生まれただけで義務と責任が重く課せられる。

その代わりに恩恵も大きい。

幼い頃から婚約者を得ていることもそうだが、なによりも女でも学園に通うことが出来るのは家門の長女か裕福な家の娘だけだ。

下位貴族ともなれば次女以下は最低限の教養を家庭教師から教わるだけでそれ以上は学ぶ機会さえ得られないのが普通。

男でも次男までは当主補佐やスペアの意味で貴族としての教育を受けられるが三男以下は幼い頃から優劣をつけて育てられる。

それが階級というものだ。


『婚約者との街歩きデートの最中に親切な女性と親しくなった。』は、ファーストコンタクトとして悪くない演出だとおもう。

これで①はクリアだ。

茶会などで貴族に仲の良さを周知させるにはここから自分で動けばいいだけ。

(カーマイン様と同時に顔見知りになったという実績は、ある意味ではプラスだわ。)


作戦②の前には、婚約者としてバーレイズ伯爵邸でのお茶会に彼女(ユーレア)を含めた客を招待することで親密さをアピールすることもお忘れなく。

むしろこの時にカーマイン様がユーレア嬢に好印象を持っていることを一部の人間にでも周知させることが出来るので好都合。


それから二か月後に②を実行する

華々しい結婚式にはユーレア嬢も招待した。

ブーケを彼女に向かって投げ、祝福の言葉を掛け合った。


作戦③はなんのことはない。

ユーレア嬢の休暇の度に我が家へと招待し、お茶を楽しむ。

なんだったらカーマイン様も愛しい恋人との時間を楽しめるので一石二鳥だ。


「うふふ。」


残りの作戦④⑤⑥はメリア(わたし)の失踪と、彼ら二人の恋の正当性が周知されるだけ。

⑦への布石みたいなもの。


(まあ失踪証明や妻が男を乗り換えたなんていう悪評は私だけではなく面倒臭いこともひっくるめて貴方も多少は引き受けてくださいな。)

たったそれだけのことで求めていた愛が手に入るのだからいいでしょう。



□□□



結婚一周年記念の旅行は隣国ではなく平原緑地のタカカセルムンバ国だ。

王国の真逆に位置する砂の国のルルエント帝国と迷ったが、住みやすさで選んだ。





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