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76 はぐれ神官ラケル

フェクトを着たフェイルが依頼の事をエリスに伝えると、彼女はため息をつく。

(どうした?てっきり喜ぶと思っていたんだが。)

「不満はありません。ただ、予想していたよりもマルドーネ国の様子が悪いようなのです…」

エリスが使者から渡された手紙はディミトリから転送されたもので、こうある。


前回の異端審問軍の連合を断ったマルドーネ国は、塩の川の町の更に川上の北、チーリアという港町に帝国軍の協力の下で武力集結させているという。

帝国軍の軍艦は塩の川の町の大砲に見つからない様に対岸の山脈側から大きく迂回して、北上している様だ。


北のマルドーネ国は同教ではあるが、ロルサーグとは貴族間の領土争いが絶えず昔から仲が悪い。ディミトリ同様に帝国との融和を考えていた側でもあったことも拍車をかけている。


フェクトが帝国を打ち破り情勢が変化した。

更にロルサーグ国は連合軍の編成を拒否した罰として賠償金を請求している。今までも二重の奉納金が必要だったのに更なる重税が必要になり、住民が逃げ出しているのが現状だ。

その圧力に耐えかねてマルドーネ国の王が蜂起したのが発端だという。

エリスの手元に来たのは、塩の川を通じてディミトリに送られたもの。原文の手紙と共に、どうするかの判断をエリスに問いかけて来た。

『ロルサーグに反旗を翻し、共に圧政を打倒しないか』という誘いの手紙だ。

差出人は正式なものではない。サインにはマルドーネ国王の名前が入っているが、手紙の封蝋にマルドーネの国を示す印がない。


フェクトやエリスは、今はまだ教会勢力に自分達の武力をチラつかせて奉納金を出し渋っている状態だ。

しかし、帝国を撃退して街は安全になり、レガリア国の元同教の難民を引き入れて労働力を大量に得た今、これからは誠意を示す為に払うことを決定している。


アメジストの街は今、特に発展目覚ましいことでも有名だ。とてもリアルタイムで情勢変化を呑み込めている手紙とは思えない。胡散臭さい手紙だ。

「フェクト様、どう見ます?」

(場所を移そう。)

彼らは謁見の間から作戦会議室へと場所を移る。


(…情報を見る限りでは、マルドーネ側の実情は壊滅的だろうな。そして俺達の印象も最悪だろう。)


アメジストの街はダンジョン水晶の地下茎のリスクから、減税や農耕地改革などで住民の定着を優先している。

国境沿いでダンジョンと隣り合わせの危険な街が、税率も高かったら誰も住み着くはずがないからだ。

その上で帝国をほぼ独力で打ち破り、圧倒的な軍事力を見せつけた。逆境を跳ねのけ辺境伯としての壁役を全うした英雄エリスに、近隣諸国が足を向けて寝ることは不可能だろう。


マルドーネからすれば、エリスがとにかく恐ろしい存在に見えているはずだ。

帝国よりも強い銃火器を用い、アメジストの街の損耗の30倍以上の被害を与え打ち破った軍勢と戦えば、銃のない同教の国など一息に壊滅させられることは明白。

敵として北上してきたら一巻の終わりだ。勝ち目のない戦に徴兵などされたくない人物の方が多い。農民も町民もルメリア側に逃げ出している。

これがマルドーネからすれば致命的だ。蜂起しようにも余計に軍事力を掠め取られている。


英雄エリスの影響力だ。アメジストの街が帝国に勝ちさえしなければ、とマルドーネの貴族の一部は一方的に彼女を敵視するだろう。エリスが動けば余計に不安を煽る可能性もあり、介入は非常に難しい判断になる。


マルドーネ国は、帝国融和派だったディミトリに裏をかいて欲しいと要求しているのかも知れない。

彼の選択は極めて正しい。裏切る振りをして自分をマルドーネに向かい内情を探れ、という手段も取れるよう立ち回っている。

父親としての余計なプライドを挟まずエリスを上司として見て判断を仰いでいる。中々出来ることではない。


(大敵が消えればすぐ小競り合いになるのは分かっちゃいたが、こんな早いものとはな。)

「愚かですねぇ…」

フェクトとフェイルはため息をつく。

(ルメリア側から俺達に要請は?)

