常識は最強也
年が明けた三学期。馨と過ごした初詣の余韻に
浸っていた柴乃だったが、隣のクラスで
姫野が一人の女の子とけんかしているのをみかけ・・・?
「お見苦しいところをお見せしてしまい、申し訳ありませんでした。ご無礼は承知のうえ、どうかお許しください」
むぎちゃんをも思わせるような、しっかりとした口調で謝る彼女を見ながらつられて私も頭を下げてしまう。
始業式が終わってすぐ、彼女はまた現れた。
姫野の前にではなく、私の前に。
ちょうど話を一緒にしていたあんちゃんはもちろん、興味本意で残っていた隼人君もいる。
「い、いいんだけど……あなた、誰?」
「申し遅れました。私は寺濱早紀、直樹はうちの兄なんです」
て、寺濱君の妹さん!?
いやいや、普通お姉さんじゃないの!? こんなに性格違う?
そもそも妹がいるなんて、聞いたことないし!
「早紀ちゃん、だっけ……どうして朝、姫野ちゃんと?」
「……実はある日を境に、兄が全然家に帰ってこなくなっちゃったんです」
ぎくっ。
「母からは寮に入ったと聞いていたので、疑問は持ちませんでした。でも寮の友達に聞いたら、そんな人いないって言われて……正月に聞きただしたら、あの人のお世話係をやっているっていうんですよ! アルバイトでも何でもないのに!」
ぎくぎくっ。
「渕脇姫野先輩って言ったら、男子全員を下僕扱いしてるそうじゃないですか! そんな人にうちの兄を、預けられると思いますか!?」
ごもっともだ、と思った。
しかしそういうことは妹にくらい言っておいてもと思うのは、私だけだろうか。
これは姫野だけでなく、私にも言いたいことだったんだろうけど……
「柴乃先輩は、あの方のお姉さんだそうですね! お兄ちゃんを返していただけるよう、説得してもらえませんか?」
「えっ、いや、でも……寺濱君自らが選択したことだし……」
「そんな! お兄ちゃんが自分でやっただなんて、どこに証拠があるんですか!」
「それはぁ……ないけど……」
「やめなよ、早紀ちゃん。怒るのは二人にじゃなくて、彼の方が先なんじゃない?」
すっと間に入ってきた隼人君が、教室のドアの方を指さす。
そこにはいつからいたのか、寺濱君と馨君がいた。
寺濱君は浅く会釈すると、教室に入ってきた。
「皆さん、妹がすみません……早紀、ほら帰るよ」
「帰らない。お兄ちゃんが戻ってくるっていうまで、私帰らないから!」
「そんなこと言ったら、お母さんが……」
「どうしてよりにもよってあの先輩なの!? お兄ちゃん、下僕って言われてるんだよ!?」
私達がいるのにもかかわらず、早紀ちゃんはなおも叫び続けた。
「お兄ちゃんのことを道具同然に思ってる先輩なんて、私は信用できない! これがお兄ちゃんの本当に望んでいたことなの? それに……!」
「早紀。それ以上彼女のことを悪く言うなら、許さないよ。たとえ、妹でもね」
ぴしゃっとその場が静まりかえる。
凛とした、いつにもなく強気な声に私達は目を疑った。
なよなよしていた彼の姿とは想像もつかない、男の人としての顔……
「僕は彼女のことをずっと見ていたんだ。辛そうな時も、さびしそうな時も。だから僕は、少しでもその気持ちをやわらげたらいいなって思っただけ。下僕でも何でもいい、姫野さんのそばにいたい。姫野さんのことが、大好きだから」
それは誰もが聞き惚れるような、まっすぐとした告白だった。
正直私も、拍手をしたくなってしまうような。
何よ、こいつ。やればできるんじゃない。
こんなにもまっすぐに、姫野を愛してくれる人なんて今まで誰も……
「ま、まったく帰ってこない直樹にも問題があるってことで。週に何回かは、家のことでもしたらどうだ? お兄ちゃん大好きな妹のためにさ」
「うん……今度から気を付けるよ。今日は一緒に帰ろうか、早紀」
「大好きな……って、私は別にそんなつもりじゃ……! まぁ、今回だけは見逃してあげる……」
「やっぱブラコンじゃん」
「浅沼先輩は黙っててください!」
早紀ちゃんを中心に、男子軍がからかいをいれている。
寺濱君はいつものように、苦笑いを浮かべているだけだった。
「よかったね、柴乃。大事にならなくて」
「まったく。姫野が絡むと、ほんっと余計なことしか起こらないんだから」
ため息交じりにつぶやきながらも、ふっと笑みがこぼれてしまう自分がいる。
新年早々起きた騒動は、こうして無事幕を閉じることになった。
この時姫野が、見ていたことも知らずに……
(つづく!)
新事実、直樹には妹がいる。
これにもちゃんと背景があり、
実は直樹も意外とお兄ちゃんっぽくて、
家事だってできます。
(馨のせいで薄くなりがちですが笑)
そんなお兄ちゃんが今は…ということで
こうなった始末ですが
妹ちゃんが言ってほしいこと
全部言ってくれたので
個人的にすっきりしてます
次回! 二月といえばの行事がついに到来!




