53話 刀術
「ルア様ご機嫌よう、今回は時間通りでしたね」
オヤジからハグレモノの素材から作られた弓矢を受け取り、数日。
アリスさんから約束の騎士達の訓練の時間をとって欲しいと言う連絡を受け取り、互いに時間が取れる日にちを決め当日、アリスさんの後ろに何人かの騎士達が立っていた。
彼らの雰囲気から騎士団長とかの指導係だろうな。
「ええ、今回は互いに連絡を取ってきましたからね、これならアリスさんも無駄に待たされることもないでしょう」
「全くです。
今回はまずルア様の技を見せて頂いてもよろしいですか?」
「大丈夫ですよ、では今準備しますね」
そうして土魔法を使い人間サイズの的を作り出し武器を構えて続けて三つの技を繰り出す。
〜ロダン=ピエール〜
…はっきり言って意味が分からなかった。
刀など剣の劣化版、そんな物の技など精々魅せるためだけの技だろう。
お嬢様が私達にそんな物を見せるなど何を考えているのだろうか幾つも思案していると突然馬車が揺れなくなった。
これは…黒い道?
「お嬢様、突然馬車が揺れなくなりましたね」
そう問いかけてみるとお嬢様は少し悔しいそうに「…ルア様自らこの道の整備を行なったらしいです。
あの領地をここまでの物に昇華させるとは…不甲斐ないですが彼の方が素晴らしい人間です」
ルア…ああ、あの魔族を退けたって言う出生が不明の人間か。
ルア=フィリップ…噂から判断するならば勇者に匹敵する力を持ち、尚且つ情に厚い人徳者。
このような整備技術は素晴らしいが私の剣技の方が使えるはずだ、あんな奴らのようにスキルに依存した戦いをする人間ではないのだ。
そう…思っていた、ルアさんの技を見るまでは。
彼の剣技は美しかった。
しっかりと剣筋を見ていたはずが自分が気づいた時にはもう彼は納刀を始め的は斬られていた。
…少しのズレもなく一直線に。
もう一度私から願いし今度は剣筋が見えるようにゆっくりと彼は刀を振ってくれた。
一つ一つの技が洗礼され、それでいて舞のように綺麗な剣筋、自分には到底到達できなかったはずの剣技の領域。
お嬢様が私達に見せようとしたのも納得できる。
現に私達はその洗礼された剣技を見て唖然としていた、同時にこんな技術がある事を知らずに刀を見下していた自分達が恥ずかしくなった。
一つ目の技は…「疾風」という名前だったな。
早いがゆっくりで刀の動きが予測しづらく三回連続で切れるように考え抜かれた体の動きと刀の向き、自分でも早くゆっくりという表現はおかしいと自覚しているが、そうとしか言えない光景だった。
二つ目の技は「時雨」先程とは打って変わって三連撃から五連撃にしかしその一つ一つの力は強く相手を確実に切り裂く、また最後の斬撃では最初の体の向きに戻り始める、それにより他の技に連携が可能。
それこそ私達が使う技にも繋げられそうだ、それこそ…さっきの疾風の後にもあの体の向きなら繋がるんじゃ…「そうか!分かったぞ!」と大きく口に出してしまい周りを驚かしてしまったが彼の技の特性を見抜けた事に喜びを感じてそんな事を考えている場合ではなかった。
彼が使う技はきっと技が繋がって行くんだ、我々もそのような技術がある事は知っている。
現に見せてもらった二つの技のみで判断するのは早計かも知れないが彼の使う技は汎用性が高い。
一つ一つの斬撃は軽くても連撃によってそれをカバー本当に考え抜かれている。
しかしその考えに至りまた新たな考えが生まれた。
彼の技は何かを殺す事に特化している、それこそ人間を殺し切るのに。
…後で彼に聞かなくては。
すると的の生成を彼が止め私達に話しかけてきた。
「今、皆さんに見せたのが私が教えれる技、攻めの技です、もう一つの霞は逆に防御の技、向かってくる飛び道具や剣術に対抗するための技です。
…誰か攻撃をお願い出来ますか?やはり防御と言うのは攻撃を実際に受け流す所を見せなければ分かりづらいでしょう」
「では!私が」
これはまたとないチャンスだ!彼の技を真っ先に体験できる。
「では、お願いしますね」
そうして彼は持っていた刀を納刀し姿勢を低くした。
ゾワッと自分の体に寒気が走る、空間が丸ごと変えられてしまったみたいだ、自分が立っている所も彼に支配されたような感覚になる。
あちらが教えてくれると言うならばこちらも本気で行かなければ無作法という物。
呼吸を整え彼に自分が出せる最大の力を使って彼に一撃を入れようとする。
彼の肉体に触れようとした瞬間、私の手から剣が抜け認識した瞬間大きな衝撃が襲ってきた。
「ぐっ…ぐぁ」
成程、これは…やはり素晴らしい。
自分が食らった衝撃に耐えていると彼が慌てて駆け寄って私の手に魔法をかけた。
「す…すいません!危険を感じてつい力が入りすぎてしまいました!」
さっきの空気から一変して朗らかな雰囲気を彼は纏っていた。
「さて、皆さん今お見せした技をこれから伝授していくのでしっかりとついてきてくださいね!」
そう、彼は明るく言った。
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