プロローグ
そこは辺り一面の草原地帯だった。
その真ん中に一本の大樹があった。
リルシリスはその大樹の根元に頭を乗せて、顔の上に帽子を被せて眠っていた。
木漏れ日の暖かな光と、微風の優しい愛撫を全身に受けて、リルシリスは大樹と同化した様に深く眠っていた。
やがて彼女は眠りから覚めて、身体を起こした。
寝起きの彼女は視界が霞んでいたので目を擦った。
視界が晴れると辺りを見回した。
見渡すばかりの大草原だった。
彼女は見落とさなかった。
遠くから一人の若者が、大樹に向かって歩いて来るのを。
リルシリスは大樹の枝に飛びついて、そこによじ登る。
少し上の枝に移ってそこに座る。
少し待ち構えていると、若者がリルシリスの真下まで歩いて来た。
若者は大樹の根元に座り込み、鞄の中から水筒を取り出して蓋を開けて飲もうとしたが、中身は空だった。
それを上から見ていたリルシリスは、枝の上で腹を抱えて大笑いした。
若者「なんだお前!」
リルシリス「お前こそなんだ!私はリルシリス。此処は私の秘密基地だぞ!」
若者「秘密基地?」
リルシリス「お前、名前はなんて言うんだ?」
若者「ヤーン」
リルシリス「良し!ヤーン、ここまで登って来い!」
ヤーン「そ、そんなところ迄登れるか!」
リルシリス「なに?お前木登りも出来ないのか!?情け無い奴!」
ヤーン「子供の時は登れたぞ!」
リルシリス「じゃあもっと子供になったのか」
ヤーン「何言ってんだ俺は十七だぞ、お前よりお兄さんだ!」
リルシリス「残念、私は十八!お前の方がずっと子供だ!」
ヤーン「なんだとお前、降りて来い!素手で勝負だ!」
リルシリス「女を殴るのか?最低な奴だ!」
ヤーン「じゃあどうしろって言うんだ!」
リルシリス「いい物やるから大人しくしてろ」
ヤーン「何だ?いい物って」
そう言うとリルシリスは鞄の中から水筒を取り出した。
リルシリス「受け取れ!」
リルシリスは水筒をヤーンの方へ投げた。
ヤーンはそれを受け取った。
ヤーン「やった!」
ヤーンは水筒の水を飲んだ。
ヤーン「おう、悪いな」
草原に一際大きな風が吹いて、周りの草がなびく音が心地良かった。
二人はしばらく静かに草原を眺めていた。




