通過儀礼
第十九話です。
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それでは、どうぞ。
依頼を受けた翌日。
領主様の屋敷を私とミリィは、ひとまず出発までを過ごす宿をとった。
「じゃあミリィ、早速だけど練習メニューを決めようか」
「うん。メグの為にも、あたし頑張るよ」
ミリィは私の宣言に元気よく返事をした。
やる気十分でいい感じだ。
ちなみにミリィを誘った後、私がミリィをちゃん付けすることや丁寧なしゃべり方はやめてほしいといってきたので、砕けたしゃべり方にしている。
なんでも、孤児院の人のしゃべり方に似ているとかで、しゃべり方にこだわりなど無い私はすぐに了承した。
そうすると私はミリィを呼び捨てにすることになるのだが、なぜかミリィは私を様付けで呼ぼうとするのでやめさせ、マーガレットの愛称のメグと呼んでもらうことにした。
私もその方が距離感が近くなったように感じるので大歓迎だった。
「うんうん。それじゃとりあえず森を走ってこようか!」
「わかった!……えっ!?」
「ん?どうしたの?」
いい返事が返ってきたと思いきや、直後にこいつは何を言っているんだって顔を向けられた。
変なことを言ったつもりはないんだけど。
「どうしたのって、森には魔物がいるんだよ?あったらどうするのさ!あたしはまだ戦えないのに!それに、走って何の意味があるの!」
ミリィはそういって顔をしかめている。
どうやら少し怒らせてしまったらしい。
いけない、私はミリィにそんな顔をさせるために言ったのではないのだ。
「まってまって、別に魔物を倒して来いとか言うつもりはないから!それにただ走るんじゃないよ?周りに注意しながら、魔物やほかの生き物の気配を探りながら、走り続けるの」
「周りの気配を?魔物に注意するだけじゃダメなの?」
「うん。それじゃ練習にならないからね。まず目標は、昨日みんなで森を歩いて居た時みたいに、集中して周りを探りながら走れるようになること。しっかりいろんな様子を探ってきてね。帰ってきたらちゃんと走った場所とその様子を教えてもらうよ?」
私は彼女を鍛えるにあたって、まずはその優れた感覚を磨きつつ、体力の強化をさせることにした。
彼女は森を抜けるまでの間、少しの物音も見逃さないほどに集中して警戒していた。
あれをいつもできるくらいになれば、もし私と離れたとしてもやっていけると思う。
私の風魔法の運用と役割は被ることになるけれど、私は彼女の不足を補うくらいでいい。
私はどんな役割もできると思うから、ミリィに索敵を任せて、私は火力を出せばいいのだ。
「もし魔物にあっちゃって危ない目に遭いそうだったら、必ず大声で私を呼ぶこと。必ず助けに行くから」
「わかった。やってみる」
そうミリィは答えてくれたものの若干不安そうにしていたので、彼女を森に先行させて私を呼ばせ、すぐに反応して駆けつけてみれば、今度は安心できたようで、やる気に満ちた表情を見せてくれた。
その時ついでにハンターズギルドで依頼に出ていた素材の採取も休憩がてらやるように言っておいたので、あとで依頼を達成させて自分で稼げるってことも体験させてあげるつもりだ。
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ミリィと別れた私は昨日ぶりの領主様の屋敷を訪ねていた。
朝屋敷を出る前に、エリザベス様の護衛の任務に就く者で顔合わせをすることになったのっだ。
門番さんに話を通せば、少しの確認の後、すぐになかに通された。
ここに来るのも三回目だし、門番さんも私の容姿を見て少し反応していた。
この容姿は目立つし、当然といえば当然か。
きっと顔パスになる日も近い。
通された部屋で待つこと数分。
呼ばれた私が案内されたのは、屋敷の敷地内にある、開けた運動場のような場所だった。
そこにはすでに、領主様とサリファスさん、それに動きやすそうな鎧を身に着けた5人の男の人がいた。
私の姿に気づいたサリファスさんが早速声をかけてくる。
「マーガレット様、お待ちしておりました。それでは顔合わせと、護衛時の配置や有事への対処の打ち合わせを致しましょう」
「では私から。私はお嬢様の護衛隊長を務めるヴァイツという。よろしく頼む」
一番に名乗ったのは、鎧の五人の中で一番威厳の感じられる人だ。
油断のない表情に、こちらを注意深く見つめる視線。
まさにベテランといった感じのする人だ。
挨拶は最低限。寡黙なタイプかもしれない。
ヴァイツさんに続くようにして、他の五人も名乗った。
他の五人もあまり無駄なことを話すことはなく、簡潔な挨拶だった。
その内の二人ほど、私に胡乱気な視線を向けてきていたけれど。
サリファスさんによれば、この五人は領主様の私兵で、特に優れた実力を持っているのだという。