アメジストの街にも増援を送る様に話が来るのが自然な流れだ。


「それがどういうわけか…出ていないのです。」


エリスは理解しがたいという顔をし、腕組みして立ったまま、途方に暮れた表情で頬に片手を当てる。

「どういたしましょう?」

これには意味がありそうだと、彼らは考え込む。

「ともすれば、我々に武功を建てられたくないのでしょう。」

フェイルは南側へ矢視された人口の流出経路を指さして言う。

(あるだろうな。ここで活躍すると、王都でエリスがルメリア国王になるべきだ、なんてことになりかねん。そうすりゃ内部分裂だ。)

「帝国が海路を経由して略奪しやすい別の地域から上陸をを狙う可能性がありますからね。南北からの挟み撃ちを避けるには、形だけでも団結してる状態を維持すべきです。」

フェイルは、更に西側のサービア国と、その西の海。地中海方面へ帝国の駒をスライドさせる。


フェクト達は教会側勢力でルメリア側につくことは変わっていない。今回のことの発端は、アメジストの街の戦勝ということもあり、フェクトには大なり小なりの責任がある。

(割を食っているのは領民で不毛な争いだ。無益な血を減らすには介入したいが…帝国が関ってる以上、マルドーネは俺達の敵であることは揺るがない。騎士貴族階級の立場から表立ってアプローチのしようがない。)

双方に矛を下す様に対話で干渉したいが、対話交渉に材料がない。帝国が関わっていることも介入を厳しくする要因だ。ただ技術や損益の享受をして仲直り、とはいかない。


(現状の情報では、我々に悪影響もなく、打つ手もなしだ。)


「先生からそのような言葉が出るとは意外ですね。」

「静観、でしょうか?」

(武功を立てられないエリスに関しては今のところな。難民が安全に退避出来る人道回廊でも設置することさえ、ルメリアとマルドーネに俺達が労働力を掠め取ろうと画策してると思われかねん。)

「逃げ出した民をマルドーネに送り返せれば信用は得れそうですが、難民も保身に必死で身分を隠すから手を出せていないのが現状なのですよね。」

エリスも数か月前に取り決めた約束を果たせずに困っている。


「ディミトリ様の手紙は?」

唯一あるマルドーネとの接点だが、フェクトの目は懐疑的だ。

(…差出人の仔細不明なのが気になる。マルドーネの物なのかも怪しいし、ディミトリだって先の戦争で大暴れした側だ。赴けば帝国に幽閉されるリスクしかない。返信すればルメリアからは内通者の疑いがかかる。)

「我々に不穏な動きがある、とルメリア側に背後の不安を与えて、出兵を抑える為の印象操作かも知れませんね。」

彼は手紙をレーザーで燃やす。

(リスクが多い。安定を取る。ディミトリの下に手紙など届かなかった。いいね?)

「ハイ。」「承知いたしました。父上にそう伝えておきます。」

(アプローチは別ルートから独自にだな。冒険者ギルドを使って情報収集をしよう。俺の体の件を含めて、お上さんの2国の対応を俺達でいち早く調べる。)

彼はため息交じりに言う。また暗躍することになるだろう。

「先生の予想は?」

(俺達のトップ、ロルサーグ国が既存の甲冑騎士での騎兵戦術を改めない限り、十中八九負けるだろう。マルドーネが勝った後は農民を返せとルメリア側に攻め込んでくる。)

「その折に協力の要請、あると思いますか?」

(あるとは思うが、その前に戦争を止められないか、手を取れないか画策しないとな。有利になれるように準備が要る。ひとりだけ情報提供者にアテがある。今から早速呼び出そう。あんまり会いたくない相手だが…)


