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第52話 終わりも告げずに

 学園次元都市トゴサカ中央区。


 トゴサカ中枢とも呼ばれる区画には、たくさんの研究施設や関連施設が建ち並んでいる。

 そこに、不自然にぽっかりとひらけた敷地があった。


 他の場所とは隔絶するように建てられた、次元断層第一研究所。

 ペンタゴンのように施設の壁面がぐるりと一周している。夜だというのに窓の明かりはどこかしこも点いていて、眠らずの研究所とも呼ばれていた。


 魔王ファッションをやめたボクは、研究所の搬入口に駆けていった。


 すでに力は失われたようで、遅くなった足がもどかしい。

 搬入口で、ストレッチャーに寝かしつけられた母さんが運ばれようとしていた。


「母さん!」


 ボクが近寄ろうとすると、十数名の警備員が取り囲んできた。

 分厚いボディアーマーに特殊警棒。隠れてはいるが、銃らしき武器をもった警備員もいる。


 ただの研究所にしては物々しい装備だけれど、今はもう不自然には思わない。

 胸に、炎がたぎっていく。


「――はいはいー! ストップストップ!」


 赤沢先輩が間に入ってきた。


「この子は、その人の息子! だからとーっても心配しているわけ!

 オッケー⁉ それと権限はまだダンキョーにあるからね!」


 赤沢先輩はそう叫ぶと、ボクに落ち着くように視線をやる。

 ボクは深呼吸して、胸の炎を鎮火させた。


「…………大丈夫です。落ち着きました」

「よかったぁ。ここで争う必要はないからねー?」

「わかっています。……母さんは?」

「容体は安定しているよー。

 第一研究所で診てもらえることになったから安心……できないよね」


 警備員はボクへの警戒を解く気配はない。

 特別監視対象として、顔が知れ渡っているようだ。


 ダンキョー相手に暴れたこともすでに伝わっているみたいだな。

 このまま研究所に拉致られるかもと思ったが。


 赤沢先輩が心配しないでと苦笑した。


「鴎外君案件は、まだダンキョー管轄だから無茶はしてこないよー」

「ダンキョー管轄じゃなくなったら?」

「そこはお姉さんのがんばり次第?」


 赤沢先輩はへらりと笑い、そして真面目な表情になった。


「だからね鷗外君。わたしを信じ……ることは、今までの行いからムリめだよね……」

「そですね。ちょっとフォローできないです」

「あ、あははー……。だったら、あの子を信じてあげてよ」


 研究所内につづく扉に、アルマが立っていた。


 いつもと変わりなく、涼しげな表情だ。

 ただ最近は、微妙な感情の変化もわかるようになってきて、母さんを心配しているのが彼女のわずかにかたむいた首からわかる。


 ボクが目を合わせると、アルマはこくんとうなずいた。

 わたしにお任せてください、だ。


「アルマ、任せるよ」

「…………はい。お任せください、みそらさま」


 そう言って、アルマは深々と頭を下げた。


 いつものように礼儀正しく、そうしただけだと思う。

 なのにどうしてだか、お別れを告げるようにも見えて、ボクは歩み寄ろうとした。


 その前に母さんがストレッチャーで運ばれていき、通路奥で職員が騒がしくする。アルマも一緒に奥へと向かって行った。


 そうして、部外者立ち入り禁止といわんばかりに、警備員が扉を閉めた。

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