第11話:多分秋の扉を前にしていた
午前9時。もっぱらソロツーリング、そしてキャンプをするならソロキャンプが信条の俺だが、時に人の誘いに乗ることもある。それが今日だ。
昔、同じ会社に勤めていた若いヤツから「キャンプツーリングにいきませんか?」という声を掛けられたのは先々週のことだ。8月にバイクを買い、それから楽しく乗っていると思っていたが……今年の空はなかなか、まあまあ、意地が悪かった。彼はここ一カ月、まったくバイクに乗れていなかったらしい。
そこで、俺に声をかけたというのだ。久しぶりにキャンプにいきませんか?加えてバイクでだ。
俺の答えは「俺はソロが信条。だが、行こう。」だ(笑)
誘いに乗ってから時間はいつものように過ぎ、その当日である今日、俺は県道11号線を彼のバイクの後ろをのんびりと走っている。
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彼を先に走らせ、俺は後ろをゆっくりついていく。まだ購入してからそれほど乗れておらず、信号待ちからの出足に多少のギクシャク感を見せることがあっても、なかなか様になっているように見える。
そして、周囲を見ると――
山の中を走る上り勾配もなかなか急な坂。林道の雰囲気ほどではないが木々に囲まれた中を走るのは気持ちがいいものだ。途中の川沿いの道を走る間も涼しさを感じながら気持ちよく走れた。
そして、気持ち……いや、気の早い俺の目の錯覚か、それとも希望的な目でそう見ていたのか。
道から見える木々に、俺はどこか「秋の色」がうっすらと見えるような気がしていた。
十月半ば。気のせいかもしれないし、そうではないかもしれない。
だが、秋と言う季節がとても曖昧で「四季は二季になったのでは?」とも思えるここ数年。それでも秋は、秋の風景は、短くともそこに見ることのできる風景として確実に残っていることには、今はまだ間違いないと感じている。
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キャンプ場に着き、受付のオヤジさんと軽い談笑。そして、テントを張り終わればお楽しみの「乾杯」だ。
ビールとつまみを囲んで、話に花を咲かせ、それを躍らせる。笑いあり、笑いあり、笑いあり。なんだ、笑いしかないじゃないか(笑)
そんな中、ふと俺は彼からこんな話を聞いた。それは、俺からすれば「おいおい、いまだにかよ」と、苦笑いと嘲笑を浮かべてしまうような話だ。
彼とは以前、同じ会社で仕事をしていた。俺はそこを辞めて、一人仕事を始め数年になるが、今でもこの時季くらいになると、俺の話がそこで湧いて出てくるらしい。俺にとっては過去の話だから、元勤めていた会社の今にはそうそう興味はない。だが、聞くところによると、相変わらずでもあり相変わらずでもない、そんなところなようだ。
まあ、それはそれとして。未だに俺の話が湧いて出てくるというのにはほんの少し、ほんの少しだけ俺は思っていた。「おいおい、いまだにかよ」と。
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最初の乾杯の後は、各々好きにしている。彼は向かい側にテントを張り、その向こうにいる。そして俺は、自分のテントの前につまみとウィスキーを置いて、それを飲みながらスマートフォンで電子書籍を読み、ふと息を吐いたときに「会社勤め」をしていた頃の記憶と今について、少しだけ思考をそこに傾けた。
結論、俺は会社という組織から降りた。20代から50代になる少し前まで、会社勤めをしていた。40代が終わる頃、前々から自分が組織の中で働くのに向いていない人間だということに「うすうす」気づいていながら、ダラダラと30年。その「うすうすな気付き」が確信に変わった時、俺は会社を辞めて今の仕事を始めた。
いつも調子がいいわけではない。いつも仕事があって、収入が安定しているわけではないのだが、俺は俺を生きている実感に満足している。俺が仕事を決め、俺の責任で仕事を動かす。それが本来の俺なのだと。
さて、小難しいことを考えるのはここまでだ。
10月にしては強い日差し。それを忘れさせるような心地よい風が共存するこの場所で、ただ快晴の空を見上げる、穏やかな時間。
今はそれを感じているだけでいい。そんな日もたまにはいいじゃないか。
あとがき
ガレージ・ザ・ローカルロードライダーズ:著者の気が向いたら執筆する不定期投稿で連載中――




