32話 獣族の王
スギノルリ、連行されます!
亜人の後を歩く。
象に犀、鷹かな?
一般人ではない。
確実に精鋭部隊だろう。
そして、一番前を歩いているのはおそらく獣人だ。
人族より肩幅が広くて背も高いし、爪が鋭く伸びている。
髪が白い…
何の獣人だろう。
行き先も予想が付いてるし、大人しく着いて行こう。
「よく来たな」
玉座にいたのは、白髪の獣人。
髭も眉毛も真っ白でフサフサだ。
薄い灰色の眼をしていた。
巨人ほどではないが、座っていてもわかるくらいに大きい。
顔にある大きな傷が印象的だった。
「…ラピス」
私は小声で肩を見た。
ため息をつくように、ラピスが飛び上がり人族の姿になった。
「何か用か?」
「ふっ、それはこちらの聞くところだ」
他族に入る度にこのやり取りあるわけ?
一体何者なのよラピス。
「ほぉ、その娘か」
ラピスとの会話で、獣族の王が私を見る。
「獣族王ブランだ」
「ルリです」
猫のような鋭い瞳でじっと見られる。
まるで獲物を狙うかのように…
「ふっ、そう構えるな。取って食ったりはせぬ」
巨人の王は、大きい故の威圧感というか、声量も凄かったし、ただただ圧倒されてたけど。
獣族王は、物静かに話してはいるんだけど、相手を見定める厳しい眼に、時折笑った時に見える尖った牙が、その崇高さを示していた。
「巨人王が、西が騒がしいと言っていたぞ」
「相変わらず耳がいいな」
「確かに少し困ったことになっていてな」
「これも何かの縁だ、頼まれてくれんか」
「断る」
「話くらい聞いたらどうだ」
不機嫌そうに話を終わらせようとするラピスを困ったように見た獣族王が、視線を私の方にずらした。
「代わりと言っては何だが、出来る限りの礼はしよう」
「……とりあえず、お話を聞くだけなら…」
隣からの視線が痛い。
獣族王の話では、弟が王位を狙って謀反を起こそうとしているとのことだった。
よくある話にも聞こえるけど…
弟、ビアンは大人しい性格だった。
兄弟仲も良く、寿命が長い獣族にとって、王位を継ぐのは王の子供達だ。
本人もそれを理解し、何百年も兄を支えてきた。
それが今になって突然、謀反?
「何か、思い当たることはないんですか?」
「……」
獣族王は黙ったままだ。
「話にならん。ただの兄弟喧嘩に我を巻き込むな」
ラピスが私の手を引く。
「行くぞ、ルリ」
「ビアンがいるのは西の泉だ」
獣族王の言葉に、ラピスが足を止めた。
「……なんだと?」
「あそこに行けるのは其方だけだ」
「…………」
ラピスも獣族王も黙ったまま見つめ合い、何かを察したラピスが、険しい表情になった。
離された手には力が入り、もう片方の手で顔を覆った。
「ルリ」
「はい」
「目的地までは遠い。準備をしっかりして行け。店まで案内させよう」
獣族王が手を挙げると、私達をここまで連れてきた獣人と数名が頭を下げた。
「息子のヴァイスだ」
白髪だし、獣人だし、そうかなとは思っていたけど、やはりそうだったか。
髭はないけど、確かに気品ある佇まいをしている。
さっきは後ろを歩いていたからよく見えなかったけど、こうして見ると、かなり整った顔をしている。
肩に付くくらいのサラサラとした白い髪に眉毛、灰色の鋭い眼。
生成色のような、薄いベージュ色の肌。
その色には似つかわしくない隆々の筋肉。
「ルリ?」
ラピスに呼ばれハッとする。
いかんいかん!
凄く見入ってしまった!
だって惚れ惚れするような外見なんだもん!
「あの様な者がいいのか?」
「はい!?」
突然のラピスの言葉に驚く。
「そんなんじゃないよ」
笑って答える私に対して、ラピスは少し不機嫌だった。
「あの、一つよろしいでしょうか」
「なんだ?」
私は獣族王に訪ねた。
「お礼をくださるとのことでしたが、お願いを聞いてもらうのでもいいでしょうか?」
「出来ることなら」
「ありがとうございます」
深く頭を下げて、その場を出た。
スギノルリ、獣族王からの依頼です!




