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知らぬ間にギャル達の様子が変わっていたのですが、俺はまだ気づいていません。  作者: プリンアラモード


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期末テストも終わり、ついに夏休みを迎えた。


「おにぃ、バイト頑張ってね!」


朝から癒やされる笑顔とともに、夏木が手作り弁当を差し出してくれた。


「ありがとう、夏木」

「どういたしまして、おにぃ」


俺はいつものように夏木に見送られ、バイト先へ向かった。


夏休みの後半に入るまでは、ほぼ毎日のようにシフトが入っている。


それだけではない。


学校から出された夏休みの課題も、かなりの量がある。


バイトと課題。


どちらか一方に偏らないよう、しっかり両立しなければならない。


なかなかハードな夏休みになりそうだ。


それでも、朝早くから俺のために弁当まで作ってくれた夏木を見ていると、弱音を吐いてはいられない。


よし、頑張ろう!


そう意気込みながら自転車を漕ぐ。


夏の日差しに照らされること、十分。


ようやくバイト先へ到着した俺は、自転車を駐輪場に停めて店内へ入った。


「おはよう、白金」


「お、おはようございます、店長」


店に入ってすぐ、床にモップをかけている天野店長と出くわした。


いきなり声をかけられたため、少し驚いてしまった。


だが、ちょうどいい。


シフトが始まるまでは、まだ少し時間がある。


店に入る前、従業員用の駐輪場には俺の自転車しかなく、駐車場にも店長のものらしい青いスポーツカーしか停まっていなかった。


だから、先に来ているのは店長だけだと思っていた。


これは、店長にいいところを見せる絶好の機会なのではないか?


