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第2話 勇者様の言う事は絶対!

玉座の間の戦慄のすぐ後、大臣や妃達に詰め寄られる。

やっぱりどいつもこいつもご立派なお体。

引っ張られて行った会議室は、言い過ぎでもなく蒸し暑い。

更に(じい)が入れてくれたコーヒーは、熱い上に甘ったるい。


「あーあー解った解った。……つまりは、祖先の言葉を大事にしとるわけだな」


皆の話をザックリまとめるとこうだ。

魔王を倒し平和をもたらした勇者は、この地に国を築いた。

勇者はとても貧乏の出だった事もあり、暖衣飽食を国の第一義に掲げた。

よく善政を施し、下々に至るまで国は分け隔てなく富んでいった。

勇者の後の為政者も、その方針と善政を受け継ぎ、国は豊かさを追求してきた。

王から下々に至るまで皆が暖衣飽食を目指し、現在はまさにその絶頂にあると。


「……つまりこの状態は王宮だけではなく、国民皆がこうだと……?」


野太い声の質問に、太い首で皆が頷く。

思わず頭を抱えてしまう。

国民皆がデブの国……いやそれで良いのか?

いや、これで良いのか? 俺だけがおかしいのか!?


しかしそんな中で、一筋の光明が灯る。


「……確かに、労働現場等では事故やミスの件数が増えておりますが」


ぽろりと漏らす対面の、やはり良い体格の大臣に皆の視線が突き刺さる。

矛先は血迷った王から大臣に移り、比にならない言葉が浴びせられた。

俺は王だからあの程度で済んだのか、と内心胸を撫で下ろす。


「ぁー待て待て。……実際に数字等にも現れておるのなら、方針を変えるのも良いだろう?」


思わず助け舟を出すと、再び矛先がこちらを向く。

先程よりも厳しい、そして暑苦しい視線にたじろぐ。

だが押されてばかりもいられず、反撃にでる。


「礎を築いた勇者様は、実際にどうだったのだ? 暖衣飽食を皆にというのは立派だが……勇者様自身のお姿こそがあるべき姿ではないか?」


会議室がざわめく、どうやら効果があったようだ。

第一義を掲げた勇者、その言葉に皆が賛同し今がある。

ならばその大元を動かせば良い。

実際に事を成した勇者の姿を、新たな目標に据えれば……。


「……こちらが勇者様の肖像画となります。王自身もお知りの通りの物ですが」


太ましい兵士達が、肖像画に白い布を被せて運んできた。

これで皆を説得できるだろう。


「うんうんそうだろう。勇者様のお姿こそが模範としてあるべきだ」


兵士は躊躇(ためら)いがちに、絵から布を取り(あらわ)にする。

そこには凛々しく立派な建国の祖の姿が……。


「……ぅっわ、マジかよ」


見事にふくよかな、満面の笑みの太い人物が描かれていた。

この会議室の誰よりも太い。

誇張表現もあるかもしれないが、しかし現実に忠実に描かれた絵という印象を受けた。

絵を見て引いた俺に、ますます鋭い視線が向けられる。


「王ご自身もよくお知りの事でしょうに……一体何をどうしたのですか?」


そ知らぬ顔でやり過ご、せるわけもない。

一旦誤魔化す為に、コーヒーをぐいっと飲み干す。

胸焼けしそうな甘さだが、逆に覚悟が決まった。

そもそもこちらも引く気はない。

デブの絵をすっぱり忘れて皆に宣言する。


「知った事ではない! 幾らなんでも限度というものがある!! 俺は痩せるぞ!!」

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