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――休日――
「じゃあ行ってくる」
「いってらっしゃい、お兄!」
妹の夏木に見送られながら、俺はアルバイト先へ向かう。
高校に入学して少し経った頃。
俺は部活ではなくアルバイトを選んだ。
理由は単純。
少しでも人と話すことに慣れたかったからだ。
……まあ、慣れたかと言われると微妙だけど。
◇
「お疲れ様です」
「お、白金。来たか」
事務所に入ると、天野店長が顔を上げた。
天野柚木店長。
二十五歳という若さでこの店舗を任されている凄い人だ。
仕事もできるし面倒見もいい。
アルバイトからの信頼も厚い。
ただ——
「白金、助かった」
ぽん。
頭に手が乗る。
「店長」
「ん?」
「撫でるのやめてもらっていいですか」
「嫌だ」
「即答ですか」
相変わらず距離感がおかしい。
本人曰く、
『親しみやすい店長を目指してる』
らしい。
正直、効果があるのかは分からない。
でも。
みんな店長を慕っているから、多分あるんだろう。
◇
休日ということもあって店内は大忙しだった。
「いらっしゃいませ!」
「こちらでお会計お願いします!」
次から次へと入る注文。
最初の頃は接客なんて絶対無理だと思っていた。
人と話すのが苦手だから。
緊張もするし失敗もする。
それでも続けられているのは——
「ありがとう」
そんな一言を貰えるからだ。
単純だけど。
悪くない。
◇
ピークが落ち着いた午後。
「あ、あの……結城先輩」
声をかけてきたのは後藤小春さんだった。
最近入ったばかりの新人。
俺と同じ一年生だ。
「どうしたの?」
「さっきはありがとうございました」
どうやら忙しい時間帯にフォローした件らしい。
「ああ、気にしなくていいよ」
「でも……」
律儀な人だなと思う。
俺も昔は先輩に助けてもらった。
だから今度は自分がやる番なだけだ。
「その代わり」
「はい?」
「後藤さんも、後で入ってくる新人さんを助けてあげて」
「……はい!」
少し嬉しそうに頷く。
その時。
「そういえば白金」
後ろから店長の声が飛んできた。
「来週から新人入るから」
「新人ですか?」
「ああ」
店長が意味深に笑う。
「高校生の女の子」
「へぇ」
俺は軽く返事をした。
新人なんて珍しい話じゃない。
だから、この時は何も思わなかった。
まさか。
その新人が——
俺の学校の知り合いだなんて。
思ってもいなかった。
※バイト中、白金は同じ学校の生徒に気付かれないため、眼鏡を外し姿を変えています。
噂だと……イケメンがいるハンバーガーショップとかで女性に人気があるとか……
天野店長のスキンシップは、少しでも従業員と仲良くなれたらという思いから始まったらしい。
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