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旅は道連れ

第十九話です。

短めですが、お楽しみいただければ幸いです。



領主様からの依頼を受け、領主の娘さん改めエリザベス様を隣国にある魔法学院まで護衛し、その後三年間続けて護衛として学園に通うこととなった後。

私は猫耳の少女とともに領主様の屋敷の一室にいた。

今日は泊まらせてもらい、明日にはここを出て旅の準備をして、出発の日に合流する予定だ。


旅に必要なものは揃えてくれるとは言え、個人的に必要なものは自分でそろえなければならない。

領主様はそこにかかる金額についてもお金を出してくれようとしたものの、自分ですでにある程度の金は持っているし、この依頼を受ける受けないにかかわらず必要なものにまで出してもらうのは気が引けたので、辞退した。


旅の用意は問題ないとして、目下の問題は。


「貴女は、これからどうするの?」


そう、目の前のベッドに腰掛ける猫耳の少女だ。

彼女だけは、両親が迎えに来なかった。

いろいろ事情は考えられるけれどそれは置いておいて、彼女はどうしていくつもりなのだろうか。


「……わかんない。今まで孤児院にいたから、孤児院に戻る……と思う。でも、戻りたくない」


彼女はそう言って、ベッドの上で膝を抱えた。

なにか思うことがあるのだろうか、その表情は物憂げだった。


「なんで、戻りたくないの?」


私はゆっくりと聞いた。


「孤児院の人、なんか怖いの。ほかの子供たちには優しいのに、あたしにだけ。子供の皆も、私と一緒にいてくれない。あたしはケモノで、人間じゃないからだって。きっと、孤児院の人もそう思ってる」


そこで彼女は言葉を切るが、まだ何か言いたそうな雰囲気だったので静かに待つ。


「それに、あいつらが言ってたの。あたしは孤児院の人に売られたんだって。獣人は珍しいから高く売れるんだって。だから、戻ってもまた売られるかもしれない」


だから、戻りたくない。そう言って彼女は抱えた膝に顔をうめてしまった。

わざわざ知ろうとは思ってなかったけど、そんなことがあったとは。

どうやら獣人はこの世界ではあまり受け入れられている存在ではないようだ。

おそらく白色種と似たようなものだろう。

だからこそ、私は問う。


「なら、貴女はどうしたいの?」


「……わかんない」


「おいしいものを食べたいとか、この街の外に行きたいとか。やりたいことはない?」


「……おいしいもの、もっと食べたい。外にも、行ってみたい。でも無理」


「どうして?」


「お金ないし。外は危ない」


「お金は稼げばいいんです。外は気を付けていれば危なくないですよ」


「孤児院にいた時仕事したけど、そんなに稼げなかった。一日お手伝いして、その日のパンがかえるくらい。外だって、気を付けてても危ない。もし魔物にあったら、すぐにやられちゃう」


「お仕事ちゃんと選べば、もっともらえますよ。魔物にあってやられてしまうなら魔物をやっつけちゃえばいいんです。魔物をやっつければお金ももらえますよ」


「あたしは魔物倒せないし」


「一人でやらなくてもいいんです。例えば、私と一緒だったら、きっと簡単に倒せてしまいますよ?」


「でも、マーガレットはもうすぐいなくなっちゃうじゃん」


「じゃあ、私と一緒にきませんか?」


これが私の目的。

そう、私は貴女のそのもふもふがほしい!

もちろん彼女がハンターに向いてそうだったのと、さっきは私をかばってくれたり、良い子そうだっていうこともあるけれど。

私がいたずらっぽくそう聞いてみれば、彼女は驚き、俯かせていた顔をがばりとあげた。


「で、でも、あたしは何もできないし」


誘ったら食いつくかと思ったけど、意外としぶといな。


「できるじゃないですか。今日、周りの注意をしてくれたでしょう?」


「それは、あたしの耳がいいからで、あたしはマーガレットみたいに強くないし」


「それが、役に立ったでしょう?今強くなくても、強くなればいいんです」


「……あたし、強くなれるのかな」


「なれますよ、絶対」


昼間見た体力に軽い身のこなし、獣人ゆえの感覚の良さ。

それらすべて、ハンターに必要な素質だ。

もちろん、他にも向いた職はあるかもしれないけれど。


「ね、私と一緒に来る気はありませんか」


「……孤児院には帰りたくないし、行きたいけど、いいの?」


「もちろんです!私はこれからいろんなところを旅するつもりですが、一人では寂しいなと思っていたところでしたから、大歓迎ですよ!」


君限定でね!とは、言葉にはせず内心で叫んでいた。


「でも、足手まといにならない?」


「大丈夫。鍛えますし、危ない時は守ってあげますから」


自信満々に答えてあげれば、


「じゃ、じゃあ、よろしく」


照れくさそうにそう言って手を出してきたので、それを両手で握った。


「はい。こちらこそ、よろしくお願いします。えーっと……」


「ミリィ」


「よろしくお願いします。ミリィちゃん」



こうして私は、この世界での旅にもふもふな彼女改めミリィちゃんを加えたのだった。

第十九話いかがでしたでしょうか。

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