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ある日のこと
ついに、この日がきた。
俺達の学校は、掃除当番と言って、放課後、決められた2人の生徒が教室の掃除をする事となっている。
そして、今日は俺と小林さんが掃除当番をする日。
どうして小林さんとやる羽目になっているかと言うと、基本、内のクラスは隣同士でやるのがルールであるからだ。
けど……
「あ、あの小林さん……今日は掃除当番……」
「あっごめん。私、用事があるからあんた、一人でやってー」
そう言って小林さんは、島崎さんと原田さんを連れて楽しそうに教室を後にしてしまった。
絶対に用事があるなんて、嘘だと分かっているが、島崎さんに「嘘だ!」なんて言える訳がなく、俺は一人で掃除をすることとなった。
「はぁ……今日も一人で掃除か……」
小林さんが掃除をさぼるのは、これが初めてではない。
もう、何回目か分からないほど、常習犯だ。
だから、小林さんが居なくても別に何とも思わない。
だけど掃除をやると言うのはあまり気が進まない。
どうして、他人が汚したところなどを、自分が綺麗にしなければならないのか分からない。
俺は渋々掃除する。
今、この教室には俺しかいない。
普段は賑やかな教室も、俺だけになると寂しくなるものだ。
そんな中、いつもは気づかない汚れに俺は気づいた。
俺はそこを重点的に掃除をする。
そして、掃除をしているうちに、俺は気づいた。
「掃除をすると言うのは実に不思議なものだ」と
最初は、掃除に対して、やる気なんて微塵もなかったのに、いざ掃除をし、こう言う汚れを見つけてしまうと、無意識にそこを掃除してしまい、またそういう汚れを見つけてしまえば、また掃除してしまう。そして、ついつい、やめられなくなり、気づけばあっという間に時間も過ぎてしまうことに、掃除は不思議だと思ってしまう。
「ふぅ~、だいぶ頑張ったな……」
気付けば16時30分を回ろうとしていた。
掃除を始めてからかれこれ、1時間は経過する。
まさか、ここまで掃除をしてしまうとは思わなかった。
だけど、掃除を頑張ってよかった。
なぜなら、教室全体を見渡せば、教室床から生徒の机がピカピカになっている。
ここまでやった自分を誉めてやりたい。
けど、まだ綺麗に出来るのでは?
これで十分に教室を綺麗にしたが、まだ少し汚れが気になる。
そう思った俺は掃除をまた続けた。
そしてこれこれ、数十分過ぎようとした頃。
教室の出入口の扉が開いた。
「あんた、まだ掃除しているの馬鹿じゃないの」
その声がした方を見ると、そこには原田さんがいた。
「ど、どうしたの原田さん……」
「忘れ物をとりに来ただけ」
そう言った原田さんはせっかく掃除し、綺麗にしたばかりの床を無慈悲にも容赦なく歩く。
「あっ、そこは……」
「なに?」
「いや、なんでも……」
そう言う自分だが、せっかく綺麗にした床を踏まれると悲しくなる。
それに時間をかけて掃除をしたところも無駄になる。
けど、原田さんに言う勇気はない……
結局、俺は「また、拭き直せばいいや……」と自分に言い聞かせながら、他のところを掃除するのであった。
原田さんは忘れ物を見つけて、教室から出ようとする。
「じぁあな。また明日も私達があんたを可愛がってあげるから休むなよ」
教室の出入口から原田さんはそう言った。
可愛がってあげる……か……
言葉はとても可愛いげがあるが、俺にとっての「可愛いがる」イコール、こき使われるである。
はぁ……明日もこいつらにこき使われるのか……
そう考えると、この日の、この時間が過ぎないで欲しいと思う。
すると、原田さんがわざとらしく、咳払いをした。
そしてこう言葉を言う。
「そ、それとだな……」
原田さんが恥ずかしいそうに何か言っている。
けど、ぼそぼそと独り言のように呟いているようで聞き取れない。
「ご、ごめん原田さん。よく、聞き取れないけど……なにか用かな?」
原田さんはリンゴのように顔を真っ赤にした。
「あーもう!別に何でもないし!じゃあな!」
俺は原田さんになにか、悪いことでもしたのだろうか?
原田さんはなぜか不機嫌そうだった。
結局、原田さんが何を言いたかったのか良く分からないままで、原田さんはいなくなった。
けれど……
「まぁ、いいか……」
原田さんが何を言ったのか俺は興味ない。
なぜなら、原田さんのことだから、ろくなことではないはずだ。
そう俺は思い込んだからだ。
俺は掃除を続けた。
そのお陰で、教室はピカピカ。
本当に自分は良くやったと誉めてやりたい。
そう思った放課後の掃除だった。
けど、次の日。
教室は無惨にも、汚くなっているのであった。
結局、俺のしたことは何一つ報われなかった。
読んでくれてありがとうございます!
次回もよろしくお願いいたします!
原田さんが、ぼそぼそと言ったシーン。
実は、「教室、綺麗にしてくれてありがとう・・・・・・」と白金に対して感謝していたのです!
まぁ、本人は聞き取れなかったですが・・・・・・