閑話2 勇者組の成長
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元々勇者組は成長効率が異世界人に比べて高かった。故ステータスだけが上がってしまい、それを扱うだけの技量や経験が追いついていなかった。それは仕方ないことではあったが、勇者組のどこか浮ついた雰囲気にも原因はあった。
異世界という慣れない環境。そこでは一般人ではあり得なかった厚遇、他に比べ明白に抜きん出ている力があった。高校生という大人になりきれていない勇者組が、どこか特別感や全能感を覚えてしまうのは避けられなかった。
だからこそ考えることもなく、ただ伸びていく力とそれを賞賛してくれることに酔ってしまったのだ。
が、それも『月見里激怒事件』と勇者組の間で呼ばれる出来事から一変したのだった。
プライドと勘違いを真正面から叩き折られた近藤と取り巻き二人を筆頭に、勇者である明智が勇者組を率いて訓練に身を入れ始めたのだ。
それからはステータスだけではなく、それを扱う技量や経験も確実に積もり始めた。
そして、月夜が迷宮都市を訪れていた頃、王都に残っていた勇者組の面々は新しい段階へと足を踏み入れることになったのだ。
王都から西側に1日歩いたところに、宮廷騎士団が管理する迷宮がある。ここは宮廷騎士団が訓練にも使う迷宮であり、勇者組が以前まで潜っていた迷宮とは現れる魔物とその質が違った。
一同は数グループに分かれて行動する。それぞれのグループには二人ずつ騎士が付いており、やはり今回の護衛騎士で指折りの副団長は有望株である明智のグループに付いた。
「ハァァァァアッ!!」
聖剣が一閃、対する小鬼が数匹薙ぎ払われた。しかしその数は未だに十数匹と健在してとり、さらにはこの一団の長であろう一際ゴブリンが指揮を執っていた。
「晴翔下がって!」
詠唱を紡ぐ魔術師の三春を守る、守護騎士の勝瀬の声が飛んだ。それを合図に明智がタメを作り一瞬で後退すると、三春の詠唱が完成し火属性第四階梯魔術【ブレンネン】が起動した。
【ブレンネン】は炎で対象を燃やす魔術だが、ゴブリン程度ならば余裕を持って殺すことが出来る。今回はその効果範囲を広げて十匹ほどに攻撃をしていた。
その漏れに軽装備に身を包んだ格闘家の桐山が迫り、技術と鍛えられたステータスを存分に発揮した拳打でゴブリン達を屠りきった。
明智達は戦闘を終え、周囲に対する警戒をしてからようやく息をついた。
「今のは良かったな」
「そうだね晴翔」
「うん、魔術も使いやすかったよ」
「俺はいつも通りだ」
話すことが増えたのも月夜が去ってからだ。それまではこんなことをしていなかった。
副団長はそんな様子に満足しながら言った。
「ではもう少し先に進みましょう」
はいっ、と明智達の声が重なった。
***
一方明智達ほどの連携はないものを、明智達をも上回る熱意を以って迷宮に挑んでいたのが、自称月夜の部下である近藤のグループだ。
リーダーであり、耐久力だけならば明智グループの桐山さえも凌ぐ、武闘家の近藤。
音も名もなく影で働く、取り巻き君A。
付与魔術を扱いバッファとして支援する、取り巻き君B。
そして、近藤達に虐められていながらも、あえて自ら近藤達のグループに入る決意をした志村だ。
「ウォォォオラッ!!」
それは心に秘めた原始的な衝動の爆発だ。あらゆるものを破壊したいと欲し、そして傷を負えば負うほどステータスにバフがかかり破壊力をましていく拳に脚。この理性を代償とし自滅すらしかねない技術構成をしているのが、志村だった。
今も返り血と自ら血が混じった赤に体が濡れ、敵のど真ん中で暴れている。千切っては投げ、殴っては砕き、蹴っては吹き飛ばす。
「負けるかぁぁぁあ!!」
志村に対抗するかのように、別に狂戦士でもないのに荒れる振るうのが近藤だった。こちらはやや荒いが武闘家としての枠組みは超えておらず、やはりその気性から来ているものだった。
二つの嵐が敵のヘイトを存分に集めているなか、取り巻き君Aは地道に一体ずつ倒していく。近藤と志村の影響もあるが、その隠密で気が付かれることなく敵に近づいては喉を掻っ切り、確実仕留めていた。
そして、守ってくれる人がいない付加魔術師である取り巻き君Bは、冷静に戦況を見ては嵐の二人にバフを掛け、取り巻き君Aが活動しやすいようにしていた。自らにもバフはかけており、主には倒されないように立ち回るようにしていた。
いじめっ子といじめられっ子。なんともいびつな関係なこのグループは、しかし絶妙なバランスを保っており、一応グループとして成立していた。
今回、この近藤グループを担当に護衛している一人がカレインだった。敵が無残なものとなり戦闘も終えるとカレインは近づいた。
「お疲れ様です皆さま」
「ふぅ、ふぅ……。あ、ありがとうございます」
「なかなか凄い暴れっぷりでしたよシムラ様」
「やめてください、恥ずかしいです……」
理性も戻り、己の所業を振り返った志村は悶えた。未だに慣れておらず、毎度毎度こうなってしまっていた。
「そうだぜ志村! お前ヤベェよ!」
「馴れ馴れしくするなよ近藤。僕は君を許したわけじゃない。君達を超えるのに一緒にいた方がいいからそうしているだけだ」
「わかってるっての……。すまないと思ってんだよ」
「そ、そういうことは迷宮の外でお願いします。まだ余裕もありそうですし経験値稼ぎを続けましょう、ええ」
慌てて仲裁に入るのはもう一人の護衛騎士だ。こうして険悪になるのも毎度のことで、その度にこの若い騎士が止めていた。
そんな光景にカレインもため息を吐かざるをえなかった。
(関係性は知っているので仲良くしろとは言いませんが)
やはりため息を吐く。
それをかき消すように近藤が気合いを入れるために叫んだ。
「うぉぉお! 姉御に会うまでに強くなるぞっ!!」
「同感ですが、黙れ」
***
勇者組はこの二つのグループ以外もそこそこに育っており、平均とすると凡そ二級冒険者に届くか届かないかと言った具合だ。
この成長を続ければ近いうちに戦線へと投入することも可能になる。そうすれば同盟軍の反撃の開始となるだろう。
世界が動くその時が刻一刻と近づいてきた。
お読みいただきありがとうございます。
これで二章を終わりとさせていただき、次週から三章に突入していきます。二章は冒険者編とかしてましたけど、準備編とかの方が本来は正しいかも?
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