31話 フイバ国
スギノルリ、今度こそ獣族の国を目指します!
創造国を出て、西へ向かった。
大陸の西側、獣族が住む領域だ。
特に境目に壁や柵をしているみたいではないらしい。
中国にある、有名な長い壁を想像してたんだけどな。
創造国を出た時、よく見えるように大きな看板があったくらいだ。
ここから西が獣族、東が人族、みたいな。
高速道路を走っていたら見る、「〇〇県入りました!」的な?
それぞれの国に入る時には確認があるけど、国境を越えるだけは自由らしい。
獣族の境界を越えると、次第に大陸の違いを感じた。
「あっつ……」
そう、暑いのだ。
人族の東側は、ゴツゴツした岩が転がっているサバンナのような場所や、草が生い茂る草原のような場所が多かった。
けれどここ西側は、いわゆる、砂漠だ。
一歩一歩ただ歩くだけでも足が取られて体力を消耗するし、日陰がないからとにかく暑い。
夜はめちゃくちゃ寒くなるし!
シルバーウルフの毛皮、買ってて良かった…
転移門を使ってすぐに行ってもよかったのだが、せっかくだから歩いて向かいたいと言った私が無謀だった…
今からでも転移で行こうかな…
ラピスは相変わらず肩に乗ってるしな…
私は空を見た。
雲一つない快晴。
太陽の光はジリジリと肌を焼くし、乾燥した空気が喉を刺激する。
サラサラサラサラサラ……
急に日陰に覆われた。
「え?」
「ルリ!後ろだ!」
ラピスの声で振り向くと、そこには魔物がいた。
「いつのまに!?」
「砂の中に隠れていたのだ」
―障壁―
長い舌での攻撃を防ぐ。
巨人トカゲ?
哺乳類系以外の魔物を見るのは初めてだ。
高さは3メートルくらいだけど、尻尾の先までいれると5メートルはありそうだな。
―風刃―
ガギン!!
「おぉ!?」
外皮が硬いのだ。
風刃ではダメージを与えられない。
雷槍ならいけるかな…。あ、そうだ!
「―毒牙―どくが―!!」
針のようなナイフのような、短く尖った牙が突き刺さる。
キシャァァァァァァァアーーーー!!!!
体内に毒をくらった魔物は仰向けに倒れ、口から舌と泡を出したまま、しばらくして動かなくなった。
「いけた、かな?」
超級魔法でまだ使ってなかったものだ。
毒の魔法。
なんとなく、怖くて今まで使ってなかったんだけど。
外皮が硬い魔物には有効、と。
でもコレ、食べれるのかな?
売るときに気をつけよう。
改めて見ると、トカゲっていうより、恐竜に近いような…
「ほぉ、たいしたものだ」
獣人、いや、亜人だ。
耳と尻尾がある。
「あの硬い砂蜴をここまで綺麗な状態で倒すとはな」
騎乗したまま話しているので、逆光で顔がよく見えない。
「売るつもりがあるなら店を訪ねてくれ」
名刺のような物を渡され、去っていった。
馬ではない。
ラクダのように足が長く、鹿のような角がある生き物だった。
私もその方向へと向かった。
「…やっと着いたー……」
汗だくになりながらも、転移を使うことなく、無事たどり着いた。
砂漠地帯を渡るには装備を揃える必要があるかもね…
あの後も、何体かの魔物に遭遇した。
初めて見るものばかりで、獣族との違いがわからないから、毎回眼を見て確認するのが少し手間だったけど…
キリン、ワニ、巨大なサソリなど、どれも3.4メートルはする大きな魔物ばかりだった。
人族の大陸より、格段に強い魔物達。
クロムが言っていた通りだ。
創造国の城壁よりは低いが、それでも、あの長城を彷彿とさせる造りの国だった。
「ここは獣族国首都、フイバ国。何をしに?」
対応してくれた亜人が淡々と話す。
今までの関所とは雰囲気が違う。
警戒され、歓迎もされていないのがわかる。
「観光、はダメですか?」
「A級冒険者の魔法使いね…」
冒険者証と、肩のラピスを見ている。
「紹介状はない?」
紹介状…
「あ!コレでもいいですか?」
私は名刺を見せた。
「コレは…!」
「この人に魔物を売る為に来ました」
「入国許可する」
無事、フイバ国へと入れた。
とっさに名刺見せたけど、少し驚いていたような。
名の知れた人なのかな。
お店はどこだろう…
私は周りを見渡した。
人族の姿は見えない。
エルフやドワーフはいる。
こうしてみると、獣族は多種多様だ。
獣人の姿に見える者のほとんどが亜人。
その亜人も、耳や尻尾、羽など姿が異なる。
そういえば、獣人の姿になれるのは、歳を重ねた者か、力のある者だけってラピスが言ってたな。
獣本来の姿をしている者も多く、それでも、歩き、会話している者や、乗り物として使われている者といた。
眼が赤い者はいない。
今まで倒してきた動物姿の魔物とは違う。
意思を持ち、生きている者だった。
転移門の横にやっと、人族であろう魔法使い達を見て、少しほっとした。
「お店の場所わからないな。獣族に急に話しかけても大丈夫かな…。転移門の魔法使いに聞くべき?」
立ち止まり考えていると、
「スギノルリさん?我が主人がお呼びです」
商人じゃない。
冒険者?戦士?屈強な亜人達に囲まれた。
このパターン、なんか覚えがあるんだけど…
スギノルリ、連行されます!




