24
その日の夜のこと
俺はある夢をみた。
それは昔の思い出を再現したかのようなリアルな夢。
そして、そこには幼馴染の恵理と、中学に入学すると同時に別れてしまった――が出てきた。
「おにぃ今日の朝食だよ!」
「……」
「おにぃ?」
心配そうに俺をみる夏木の顔が映る。
「あっ、ごめん夏木」
朝食を受け取った俺は、朝食を食べながらーーの事を考えた。
ーーは元気なのだろうか……
これは中学卒業後の話である。
別れは突然だった。
中学卒業後、俺と恵理、そしてーーはいつも通っていた通学路を一緒に帰っていた時だった。
ーーは突然、昔の頃を思い出さない?!と提案し、俺達は、--の意見に賛成する形で、公園へと寄った。
そして、この公園で楽しかったことなど、沢山話ながら遊んだ。
――時間はあっという間にすぎ夕暮れ――
そろそろ帰ろとした時だった。
――は「ちょっといいかな?……」と俺達を公園のベンチに集めた。
「恵理、そして結城。二人に言わなくちゃいけないことがあるの……」
声のトーンや、この場の雰囲気からして良くない知らせだと俺たちはすぐに気づいた。
「実はね、今日で二人とはお別れなの……本当は少し前から決まっていたことだったんだけど……ほら、二人共、受験とかで忙しかったでしょ?!だから……」
と突然の別れの告白を言うーー。
その突然すぎる告白に俺は、何も言えなかった。
勿論、俺の隣にいる恵理も……
と恵理を見る俺だが、恵理は唇を噛み、何か押し寄せてくるものを堪えている。
そして、恵理はこう言うのであった。
「どうして今になってそんなことを言うのよ!……」
恵理は――を睨む。
そこからは、良くない空気が漂う。
「だ、だからそれは二人の事を思って!……」
――は恵理に説明する。
「ふざけないで……ふざけないでよ!?」
恵理は――に近づく。
そんな恵理に対して、俺は恵理の前に立った。
「なによ結城!退きなさいよ!」
「恵理、――にも事情があったんだ。だからやめてくれ」
と恵理にそう言うが、本当は恵理と一緒の気持ちだ。もっと早く教えて欲しかった。
「なによ!結城は!それで良かったの!?――がもっと早く転校すると言ってくれれば、もっといい形でお別れできた!それなのに!どうして今になって……」
恵理からは涙が溢れ出す。
恵理の気持ちは俺にも痛いほどわかる。
――がもっと早く、俺たちに教えてくれればこんなお別れの仕方だって、なかったのかも知れない……けれど、――にだって俺達の事を思って、今の時期になってしまった。だから、仕方がない。
それに
「恵理、まだ時間はある……」
なにせ、今日お別れなんてことはないだろう。
だから、今からでも間に合う。
今から、俺の家にでも招待して、お別れ会でも開けばいい。壮大なお別れ会はできないが、ちょっとしたお別れ会でも……
「ごめん……結城。私にはもう……」
――は泣きながら俺に事情を説明した。
どうやら、ーーはこの後すぐに、引っ越してしまうらしい。そして、本当は、俺達にも黙って出て行くつもりだった……
と――に聞かされる、俺達あった。
「ごめんね、結城……」
そう言い、--はたくさん涙をこぼす。
その姿に俺は何も言えない。
なんて声を掛けて良いか分からない。
内心、ーーに対して、「なら!もっと早く言えよ!」と責めたい気持ちがある。
だけど、--の姿を見ていると言えない。
きっと、ーー今まで、苦しかったのだろう。
だから、責められない。
かと言ってーーを慰めようと思ったが、なんて言えばいいのか分からなかった。
そんな中、恵理がこう言った。
「ごめん、結城。私帰る」
と言った恵理は歩き出す。
ーーとはこれで、お別れだと言うのにあまりにも薄情すぎる。
別れ方は最悪かも知れないが、最後くらいは、しっかりと――にお別れを言うべきだ。
そう思った俺は恵理の肩を掴み、恵理を止めた。
「ちょっと待ってよ!恵理!これで、--と会うのが最後だぞ!」
「離して別に関係ないでしょ?……」
「関係なくないだろ!」
「うるさい!あの人はもう、友達でもなんでもないから……」
そう言った恵理は、まるで俺達から逃げるかのように走り、俺達の前から居なくなってしまった。
――帰り道にて――
「ごめん――」
「ううん、悪いのは全部私だから……」
ーーと最後の下校。
これで、--と帰るのも最後。
正直、――との最後の下校だと実感が湧かない。
だけど、――とはもう……
だが、特に会話もなくただただ、別れの時間が過ぎていくばかり。
そして、あっという間にーーとお別れの時間が来てしまった。
「じゃあね結城。恵理にも宜しく伝えておいて」
「うん……」
ーーと最後の別れなのに、あまりにも素っ気なく別れる俺達。
もう、--とは会えないかも知れないと言うのにこれでいいのだろうか……
そう思うが、なにも思いつかない。
幼馴染の恵理を連れ戻せず、おまけに、俺はこの重い空気に、「さよなら」の一言も言えず、ただただ、――に流されてしまった。
情けない
情けない
最後くらいなにか!
と思いながらも、俺は何も言えず、自分の家へと向かっていた
「結城!」
ーーが俺の名前を呼ぶ。
その声に振り返ると……
「大好き結城」
――の柔らかい唇と俺の唇が密着し、この時間が数秒続いた。
だが、俺は唐突のことで、なにも出来なかった。
「ごめんねこんな別れ方になっちゃって……だけど、最後に結城に思いを伝えられて良かった」
と言ったーーはなぜか、満足そうな顔をしていた。
これが、--の最後の顔だった。
「先輩、聞いてますか?」
原田さんが俺を睨みつけている顔が視界に映り、俺は現実へと戻る。
「あっ、うん。聞いている」
「そうですか?絶対に聞いてないですよね?大体今日の先輩変ですよ」
と原田さんが説教を始めている最中、また俺はーーの事を考えた。
ーーは今何をしているのだろうか
ーーは今でも元気なのだろうか?
ーーは転校した先では、うまくやれているのだろうか?
そんなマイナスな事も考えたが、きっと--の事だ。
きっとうまくやれているはずだ。
もしかしたら、ーーにも彼氏がいてもいい頃かも知れない。
「もぅ!先輩!聞いてください!」
と原田さんが顔を膨らませる顔が映り俺は現実へと戻った。
そして、その後、俺は、原田さんに説教を受けた。
自分自身よく気づいていなかったが、どうやら今日の俺は変だったらしい。
そんな俺に対して、原田さんはもの凄く心配し、そのことに対して、原田さんは怒った。
俺は申し訳ないと反省し、原田さんに謝り続けるのであった。
ある場所にてーー
ある人物は小さく囁くような声で言う。
「二人とも元気かな……」
――は雲一つない空を見上げるのであった。
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