彼らは学園にいて護衛につくということはできないらしいから、行きと帰りだけ任につくことになる。
だがエリザベス嬢はつい最近攫われたばかりだし、その賊は撲滅したわけではない。
私兵の人数にも限りがあるから、とにかく沢山つける訳にもいかないしで、この人選になったのだろう。
五人の挨拶が終わったので、私も名乗る。
「私はマーガレットといいます。今回は領主様からの依頼でお嬢様の護衛に参加することになりました。よろしくお願いします」
「領主様の依頼で、か。白色種だからといってこれまで優遇されてきたのだろうが、この任務ではそうはいかない。少しでも役に立たないと思ったら即切り捨てるからな」
簡単に挨拶を済ませてぺこりと頭を下げれば、そんな台詞が降ってきた。
顔を上げれば、どうやら先ほど私を胡乱気に見ていた二人のうち、まだ二十代くらいの若い男の方が言ったらしい。
不機嫌そうな顔を隠しもせずに私を睨みつけてきている。
私がここでは大事にされるらしい白色種だから、楽をして生きてきたとでも思っているのだろうか。
まだ七歳だけれど。
ちなみにもう一人は三十くらいの男で、そちらもさっきの男ほどではないにしろ、機嫌が悪そうだ。
ちらとサリファスさんを見れば、何やら領主様と話をしているようで、こちらの様子に気づいていなさそうだ。
「私は私にできることをするのみです」
こういうタイプは何を言ってもねじ曲がって伝わるだけなので、適当に流そう。
「はっ。そんななりで何ができる?どうせろくに戦えないだろう。護衛ってのはな、お嬢様をありとあらゆる危険から守らなきゃいけない。雑用しかできないお子様はお呼びじゃないんだ。大体、お嬢様を連れ帰ってきたって話も疑わしいな。本当は自力で逃げ出してきたお嬢様達と途中であっただけなんじゃないのか?どうなんだ?」
私が言い返さないのに良い気になっているのか、私に対する不信の言葉を連ねる男。
どうにかしてくれと思いながら隊長のヴァイツのほうを見ても、止めてくれる様子はない。
残りの二人も、私を観察するように見ているだけだ。
結局程度の差はあれど、五人とも私を疑っているということだろうか。
そうしている間にも、男は言葉を重ねている。
そして、
「お前、今からでも領主様に依頼を取り消すように言え。お前に足を引っ張られてお嬢様に何かあってからじゃ遅いからな。いや、お前が行かなくても俺が言ってやろう。お嬢様の護衛は俺たちだけで十分だと。学園での護衛も、本来であれば不要な場所だからな。お前がいなくても誰も困らない。むしろ足手まといが消えて助かるくらいだ。そういうことだから、お前帰っていいぞ」
男はそんなことを言ってきた。
彼にそんな権限があるとは思えないし、この依頼は褒美の一部でもあるのだから、取り消されることはまずないだろう。
だが、味方がこんな状態で果たして護衛任務を全うすることができるだろうか。
それに何も知らないくせに適当なことを言っているのにも少し腹が立ってきた。
この状態を解決する一番手っ取り早い方法は、私が力を示すこと。
「わかりました。要は、私が十分に護衛を務められるだけの実力があると示せばいいのでしょう?」
そういってやると、男は私が言い返してきたことが気にくわないのか、さらに表情をゆがめた。
「そうだな。実力があるなら文句は言わない。だがな、それは本当に実力があればの話だ。半端な実力じゃ認められない。せめて俺たちの相手をできるくらいじゃないとな。お前には無理だろうが。分かったらさっさと出ていけ」
私は言い募る男を無視して、サリファスさんに声をかけた。
「お話し中にすみませんサリファスさん。ぶしつけなお願いで申し訳ないのですが、彼らとぜひ手合わせをしてみたいので、どこか場所をお借りしてもよろしいでしょうか」
「そうですな、お互い実力を確認するのも任務の役に立つでしょう。ここは訓練所も兼ねていますから、自由に使っていただいて結構です」
サリファスさんは私の申し出に快く同意し、私と領主様は離れたとこで見させていただきますといって、領主様と共にさっさと行ってしまった。
もしや、これは私が試されているのかとも思ったが、しっかり結果を出せば問題ないだろうから、気にしないことにした。
サリファスさんの許可を得て五人に向きなおれば、五人ともそれぞれ呆気にとられたような顔をしていた。
「場所も確保できましたし、私の実力を確かめていただきたいと思います」
人の話を聞かない奴は、まず話を聞くように大人しくさせるのが一番だ。
やるならば、文句のつけようがないほどに徹底的にやろう。
その方が、後々やりやすいだろう。
変ないちゃもんをつけられても困るし。
「では、どなたからやりますか?」
十九話いかがでしたでしょうか。
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