13話 ラピス
スギノルリ、ついに超級魔法ゲットです!
「あなたの名前は?」
「ない。青竜と呼ばれている」
「青竜…セイ…」
「お前の好きに呼べばよい」
でも青竜っていうより…
「ラピス!じゃぁラピスね!」
「ラピス?」
竜が顔をしかめている。
「あなたが、ラピスラズリの宝石のように綺麗な青だから!」
「……そんな宝石は知らぬ」
「えー、ないのか。でも本当、すっごく綺麗なんだよ」
「ふん」
「ちなみに、ラピスラズリは瑠璃石とも言われてるの」
「ルリ?」
「そう、瑠璃、私の名前!」
「そうか」
興味がないのか、名前が気に入らなかったのか、竜はうずくまり目を閉じてしまった。
「あ、そうだ。回復!」
「!」
私は、自分とラピスに回復の魔法をかけた。
「私もヘトヘトだよ。今日は宿のベッドで眠りたい」
「一緒に帰ろう」
ラピスの鼻のあたりを撫でた。
「んー、でもこれじゃ宿屋入れないよね。小さくなれたりする?」
「ふんっ」
鼻息と共に、それまでその場にあった大きい塊が、手のひらの上に収まった。
「可愛い〜!」
それは、青い鳥になっていた。
鳥と言っても、竜にもみえるような…
でもこの大きさじゃ、誰も竜なんて思わないだろう。
「いいじゃんいいじゃん!これでずっと一緒にいられるね!」
「主人の元ならどこへでもお供するさ」
「ん〜、それは違う」
「何が?」
「私は、ラピスと主従関係にありたいんじゃない」
「私は、ラピスと仲間になりたい!」
「……仲間、だと?」
「そう!」
「我は竜でお前は人だぞ?」
「関係ないよ。こうやって会話出来てるし」
「私ね、恥ずかしいことに、仲間いないんだよね。職業柄、パーティーに入ってもいいことなさそうだし」
「だから、ラピスに出会えて、とっても嬉しいの!」
私はラピスの頬にキスをした。
「な、何をする!」
バサバサと翼を動かして空へ舞い上がった。
「これからよろしくねー!」
降りてきたラピスは、私の肩の上に乗った。
あ〜可愛い!
「そうだ、一つお願いいい?」
元の竜の姿に戻ったラピスの背中に乗り、空を飛んだ。
風魔法で飛ぶのとは全然違う。
スピードも、高さも。
2つの満月が、ラピスの鱗をキラキラと輝かせていた。
私は[転移]で街へと戻った。
「あぁ〜お腹すいた〜、けど眠い〜、今日はもう寝よう…」
宿屋に着いてすぐ、ベッドに倒れ込んだ。
ラピスが枕元で丸くなる。
「あったかい…」
ラピスの温もりを感じながら、私は眠りについた。
1人じゃないことが、こんなにうれしいこととは思わなかった。
「おはようございます〜」
「おはようじゃねーだろー」
毎度のことながら、ジロッソさんが呆れている。
「まーた何日も帰って来ないと思って、やっと帰ってきたと思ったら夕方まで寝てんだからなー」
「ははは、すみません…」
「お?どうした、その鳥?」
肩に乗っているラピスを指差した。
「ふふ、私の大切な仲間です」
「へぇ〜、そりゃよかったなぁ!」
「私以外の人の前ではしゃべらないでね」
小声で話す私に対して、ラピスは何も言わず机へと飛んだ。
ご飯を食べる私の横で、ラピスもジロッソさんが用意してくれたものを大人しく食べていた。
「美味しい?」
ジロッソさんやキュノさんのことも大好きだけど、2人は一緒に旅をするわけじゃないし。
こうして、いつも誰かが側にいてくれるっていいなぁ。
話し相手にもなってくれるしね。
私がそんな幸せな時間を感じているのも、長くは続かなかった。
「勇者様が竜を退治されたぞー!!」
「ごほっ!」
びっくりしてスープでむせた。
「なんだって?」
「迷いの森の先の山にいる竜を、勇者様が退治したんだってさ!」
「さすが勇者様だ!」
「祈り子様だ!」
「この国は安泰だ!」
なんでそうなる…
迷いの森で迷いまくってた勇者に何が出来るってゆーのさ。
ザワザワッ!!
残った料理を食べていると、急に店内が騒がしくなった。
「おぉ〜!!!!」
「英雄のお出ましだ!」
「勇者様だ〜!!」
なぜここに!?
私はフードを被った。
手で顔を隠しながら、勇者の方を見た。
大勢の人に囲まれている。
「はっはっはっはっ!」
自意識過剰な笑い方…
「たまにはこーゆー店での飯も食べてみたくてな!」
勇者であることを自慢して褒め立てられたいだけでしょう?
関わりたくない。
早く部屋に戻ろう。
カランッ
慌てすぎたか、動揺しているのか、スプーンを床に落としてしまった。
コツコツコツ…
足音が近付いてくる。
「これはこれは、『役立たずの魔法使い』じゃぁないか」
背中が熱くなる。
これほどまで、人を不快にさせれるのか。
フードをとり、立ち上がり勇者を見た。
防具屋の店頭に飾られていたような、金色の鎧に、立派な剣、傷一つ付いていない盾。
「へぇ〜」
勇者が私の顔から足元までをジロジロ見て、ニヤリと笑った。
「お前、こう見るとけっこういい女じゃないか」
「は?」
「初級魔法くらいは使えるようになったのか?」
「……」
奥歯を噛み締める。
「俺専属の、回復係にしてやってもいーぞ」
耳元でささやくその声に、一気に鳥肌と怒りが込み上げた。
「――っ!!」
扇に手をかけたその時、
後ろから肩を掴まれ、グイッと引き寄せられた。
ジロッソさんの手じゃない。
背の高い、見たことのない男性だった。
「なんだ貴様は!」
あの勇者が見上げて怒鳴っている。
短髪…じゃないな、腰まである長い髪を一つにくくっていた。
濃い青色の髪に、青い瞳…
「悪いけど、コイツは俺の連れなんだ」
その声!
「ラピス!?」
驚く私に、ラピスは頬にキスをして、
「こんな奴にかまってないで、早く上に行って寝よう」
ラピスに肩を抱かれ、上の宿屋への階段を上がっていく。
後ろから、勇者の怒鳴り声が聞こえていた。
けれど今の私は、それ以上に混乱していた。
「どーゆーこと?」
「人族の姿をしているだけだ。鳥に姿を変えるのと一緒さ」
「……なるほど」
「もう寝ろ。疲れただろ。あんな無能気にするな。俺が側にいる」
私に触れる手が、温かかった。
そう、私はこの温もりを知ってる。
昨日、一緒に眠ったラピスだ。
そう思うと安心して、私は眠った。
スギノルリ、人の仲間が出来ました?




