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12話 竜


 スギノルリ、迷いの森脱出です!


 

 森を抜けた所で下へ降りた。


 そのまま先へ進もうとしたが、思いっきり頭をぶつけて跳ね返された。


 「…え?」


 立ち上がり、手を伸ばすと、何かが手先に触れた。


 「壁…?」


 目には見えない透明な壁に阻まれていた。



 ―風刃!―


 跳ね返る事なく、風刃は壁の向こうの草を刈った。


 ―土爪!―


 同じく、壁の向こう側の地面がえぐれた。


 「へー…」


 私は武器屋で買った剣を初めて抜いた。



 キイィィィーーーン!!



 手が痺れる。


 剣では透明な壁に傷一つ付けれていなかった。



 私は再び掌を壁に当てた。


 そして、掌に魔力を集中させた。


 

 スルッ



 「抜けたっ!」


 掌が通ると、そのまま身体ごとすり抜けた。


 物理攻撃は効かず、魔力のみ通す壁…


 魔力の少ない人間に対しての壁か…

 


 

 「高い山だなー」


 抜けた先にあった山を見上げた。


 富士山とか、日本でよく見かける緑の山ではない。


 写真やテレビでなら見たことがある、海外の険しい山だ。


 「マッター〇ルン?だったかな」


 美しい木々だけではない。


 山肌が見え、ゴツゴツとした大きな岩が転がっている。


 


 「……いるなー」



 探索を使わなくても感じる。 


 いる。


 確実に。



 私は、その場所へと足を進めた。



 森には魔物がたくさんいたが、この山からは巨大な気配一つしか感じられない。



 着いた先は、山の中腹、小さな湖があった。


 見たことのない花が咲いている。



 「綺麗…。薬草とかになるのかな?」



 光が届かず、一日中薄暗く不気味だった森とは対照的に、太陽の光を浴びてキラキラと輝く水と花たち。



 そして、もう一つ。



 「……竜だ…」


 静かに横たわる青い竜がいた。


 青っていうか、もっと濃い青、紺色、藍色…



 竜は眠っているようだった。


 私は、静かに近付いた。



 近くで見ると、その大きさに驚いた。


 この世界の魔物は、元の世界の動物に似たカタチをしている。


 弱く小さいウサギ、大きくて強いウシ。


 元の世界では、地上で一番大きな生き物はゾウだった。

 

 恐竜はもっと大きかったみたいだけど、この世界でも魔物として出てきたりするのかな。



 そして、今目の前にいる竜は、ゾウの比ではない。

 

 バスよりもはるかに大きい。


 飛行機…?

 


 寝ていてこれなら、起き上がるとどれだけなのか。



 しかし不思議と、恐怖はなかった。


 それよりも、鱗一枚一枚が、まるで天然石のようで、色が混じり合い美しく輝いていたその姿に心奪われたからだ。



 「綺麗…」


 思わず触れたくなったその時、私の顔の横で竜の目が開いた。


 「誰だ?」


 起き上がり、視線を交わす。



 目も、本当に宝石のようだ。



 「私はスギノルリ。あなたに会いに来ました」


 視線がそらせない。



 「よくここまで来れたものだな」

 


 口から白い煙のようなものが出ている。


 火?火をはくの?



 「私は、超級魔導書が欲しいんです」


 「ほぉ?」


 「持ってるんですよね?」


 「それは…、自分で確かめるのだな!」


 言葉を言い終わると同時に、炎が私に向けられた。


 やっぱり!火吹いたよ!竜だよ!



 「石柱―せきちゅう―」



 地面から、2メートルを超える石の柱が何本も現れ、壁となって炎を防いでくれた。


 「待って!話を!」


 私の話なんて聞いてない。


 竜は炎を出し続けた。


 仕方ない。



 「樹鞭―じゅむち―」


 魔法陣から木の根と蔓が伸びて、竜の口を縛り付けた。


 「んんっ!!」


 よし、これでもう火は出せない。


 と、思ったのも一瞬だった。


 青い光が竜の口を塞ぐ蔓全体に広がり、そのまま全てを消した。


 「超級魔法、欲しいのだろう?」


 「!!」



 ―風刃!!―


 無詠唱の扇で攻撃する。


 突然のことで驚いたのか、避けきれなかった竜は鱗を何枚か落とした。


 「お前、なかなか面白いな」


 やばい、怒らせた。


 口は笑ってるけど目が笑ってないやつ!



