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原田さんに教育をお願いしてから2日経った、放課後早速、教育が始まった。
「さぁ、始めるよ!言っておくけど手加減はしないからね」
「はい!お願いします原田先生」
俺は今、原田さんの家に来ている。
それも原田さんの部屋にいる。
理由は、期末テストに向けての猛勉強。
1泊2日食事付きの合宿となっている。
決してこれは遊びに来たわけではない。
期末テストを乗り越えるための勉強合宿である。
「違う!ここはこうやって解く!あんた授業しっかり聞いていた?!」
鬼教師と化した原田さんは物凄く怖い。
多分、今までの中で一番と言ってもいいだろう。
時には、心にぐさりとくる言葉が出てきて、メンタル力がないときつい。
「ここも違う!やり直し!いいもう一度だけ、しっかり教えるから覚えなさい!」
そう言った原田さんは俺の横に座り、丁寧に教えてくれる。
そこからは、見たことのないほどの真剣さが伝わる。
普段は俺の事を馬鹿にしている原田さんがこうも真剣に勉強を教えてくれている……
「ちょっと聞いている!?」
原田さんが睨みつける。
その表情にびびり、俺は「うん」と頷いてしまった。
本当は聞きそびれた部分があるが、後でさりげなく聞くことにしよう。
こうして、俺は原田さんの厳しい教育の元、猛勉強をしたのであった。
そして、気づけば、午後20時。
「はいそこまで!一旦休憩!」
と言う原田さんの号令でひとまず、休憩と言うなの夕食タイム。
原田さんは食事を持ってくると言い、自分の部屋を後にした。
だから、今、原田さんの部屋には誰も居ない。
ただただ、座っているだけも退屈だった俺は、辺りを見回した。
意外にも原田さんの部屋はとても綺麗で落ち着いた空間。
俺のイメージでは、壁紙にアイドルとかのポスターとか貼られたいたり、部屋の中も香水臭くてとか、彼氏と使う予定の○○があったりとかする部屋だと思っていた。
すると、原田さんの机から、なにかの紙が落ちてきた。
俺は、髪を拾い原田さんの机
「な、なんでこんなものが……」
俺はその紙を見て驚いた。
なぜならその紙は、俺がバイトをしているシフト表だった。
どうして、原田さんがバイト先のシフト表……
まさか……
俺は今、ある子が頭の中で過った。
それは俺のバイト先には原田 胡桃さん。
最初の頃から思っていたが、あの子はよく原田さんに似ている。
すこしだけ、バイト先の原田さんの方が少し前髪が長いだけで、ほぼ瓜二つと言っても良いほどにだ。
だから、もしかしてあの原田さんは……いや、ありえない。
原田さんとバイト先の原田さんには違いもある。
それは性格
バイト先の原田さんはおとなしい性格がとても良い子。対して、こっちの原田さんは性格も良くないし、良い子とは言えない。
それに名前も違うではないか
バイト先の原田さんは胡桃。こっちの原田さんは美玖。
だから、このシフト表は偶々俺が持っているシフト表に似ているだけだ……
と言う感じに俺は自分に「違う」と言い聞かせた。
だが、見てわかる。
やっぱり俺が持っているシフトと同じだよな……
その証拠に、原田さんのシフト表に俺の名前もある。
「ちょっと!人の机で何しているのよ!」
心臓が飛び出てしまうほどびっくりした。
いつの間に原田さんが
「ねぇ、キモオタ君、今なにか隠したでしょ?」
「あっ、いや……」
しまった!
原田さんに驚いた勢いでバイト先のシフト表を隠してしまった。
とくにやましいものではないけど、なんだか出しづらい……
「キモオタ君。ほら早く、出しなさい。さもないと……」
原田さんは俺を睨みながら、近づいてくる。
手元には熱々のカレーライスを運んでいるトレーが……
もしかして、原田さんは俺に向けてカレーをぶちまけてくる……
まさか、そんなことはしてこないこないと思うけど……
だけど、原田さんの顔からは殺意なようなものが……
何をしてくるのか想像がつかない。
そう思った俺は、自分の身を第一に考え、原田さんにシフト表を返すことにする。
「原田さんて、バイトしていたんだね」
隠していた物が紙だと分かった原田さんは「はぁ……なんだシフト表か……」
とため息をついた後、不機嫌そうにこう言った。
「なに、バイトして悪いの?」
「いや、悪くないよ……」
原田さんはあまり機嫌が良くない。
もしかしたら、話を掛けるだけで、舌打ちや睨まれたりするかも知れない。
俺の感が正しければ、このままそっとするのが一番いいのだろう。
いいのだけど……
これってチャンスなのかもしれない。
と言うのも、今、原田さんと俺の会話にはバイトの話題が出た。
この流れで、今までの謎を解決できるかもしれない!