・・・


フェクト達は冒険者ギルドへと依頼を出すと、数時間後にラケルはひとり呼び出された。


「…今更私にどういう風の吹き回しだ。」

ラケルは心底不服そうな顔をしてフェクトを睨みつける。

「ルメリアやロルサーグの事情に詳しいのはアナタだと。」

「…私に古巣の情報を吐けと?」

「そこを何とか…」

彼女は嫌そうな顔をしてマネキンの手の甲を掌で押しつぶすように触れ、フェクトの声を聴く。

(いずれにせよ、俺達のやることは変わらん。この辺一帯で対帝国の連合を組む。それだけだ。マルドーネやルメリアの貴族に帝国の息がかかってる人物はいるのか?かつてのディミトリ同様、一枚岩ではないはずだが。)

「…答える気はない。分かっていれば既に教会の刃が動いている。」

(…つまりは、分からねえから、まだ手が出せてねえと。なんだアテが外れたな。)

「チッ!」

彼女は握っていたマネキンの手をフェクトの目玉に投げつける。

(痛って!)


「マルドーネのステパン公爵はルメリアのスラフ公の従兄弟だ!意見を違えて彼が帝国融和派になったのは、ディミトリの進言に同意したせいだ!元々は貴様らが生んだ軋轢なんだぞ!」


怒鳴り散らしてスティレットをフェクトの鎮座しているテーブルに強く突きさし、フェクトを睨みつける。彼は余りの気迫に委縮してまぶたを細めて光彩が小さく引っ込んだ。

フェイルは思わず魔法を放とうとラケルに向けて掌をかざしたが、フェクトのマネキンの手が彼に掌を見せて制した。

「私が脱走兵扱いなのも全部!お前のせいなんだ!!それを知っててノコノコ呼び出しやがって!!!」


「ラケル様!であれば、尚のこと!私が責任を…」

激昂した表情で振り返ったラケルに睨まれて彼女は委縮する。

「取る…べき…なのでは…」

エリスは恐怖の余りフェイルの影に隠れた。大きくため息をついてフェクトの眼前のスティレットを引き抜く。


単純に彼女は、聖職者の端くれとして魔物のフェクトが君主ヅラしているのが気に入らないだけだ。

本来子供には責任はない。利用されるだけだったはずのエリスが、父親の尻拭いをする覚悟でいるというのも、彼女には無碍に出来ない発言だった。


「……4年ほど前にディミトリが叱責された会議の時、帝国融和派は3人いた。ひとりはさっきも言ったマルドーネの現君主のステパン公。彼も内心は不服だったらしいが、兵力差や周辺国の団結力のなさから止む無くと言った感じだ。」

「もうひとりは…」

「ルメリア国の現国王、スラフ公王の実弟。ライドウ公爵だ。10数年前のヴァルナの戦いで、撤退の際に迷ってレガリアとサービアの国境で一度捕虜に取られている。保釈金の支払いで戻ってきたが、帝国で数年暮らしていた時の噂では捕虜の割に厚遇されてたと聞く。」

エリスは数回頷いた。

「その折に、親帝国派になってしまったわけですね…。」

「親族である現ルメリア王には悪い話ですが、裏切者を買い戻したというわけですか。保釈金の払い損ですねぇ。」

フェイルは粘土を魔法で操作して、新たな駒を作り上げた。

「帝国もそれが狙いだったんだろう。内通者を自ら作り上げればいい、とな。2年前から私の部下がライドウ公爵の行方を探っていたそうだが、今も分からんそうだ。」

彼女は立ち去ろうと背を向ける。

「"はぐれ神官"の私はもう関われないからな。脱走前の古い情報だ。通用するか保証しない。」

不機嫌なまま彼女はドアに手をかける。

「お前に協力するのはこれで最後だ。次は呼び出されても応じないからな。」

フェクトはマネキンの手を動かした。

カラカラと木の板が当たる音にラケルは振り返ると、フェクトは手紙を手にしていた。中に金貨が入っていて重たい。投げて渡すと彼女は手紙を握りつぶしてキャッチして受け取り、舌打ちして帰って行った。


「凄い剣幕でしたねぇ。最後まで煽るのよくないですよ。」

(今のは別に煽ったわけでは…)

フェクトは落胆してマネキンの手に通っている魔力を切ると、音を立てて崩れた。

「でも、なんだかんだ教えてくれるんですね。優しい人です。怖いですけど…」

エリスには、フェクトが気が進まないと言った理由がよく分かった。フェイルは同意しながら腕を組む。

「しかし彼女、政治情勢を顧みた上で、故郷に利があるなら私情を挟みません。とても優秀な人ですよ。」

(とはいえ、彼女の処遇はしっかり気遣ってやらないとだ。)

