6 休日のある日
――休日のある日――
「じゃあ行ってくる」
「いってらっしゃい!おにぃ」
俺の妹、白金 夏木に見送られながら、俺はある所に向かう。
それは近所にあるハンバーガーショップ。
俺はそこでアルバイトをしている。
最初は部活でも入ろうかと考えた時期もあったが、学校がバイトを認めている事を入学当初に知った俺は、社会勉強の一環として、バイトを始めたのだ。
ーーハンバーガーショップにてーー
「お疲れ様です。天野店長」
「お、来たか白金」
ハンバーガーショップの事務所を開けてすぐ。
パソコン作業をしているのは一人の女性。
それはこの店の店長天野 柚木 さんだ。
普段からクールで美しい人。
そして、27歳と言う若さで、店長と言う職についた凄い人だ。
それにただ凄い人だけではなく、正社員から俺みたいなアルバイト社員にも慕われる人物。
まさに上司の鏡と言ってもいいかも知れない。
知れないけど……
「白金、こっちへ」
「あのー店長。やめてもらいます?……」
「あぁ悪い。だけど今、ものすごく大変な状況なんだ。だから白金が来てくれてうれしいんだ。許せ」
「はぁ……」
クールな顔をしてる癖に店長は、頭を撫でたり、ときには無防備な人には「ぼっとするなよ」と耳打ちをしたりするほど、ある意味心臓にわるいスキンシップを図ることがある。
俺は今、天野店長に頭を撫でられているが
こう……もう少し……マシな対応をして欲しい……
思春期を迎えている俺にとってはとても心臓に悪い。
――ハンバーガーショップ店内にて――
店内に入った俺は、店長が頭を撫でて来た、気持ちが、なんとなく分かったような気がした。
なぜなら、今日は休日と言うこともありお客が沢山来て、みんなも忙しそうだったからだ。
「よし、今日は頑張るぞ!」
俺は自分の定位置について接客を始める。
「こんにちは!いらっしゃいませ!」
「お次でお待ちのお客様!」
この仕事は大変だ。
俺は、コミュニケーションが苦手な方だから、上手くお客様に伝わらない時もあるし、時には失敗をし、やめたい時もある。
けどこの仕事はやりがいを感じる。
例えば、お客さんに「ありがとう」「また今度も来るね」なんて嬉しそうに言われると「また頑張ろう」と言う気持ちになる。
だからこの仕事は不思議とやめられない。
――ピーク時を過ぎた午後――
お客さんもそれほどいなくなったそんな時だった。
俺と一緒に接客をしていたアルバイトの子に話掛けられた。
「あ、あの結城先輩。ちょっと良いですか?」
「どうしたの?」
彼女の名前は、後藤 小春さん。
最近は入ってきた新人の子で、俺と同じ高校1年生。
性格は、おとなしめな性格をしている。
けれど、そのおとなしめな性格を克服するためにこのバイトを始めたそうだ。
「さきほどはフォローありがとうございました」
多分、後藤さんが言っているのは、忙しい時間、後藤さんを助けたことだろう。
「あぁ、別にいいよ」
まぁ、俺も新人だった頃は、先輩に助けてもらった経験があるから当然のことだ。
「そ、それでなんですけど……じ、実は、先輩にお礼をしたくて……」
「いや、いいよ別に」
恥ずかしそうに「お礼がしたい」と言った後藤さん。
その律儀な姿勢とその気持ちはとても嬉しいことだが、そこまで大したことはしてない。
「だ、だけど、私ここに来てから、先輩に助けてもらいっぱなしで」
「別に、大丈夫。その代わり今度、他の誰かや、後藤さんの次に入ってきた新人さんを助けてあげてね」
「は、はい……」
こうやって、人は成長していく。
そして、周りからも信頼されていく。
ちょっとかっこつけすぎたかな?
おしまい
※バイト中、白金は同じ学校の生徒に気付かれないため、眼鏡を外し姿を変えています。
噂だと……イケメンがいるハンバーガーショップとかで女性に人気があるとか……
天野店長のスキンシップは、少しでも従業員と仲良くなれたらという思いから始まったらしい。
読んでくれてありがとうございます!
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