そう思った俺は行動をとる。
「原田さんて普段、どこでバイトしているの」
何気ない会話から、今までの謎を解き明かす。
そして、正銘する。
原田美玖と原田胡桃は全くの別人であると!
「まぁ、飲食店……」
飲食店か
バイト先の原田さんと一緒だ。
だが、高校生のバイトと言えば飲食店やコンビニなどが定番。
だから俺と被ってもおかしくはない。
これでは、同一人物だと正銘するのには難しい。
「キモオタ君はバイトとかしてないの?」
「あっ、俺は……」
正直言えば「してない」と言っておきたい。
もし、「しているよ」なんて答えて、後日、原田さん達が俺のバイト先に遊びにでも来たら災厄だ。
けれど、ここで「してない」なんて答えて、会話が消えたら意味がない。
不本意であるが、俺は、「しているよバイト」と原田さんに言った。
すると、意外な一言が原田さんの口から出てくる。
「もしかして、飲食店だったりして……」
「えっ……」
その瞬間、原田さんはカレーライスのトレーを机に置き、俺に近づてくる。
そしてその時の表情はなぜか強張っている。
「ちょ、ちょっと原田さん」
「動かないで、確認するだけだから」
俺は壁の端に追いやられ、ついに逃げ場を失う。
そして、原田さんは俺の眼鏡を取ろうとしてくる。
「動かないで」
「ちょっとやめて」
俺は抵抗する。
眼鏡を取られた姿なんて、醜いし、恥ずかしい。
けれど、俺の抵抗は空しく、あっさり原田さんに眼鏡をはずされた。
「ほら、顔をあげてみなさい」
「……」
俺は顔を隠す。
だって、こんな醜い顔なんて笑われるだけだ。
「いい加減顔をあげなさい!」
声のトーンが明らかに変わった。
顔は見えないが明らかに怒っている。
それに俺は気づいてしまった。
このまま、顔をあげなくても眼鏡が原田さんが持っている以上、いつかはバレることに……
俺は観念して顔をあげる。
すると
「やっぱりそうだったんですね。先輩!」
原田さんが俺に抱きついてきた。
「は、原田さん!」
「先輩、会いたかったです!」
その瞬間、今までの謎が判明した。
バイト先の原田胡桃さんが、俺の学校にいる原田美玖さんだと言うことに……
だが、謎も残る。
なぜ原田さんは名前を変えてバイトをしているのか?
それと、どうして原田さんはおとなしい性格を装ってバイトをしているのか
その二点が謎だ。
けれど、それもその内にわかるはずだろう。
とりあえず、このべったりとくっついている原田さんをどうにかしなければ・・・・・・・
ーー次の日ーー
俺の合宿勉強は続いている。
「もぅ~違いますよ先輩!ここはこうやってこうやるんですよ!」
昨日のスパルタはどこへやら、原田さんは最初の時よりも優しくなった。
優しくなった原田さんは、どんなミスを連発しても怒らない。
それどころか、何度も丁寧に教えてくれたりする。
俺としてはとても、ありがたい。
ありがたい……ありがたいのだが……
原田さん俺がバイト先の先輩だと知ってから、暴走行為をしてくるようになった。
その証拠に、勉強中は俺の手をやたらと握ってきたり、昨日、勉強が終わり、「はぁ……今日は疲れたそろそろ寝よう」としたら、原田さんが「一緒に寝ましょう」と言って俺の布団に乱入。
そして、すぐに夢の中へ……
俺は寝た原田さんを抱え、原田さんのベットに移す羽目に……
その後は原田さんの良い匂いがこもった布団で寝ることに
ちなみにだが、俺が寝ている場所は原田さんの部屋。マットレスを引き、寝たつもりだった。
しかし、こんな悪条件の中、熟睡なんて出来るわけなく、俺は寝不足のまま二日目を迎えた。
「もぉ~、先輩また同じミスしてますよ」
「あっ、ごめん」
はぁ……眠い。
原田さんが教えてくれているのに頭に入らない。
「先輩、なんだか疲れているように見えますが大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫だよ……」
「本当ですか?良かったら、私が元気を注入してあげますよ?」
「本当に大丈夫だから」
こうして二日の猛勉強合宿をし、期末テストに備えた。
勿論、合宿を終えた後も、俺は自主勉強をしたり、幼馴染の恵理、先生である原田さん
教科担当の先生に分からないところは教えて貰ったりした。
これで、期末テストは完璧だろう。
けれど、不安は残る。
原田さんと約束していた学年トップ10をとること。
それ以前に、赤点を回避できるだろうか……
そんな不安が残る中とうとう本番の日を迎えるのであった。
読んでくれてありがとうございます!
次回もよろしくお願いします。