 ―風刃!!―


 私は風刃を連発した。


 無数の刃が、竜を襲う。



 「障壁」


 竜の前に現れた、透明で少し青みがかった壁。


 「……バリアー、ですか」


 「数百年ぶりの客だ。我をもっと楽しませてくれ」


 ―火球!水弾!―


 「氷弓!!―ひょうや―」


 氷で出来た矢を、同じく氷で出来た弓と弦でひいて放つ。


 

 だめだ。


 何をやってもあの障壁に吸い込まれてダメージを与えることが出来ない。



 「もうないのか?では我から行くぞ」



 「雷槍―らいそう―」



 

 ドスンッ!!




 やばっ。


 雷でできた槍。


 その一瞬の速さに、防御が間に合わなかった。


 雷槍が右肩を貫通した。



 「〜〜〜〜!!!!」



 痛すぎて声が出ない。


 ……―回復!―


 傷は治るが、どうしよう、勝てる気がしない。



 上級魔法と超級魔法の差がありすぎる。


 あんなの、どうしろってのよ。



 「どうした、もう終わりか?」



 竜の前に10個以上はある魔法陣が並び、その全てから雷槍の先が覗いていた。




 「石柱!石柱!石柱!石柱!石柱!!」


 私は石柱を何重にも重ねて、その中に閉じこもった。



 「いいだろう、どこまで耐えれるかな」



 無数の雷槍が向かってくる。


 次々と石柱を破壊しているが、その度に増築してなんとか防いでいる。



 たまに風刃や水弾を飛ばして気を散らしてみるが、向こうの障壁が破れることはない。


 これは持久戦かも…





 どれくらい経った?


 1時間?10時間?何日?


 相変わらず、雷槍が終わることなく放たれ、たまに炎も向かってくる。


 なんとか石柱が破られることなくもっているが、一体いつまで続くのか…

 


 「なかなかやるな」


 さすがの竜も、少し疲れが見えていた。



 「我の魔力が尽きるのが先か、お前の回復薬が尽きるのが先かの勝負だ!」



 「それなら私の勝ちよ!私の魔力は無限大♾だから!」



 「……なんだと?」



 竜の攻撃が止まった。


 「魔力が無限大♾だと?」


 大きな青い瞳が、こちらをじっと見ている。


 「ふ、ふはははははは!!」


 「!?」



 突然、竜が笑い出した。


 「我の負けだ。好きにするがよい」


 「え?」

 

 「我の魔力はもう底をついておる」

 


 大きく広げていた翼を閉じ、座り込み顔を下げ目を閉じた。


 障壁もない。



 「……私は、超級魔導書が欲しいだけなんです」


 ゆっくりと目が開く。


 「我を倒さぬと?」



 「超級魔導書を渡してくれれば、それ以上は何も望みません」


 「……」



 「超級魔導書を渡すことは出来ぬ」


 「どうして?」


 「魔導書は我の中にある。手に入れたくば我を倒して手に入れろ」



 「……他に方法はないんですか?」



 初めより少し弱ったその青い瞳が、私をじっと見た。



 「一つだけある」


 「どんな!?」



 「主従関係を結ぶのだ」


 「主従関係…?」


 ゲームとかで見る、モンスターを仲間にする的なやつ?


 「我をお前の従魔とすれば、我の力を使えるようになる」


 「じゃそれで!!」


 「!?」


 私の即答に、竜が驚いていた。


 「よく考えよ。我を倒せば手に入るのだぞ?さっきまでお前に炎を吹いていた我をわざわざ従魔にするというのか?」


 「うん!」


 「……」



 「初めてだから」


 「?」


 「今まで倒してきた魔物は皆、言葉を話さない、動物に近い感覚だった」


 「だから、倒す、ことも、納得してたけど」


 「あなたは違う。言葉を話してる。こうやって、目を見て会話してる」


 「そんな人を、私は倒すことなんて出来ない」



 

 「名は何と言ったか」


 「えっ?」


 「お前の名前だ」


 「スギノルリ、です」


 「よいのだな?」


 「よい!」


 私は笑顔で答えた。



 「全く、面白い娘だ」


 そう言って竜は、私の額に自分の額を当てた。




 ブゥゥゥゥーン!!


 触れた額と、右手の甲に紋章が浮かび上がった。


 


 スギノルリ、ついに超級魔法ゲットです!



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