1 紅蓮の門の先へ
___痛い、痛い、痛い。
痛みが、全身を侵食して焼いていく。
激痛で、
目が覚めた。
かすんだ視界。
世界が、音を失っている。
自分の呼吸すら、聞こえない。
....だれ、か。
喉が震えるだけ、声が聞こえない。
手を伸ばした。
何も掴めない。空を切るだけ。
__なに、これ。
視界の前で何かが動く。
...自分の腕だ。
皮膚がただれて、溶けて、形が崩れていた。
その周りを黒くて、生温かい血管が這うように広がる。
脈打つ度、体の内側から引き裂かれるような痛み。
___違う。違う。違う。
こんなの現実なわけない。
痛みから逃げれない。
終わらない。
脳が何度も教えてくる。
「痛い。」と、何度も。
視界の端で、何かが動く。
近づいてくる。
人、の形だ。
.....誰かが私の手を取った。
れ....い。
喉が震える。言えてるかなんて分からない。
この温もりが嬉しかった。
醜い姿の私でも側にいてくれる。
嬉しい。
...うれしい。
でも、お願い。
私を見ないで。
今の、私を見ないで。
月明かりだけが、洞窟を照らす。
微かに見える。
ルルの体を這うように広がる。
黒い血管。
それが鼓動する度、うめき声をあげていた。
リツの時はこうじゃなかった。呪いの種類が違うのか...?
「ルル。ルル。.....聞こえる?」
相変わらずのうめき声。返事はない。
......
すぅーーーっ。「ルル!!!」
今出せるだけの大声で叫んだ。
響き声が洞窟内に充満する。
彼女からの返事はなかった。
「何かあっ....」
ゴトッ。
メイナの持っていた木の枝と草が床に撒き散らされる。
「ル、ル...?え、ルルなの?」
メイナがルルに駆け寄って座り込む。
「嘘、嘘だよね?嘘だって言って...どうして、え?私がここを離れた時はこんなんじゃなかった。」
奥歯を噛み締める。
リツを殺させて、ルルまでこんなふうにする。どれだけ俺を苦しめれば、気が済むんだ。
あの、ニーストラ。.....あの時殺せばよかった。
自分のカバンを手繰り寄せる。中に入ってる包帯を取り出した。
「早いうちに、隣国に行く。でも、このままじゃ連れていけない。」
そう言ってメイナに包帯を渡す。
俺は洞窟から出た。
微かな声だが、聞き覚えのある鼻歌が聞こえる。
上から。
リツ....じゃなくて、クロが洞窟上の崖に座っていた。
浮遊して、洞窟の上まで昇る。
「あっレイ。....ルルの調子は?」
クロの横に座った。
「呪いに侵食されてて....状態が悪い。」
「....そっか。」
「ク、.....」
俺が言うより先にクロが言う。
「ニーストラについて聞きたいんだよね?」
クロの方を向いて、頷いた。
「一番は、集落の場所を聞きたいんだろうけど....答えは『分かんない』。だよ。」
「えっ?」
「一度、集落から離れちゃったから今の場所は分かんない。
部外者が来たからもう場所は移動しただろうしね。」
「じゃあルルは?どうなるんだ?今この瞬間も呪いに蝕まれてる。いつ、し....」
クロが俺の目を見つめる。
「レイ。もうそろそろ寝たら?気張ってたら、精神削れちゃうよ。」
横にいるクロの膝に頭が乗る。
でも、まだ___
まぶたが、重く、落ちていく。
まぶたを上げようとしても、意識が途切れていく。
気づいたら、眠りについていた。
体が揺れる。視界もガタガタ揺れる。
___はっ。として、さっきまで寝てたことに気づいた。
今は、クロに背負われて歩いている。
「んー?起きた?レイおはよう。よく寝てたね。」
「降りる。自分で歩ける。」
無理やり、クロの背中から降りた。
少しふらついて、視界が歪む。
メイナがルルを背負って歩いていた。
「変わる。」
「ありがと。」
とはいっても.....もう、目の前に門があるんだが。
50メートルくらいゆうにあるだろう。という大きさの赤い正門。寺などによくあるやつが大きくなったような見た目。そこから覗く街は、段々になって、坂に沿うように軒を連ねている。その建物は瓦屋根。奥に見えるのが、この街の管理者の屋敷。どちらかといえば城だ。ここは和風の建築様式の街なのだ。
いつ見ても圧巻される。何十回と見てきたはずなのに。
「なに...これ」
メイナから感嘆の声がもれる。
先に、走って前に行ってしまった。
追うようにして、少し歩くスピードをあげた。