ここで頼りになるところを見せれば、店長からの評価も上がる。


信頼されれば、今後も優先してシフトを入れてもらえるかもしれない。


そうなれば、給料も増えるはずだ。


「店長、何か手伝うことはありませんか?」


「ない」


即答だった。


天野店長は俺を見ることなく、黙々とモップを動かしている。


いや、そんなはずはない。


開店前で、しかも今は店長しかいないのだ。


何か一つくらい、俺にもできる仕事があるはずだ。


それに、このままでは俺のアピールチャンスが消えてしまう。


「店長、俺、何でもします! だから何でも言ってください!」


「なら、休憩室で休んでいろ」


「は、はぁ……」


休むことの何がアピールになるのだろうか。


それに、店長が働いているのに、俺だけ休憩室へ行くというのも気が引ける。


俺がその場から動けずにいると、天野店長が小さくため息をついた。


「はぁ……休むのが嫌なら、向こうへ行ってみろ」


店長が、お手洗いのある方を指差す。


すると、ちょうどそのタイミングで、バケツを持った神崎先輩が男子トイレから出てきた。


どうやら、俺たちの会話が聞こえていたらしい。


「悪いな、白金。お前の出番はもうないぞ」


神崎先輩はニヤニヤしながら続ける。


「あっ、まだ隣の女子トイレが残ってるかもしれないぞ。よかったな、白金〜」


「残念。あいにく、こっちも終わったわよ」


そう言いながら女子トイレから出てきた葵先輩が、神崎先輩を冷たい目で見た。


「白金を女子トイレに入れようとしないの」


「冗談だよ、冗談」


「白金」


天野店長に呼ばれ、俺は店長の方を向く。


「見てのとおり、お前のすることは完全になくなった。休憩室で二人と休んでいろ」


「……分かりました」


こうして、俺のアピールチャンスは始まる前に消えてしまった。


それにしても、俺より早く店へ来ている人がいたとは……。


なんだか、少しだけ悔しい。


◇


開店までの時間、俺たちは休憩室で待機することになった。


神崎先輩はスマホをいじり、葵先輩はストローをくわえながら、退屈そうに飲み物を飲んでいる。


ちなみに俺は、夏休みの課題を少しでも進めようとしているところだ。


特に会話もないまま、五分、十分と時間が過ぎていく。


「あっ、そうだ」


突然、何かを思い出したように葵先輩が声を上げた。


「ねぇねぇ、白金君。結局あのあと、どうしたの?」


葵先輩は机に頬杖をつき、面白そうに俺を見る。


「さあさあ、お姉さんに聞かせてみなさ〜い」


おそらく、以前相談した末永さんの件についてだろう。


葵先輩には相談に乗ってもらった。


そのため、俺に黙秘権はない……多分。


俺はシャープペンを机に置き、あのあとどうしたのかを話すことにした。


「結局、末永さんと一日出かける話は断りました」


「え〜、断ったんだぁ。まあ、白金君らしいけど」


葵先輩は少し残念そうに言った。


「ただ、あれだけ頑張ったご褒美は、別の形で返したいと思って……今度、うちで手料理をご馳走することにしました」


「ふ〜ん。女の子を家に呼んで、手料理まで振る舞うんだ」


葵先輩の口元に、楽しそうな笑みが浮かぶ。


「白金君、それって一緒に出かけるより大胆じゃない?」


「どうしてそうなるんですか。ただ料理を食べてもらうだけですよ」


「一日、ひとつ屋根の下で過ごすんでしょ〜?」


「食事をするだけです。そこまで長い時間ではありません」


変な意味も、下心もない。


ただ料理を振る舞って、末永さんに喜んでもらうだけだ。


すると、それまでスマホをいじっていた神崎先輩が勢いよく顔を上げた。


「おい、白金」


「はい?」


「お前、今、女の子を自分の家に呼ぶって言ったか?」


神崎先輩が険しい表情でこちらへ詰め寄ってくる。


「はい。そうですけど……」


「お前はいいよな! 家に呼べるくらい女子に人気があってよ!」


「いや、別に人気があるわけでは……」


たまたま、こういうことになっただけだ。


「俺には、家に来てくれる女子なんて一人もいないのに!」


「それ、胸を張って言うことじゃないでしょ」


葵先輩が呆れたように言う。


「うるさい! 葵には俺の気持ちなんて分からない!」


「分かりたくもないけど」


二人のやり取りを眺めていると、休憩室の扉が開いた。


「お前たち、そろそろ開店だ。準備を始めろ」


天野店長が俺たちを呼びに来たことで、休憩時間は終わった。


◇


「よし、夏休み初日のバイト、頑張るぞ!」


「おう。張り切りすぎてミスするなよ」


一緒に接客を担当する神崎先輩から軽く注意され、俺の夏休み最初の勤務が始まった。


開店直後は客も少なく、店内には比較的ゆっくりとした時間が流れていた。


普段との違いといえば、夏休みに入った学生や、母親と一緒に来店する小学生が多いことくらいだ。


しかし、昼どきが近づくにつれて徐々に客足が増え、店内も忙しくなっていった。


注文を受け、商品を渡し、空いた時間に店内を整える。


昼の混雑が一段落した午後一時過ぎ、俺は一時間の休憩をもらった。


◇


休憩室へ戻った俺は、夏木が作ってくれた弁当を机の上に置いた。


蓋を開けると、彩りよく詰められたおかずが目に入る。


やっぱり、自慢の妹が作ってくれた弁当だけあって美味しそうだ。


いや〜、出来のいい妹を持って本当によかった。


そう思いながら弁当を味わっていると、休憩室の扉が開いた。


入ってきた人物は俺を見つけると、真っすぐこちらへ歩いてくる。


