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プレゼントを貰った島崎さんは泣いていた。なぜ、泣いているのか謎だった。けれど、島崎さんの発言でやっと分かった。
「ありがとう。結城。私の誕生日覚えてくれたんだね」
「まぁ、そのくらいは。日頃お世話になっているからね」
「おおー、かっこいい〜オタクくん」
「意外とやるじゃん」
「いまさら関係ないだろう!」
島崎さんは小さく笑うと、早速ヘアピンを髪につけた。
「どうかな?似合っている?」
「さすが!優奈めっちゃ似合っているよ!」
「より、可愛くなったよ!ねぇそう思うよね!」
「そうだね……可愛くなったと思うよ……」
「ありがとう。これ大事にするね……」
そう言って島崎さんはヘアピンにそっと触れた。
「いや、そんな大げさなものじゃないし……」
「でも、結城が選んでくれたものだから」
そう言われると、なんだか妙に照れくさい。俺は視線を逸らしながら頭をかいた。
「よし!じゃあ今日の放課後ケーキを食べに行こう!」
「えっ?ケーキ?」
「誕生日なんだから、当たり前でしょ。それにオタクくん今日暇でしょ?」
「まぁ……そうだけど」
同じバイト先の原田さんが、俺のシフト休みまで把握しているからこその発言だ。せっかくのバイト休みで午後からフリーだと思ったのに……まぁ、仕方がない。
こうして、俺たちは原田さん達が事前に予約していた人気カフェへ向かった。平日ということもあり店内はあまり混んでなかった。
「優奈、お誕生日おめでとう!」
席につくなり、大きなホールケーキがやってきた。
どうやら、この店は事前予約でホールケーキを作ってくれるらしい。
みんなでケーキを取り分けて食べる。さすが人気店の店だけあって、ショートケーキは絶品だった。特にイチゴは、今まで食べてきた中でも上位に入るほど甘い。
島崎さんはフォークを手に取る前に、髪を耳にかけた。そのとき俺がプレゼントしたヘアピンがきらりと光った。
それだけで、なんとなく報われた気がした。
「もう付けてくれているんだね」
「うん……せっかくだから」
少し恥ずかしそうに答える島崎さん。
「ほんとよく似合っているなー」
「やっぱり俺の目に狂いはなかったぜ」
「小林さん!原田さん!茶化さないでよ!」
「ごめんごめん」
そんなやり取りに、島崎さんはくすっと笑い、ケーキを一口食べた。
「……美味しい」
「それは良かった」
「予約した甲斐あったね!」
なんてことのない会話。特別な出来事もない。ただ、こうして三人で座っている時間が、なんだか妙に心地いい。昔の自分からは考えられなかったことだ。本当に、人生何があるかわからないもんだ。
「みんな今日はありがとう。お陰で一生思い出に残る誕生日になったよ」
そう言って、島崎さんはまたケーキを口に運ぶ。
その表情を見て、俺たちも自然と笑っていた。