「…と、いいますと?」

(教皇庁お抱えの暗殺者ともなれば、本国でも指折りの秘匿部隊だ。成り行きで脱走兵になったとはいえ情報を横流ししているわけだから、知られたら同僚に抹殺される。ましてや俺は魔物だからな。怒ってるのは、その辺だろう。)

「そうだったのですか…」

(だから俺は体を得て働くことに消極的なんだ。君以外の人間の命や生活も脅かしかねない。これで分かったろ?)

「「はい…」」

(理解してくれたならいい。今後、俺に振るべき仕事の是非も見えてくるだろうしな。)

フェクトはマネキンの拳を合わせた。

(だが、ルメリアと、この街に降りかかる火の粉は絶対に払わねばならん。ドイネルを死なせてしまった分の落とし前はここでつけよう。やることは決まった。)

「マルドーネのステパン公が腹の底で反帝国側なら接触に害はありません。ライドウ公の内部工作だとしたら、アメジストの街を攻略する為の戦略的な挟み撃ち、でしょうか?」

エリスの意見に2人は頷く。

(ヴィシュテ再奪還の為の布石のひとつだろうが、10年はかかる計画のはず。出鼻を挫きつつ、ロルサーグやルメリアに花を持たせてやれるように立ち回ろう。)


・・・


帰路の中央街の雑踏の中、ラケルはフェクトからの手紙を開く。

中には手紙二通と金貨が4枚。エリスからの正式な依頼文書と、フェクトの言伝が書かれている手紙だ。



『邸宅内での密会の内容を隠す、囮の依頼だ。達成の成否は問わない。

我々は2カ月前の3月中旬から、マルドーネから脱走してくる農民や下級騎士を

返還する約束を交わしている。ルメリアとマルドーネ間で結ばれた条約で、

ルメリア領内の我々も当然対象だ。

しかし、身分を偽って入国してくる者が後を絶たず約束を果たせていない。

特に、ダンジョン踏破のエリスとの婚約と爵位を求めて、特に下級騎士の

多くが冒険者ギルドに入り込んでいる。ギルド内部に金を積まれてる

ブローカーがいる。マルドーネ側の脱走騎士よりも、我々の雇用している

ギルド職員側が賄賂を受け取り、着服して汚職を伏せていることが問題だ。

密会の名目がコレならば、追手の部下にも示しが通じるだろう。

分かっているだろうが、俺の手紙だけは燃やすこと。』


最後に縦になった目のマークが添えられていた。


エリスの依頼書側には今日の日付もしっかり書かれている。エリスの手紙だけをわざと部下達に見つけさせれば、多少は疑いが晴れるだろう。

秘匿性のある任務ながら、母国や同盟国に悪影響はない。ブローカー自体も実在するはずだ。似たような仕事は過去にいくらでもやってきた。

フェクトの存在をはぐらかす言い訳の隠れ蓑としては、この上ない仕事だ。


ラケルは旧市街区の商店街の街道に戻る辺りで、視線を感じる。クシャミする振りをして小さな手鏡で屋根上を見ると、人影が2つ。

前に出会った自分の部下達だ。帝国との戦争が終わって、この街も安全になったことで、自分の監視を再開したのだろう。

フェクトも想定していたが、ラケルにも予想が出来ていた。

(まさか私が追われる立場になるとはな…。)