「お疲れさま、白金君。ここ、座ってもいいかな?」


葵先輩が俺の向かいにある席を指差す。


できれば一人で、夏木の弁当をじっくり味わいたい。


だが、向かいの席は空いている。


断る理由はなかった。


「もちろんです。どうぞ」


「ありがとう、白金君」


葵先輩は俺の向かいに座り、自分の弁当を机の上へ広げた。


「いただきます」


そう言って、葵先輩も弁当を食べ始める。


「それ、白金君が作ったの?」


「いえ、妹が作ってくれました」


「へぇ〜、白金君に妹がいるんだ」


葵先輩は興味深そうに俺の弁当を見る。


「朝からお弁当を作ってくれるなんて、白金君、妹ちゃんに愛されてるね〜」


「はい。自慢の妹です」


「ふふっ。即答なんだ」


当然だ。


夏木以上に出来のいい妹など、そう簡単にいるはずがない。


葵先輩は小さく笑ったあと、俺の弁当に入っている卵焼きを指差した。


「ねぇ、白金君。その卵焼き、私のと一つ交換しない?」


「えっ、これですか?」


正直に言えば、夏木が俺のために作ってくれた卵焼きは、誰にも渡したくない。


しかし、交換なら葵先輩の卵焼きも食べられる。


それに、先輩には普段から世話になっている。


少し迷った末、俺は弁当を葵先輩の方へ差し出した。


「……一つだけですよ」


「やった。ありがとう、白金君」


葵先輩は嬉しそうに俺の弁当から卵焼きを取り、そのまま口へ運んだ。


「ん〜、美味しい!」


「本当ですか?」


「うん。甘さもちょうどいいし、すごく美味しいよ」


自分が褒められたわけではない。


それでも、夏木の料理を美味しいと言ってもらえると、まるで自分のことのように嬉しくなる。


「そうですか。よかったです」


「じゃあ、交換だから私のもね」


葵先輩が自分の弁当から卵焼きをつまむ。


そのまま俺の弁当へ入れてくれるのかと思った次の瞬間、卵焼きが俺の口元へ差し出された。


「はい、あーん」


「え?」


突然のことに、俺は反射的に口を開けてしまった。


その瞬間、葵先輩がつまんでいた卵焼きが口の中へ入ってくる。


「どう? 私のも美味しい?」


俺は卵焼きを飲み込み、素直にうなずいた。


「はい、美味しいです。……でも、葵先輩」


「ん?」


「その箸、さっきから先輩が使っていたものですよね?」


葵先輩は手に持っている箸へ視線を落とした。


そして、一瞬だけ動きを止める。


「あ〜、もしかして間接キスって言いたいの?」


「もしかしなくても、そうなりませんか?」


「ふふっ。白金君って、意外とそういうの気にするんだね〜」


葵先輩が楽しそうに笑う。


「可愛いところあるじゃん」


「からかわないでください……」


「はいはい、ごめんね〜」


どうやら、葵先輩はまったく気にしていないらしい。


変に意識してしまった俺の方が、なんだか恥ずかしくなってきた。


「だけど、これくらいで慌ててたら、まだまだお子様だね〜?」


「葵先輩に言われると、なんだか余計に悔しいです」


「ふふっ。だって私は、白金君より人生経験が長いお姉さんですから〜」


葵先輩は余裕そうな笑みを浮かべ、再び弁当を食べ始めた。


しかし、なぜかそのあとしばらく、葵先輩が俺と目を合わせることはなかった。


まあ、気のせいだろう。


こうして、葵先輩との昼休みは過ぎていった。


◇


休憩を終えた俺は、午後の仕事へ戻った。


午前中とは違い、午後は徐々に店内が混み始めた。


特に午後五時から七時頃までは、帰宅途中の学生や会社員が次々と来店し、息をつく暇もないほど忙しかった。


注文を受け、商品を渡し、空いたトレーを片づける。


それを何度も繰り返しているうちに、ようやく勤務終了の時間を迎えた。


帰りの十分は、朝よりもずっと長く感じた。


「ただいま……」


家へ帰り、玄関で靴を脱いだところで、一気に身体の力が抜けた。


その場に座り込み、壁へ背中を預ける。


少しだけ休もう。


そう思って目を閉じたあとの記憶はなかった。


「おにぃ! 大丈夫? しっかりして!」


夏木に肩を揺すられ、俺はゆっくりと目を開けた。


「……夏木?」


「もう、びっくりしたよ。こんなところで寝てるんだもん」


どうやら俺は、十五分ほど眠っていたらしい。


「本当に大丈夫? あまり無茶しちゃ駄目だよ」


夏木が心配そうに俺の顔をのぞき込む。


「大丈夫だよ、夏木。今日は久しぶりの一日勤務だったから、少し疲れただけ」


そうだ。


まだ夏休み初日で、この生活に慣れていないだけだ。


そのうち、バイトと課題を両立する生活にも慣れるはずだ。


その後、夕食と風呂を済ませた俺は、眠気をこらえながら夏休みの課題を進めた。


時計が午前零時を回る少し前。


そろそろ寝ようと思ったとき、机の上に置いていたスマホが光った。


画面を確認すると、末永さんからメッセージが届いていた。


『今度の約束、楽しみにしてるね!』


その短い文章を見て、俺は今度作る料理について考える。


末永さんは、何を作ったら喜んでくれるだろうか。


『俺も楽しみにしてる。苦手な食べ物があったら教えて』


そう返信してから、俺はベッドへ横になった。


バイトと課題。


それから、末永さんとの約束。


どうやら今年の夏休みは、思っていた以上に忙しくなりそうだ。

読んでくれてありがとうございます!

次回もよろしくお願いします!

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