しかし、ラケルにはもうひとつの問題があった。追われていることが分かった以上、今から疑いを晴らしに行く必要がある。


旧市街区に戻り、ミランダとリカルドが準備をしている傍らで、退屈そうな顔をしているシトリンを呼び出して2人きりになった。

彼女は暖炉にフェクトの手紙を放り捨てると、シトリンは不安げな顔をする。

「どうしたんですか?」

「実はな…」

ラケルは事情を説明する。元部下達に嘘をついて、自分の弟子だといい張ってしまったことを疑われており、彼女は何かしら師匠らしい振る舞いをしないといけないと言う。

「すまないシトリン!なんとか口裏を合わせてはくれないか!」

「勿論!パーティーメンバーですもん。訳アリで居てくれてるんだから、私もそれぐらいしないと!」

シトリンは快諾した。しかし、ラケルは困った顔をする。

「ただ…困った事に戦闘技能面では教えられることがあんまりないんだ。私よりお前の方がよっぽど強い…」

ミランダとコンビだったとはいえ、インフェクテッドアーマーを倒すほどの実力だ。仮にラケルが2人居ても同じことは出来ないだろう。

「あ、じゃあその、みっともないんですけどマナーとか…教えて貰ってもいいですか?私もミランダも…その、あんまり真面目じゃなかったから。」

彼女は照れくさそうにして俯いて言う。

「…いいのか?そんなことで。」

「最近になって思うんです。食事の時とか、クレアお義母さんにずっと怒られてたけど…今はもっと言うこと聞いておけばよかったなって…」


ラケルはシトリンの吐露した言葉に胸を打たれた。不遜で傲慢ながらも力量のある人間は、どの集団でも探せば掃いて捨てるほどいる。

彼女の様に敬虔さと気品の重要さを理解した人間はそうそう居ない。切実で、それでいて重要な問題だ。

同教で同じ神職の人間として、断る理由はない。


「分かった。私で良ければいくらでも付き合おう。お前はまだまだ伸びる。上級騎士や貴族だって夢じゃない。」

ラケルは彼女の両手を取って、真っ直ぐ向き合った。

「あ、でもお手柔らかにお願いしますね!」

「クレアさんは厳しい人だったんだろ。似せていくからな。」

彼女は微笑むとシトリンの手を引っ張る。

「ひえ~!やっぱり辞めとけばよかったかも…!」


窓の外から覗くラケルの部下達は、2人の様子を見て意外そうな顔をした。

「…随分と楽しそうっすね班長。訓練生時代が懐かしくて羨ましいというか。」

まるで家族の様に接している。


教会の刃の構成員は、政治的な重役とのやり取りを前提とするために、拉致同然に引き取られた幼少の頃から厳しい上下関係と躾を徹底される。

その後に待っている戦闘訓練や実戦比べれば、テーブルマナーの講座すら座れるだけマシと懐かしく思えるほどだ。


手を叩かれたシトリンは苦い顔をして涙を滲ませている。ラケルの部下達からすれば、いい年こいて子供のしつけをさせられている様に映る。

「だがアイツ、英雄ドイネルと同じ目潰し勲章持ちだからな。班長より強い…」

「同じ孤児らしいっすからね。でも、自分からマナー講座受けたいなんてのは珍しい子っすよ。私もイヤイヤで泣きながらだったな~。」

「我々とは順序が逆なだけだろう。冒険者登録から内申A評価まで半年。最短記録でトップまで上り詰めた子だ。ドイネル越えは確実と言ってたが間違いない。班長はその出世に肖るつもりなんじゃ?」

「あの人がそんなみみっちい真似しますかね?しかし、命令とはいえ、ただ平和な姿見せられんのもつまんねーっすね。」

「だな…こんな事してる暇あったら元の任務に戻った方がいい。」

部下2人はウンザリしたため息をつく。

「ライドウ公爵、どこ行ったんすかね~。」

「さぁな。あんだけ探していなかったんだから、帝国に行ってたんだろ。今のマルドーネが怪しそうだが。」

「向こうの方が楽しそうっすよ。この街の連中は動くんすかね?」

「さてな。エリスの動向まで見張れとは言われていない。動くとしたら、精鋭のハイドゥク達の誰かだろう。50数名で数千人規模の港を2つも壊滅させたって話だ。」

「ヴァルナ落とした連中と現場で鉢合わせたくないっすね…。」

「命令違反してまでやることじゃない。大人しくこっちにいた方がいい。食事も美味いしな。」


夕方、フェクトとフェイルは指定されたメンバーと共に馬車でアメジストの街を出た。私服姿で夕食に向かう教会の刃の2人組と、顔を合わせることもなくすれ違う。


エリスは数日遅れ、後を追う形でルメリア国を訪れる予定だ。

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