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知らぬ間にギャル達の様子が変わっていたのですが、俺はまだ気づいていません。  作者: プリンアラモード


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16/112

16

ある日の初夏――


少しずつ蒸し暑さを感じるようになってきた頃のこと。


俺がアルバイト先へ出勤すると、バックヤードにはいつもより少しだけ緊張した空気が流れていた。


スタッフが一か所に集められ、天野店長が前に立っている。


「みんな集まったな」


店長は一人の女性を前へ促した。


「今日から新しく入る新人だ。自己紹介を頼む」


店長の隣へ進み出たのは、一人の女の子だった。


肩まで伸びた艶のある黒髪。


黒縁の眼鏡。


派手さはなく、どちらかと言えば物静かな印象を受ける。


制服姿もどこかぎこちなく、緊張しているのが一目で分かった。


「は、初めまして……」


女の子は小さく頭を下げる。


「原田美玖です。これからよろしくお願いします」


その名前を聞いた瞬間、俺は思わず目を瞬かせた。


(原田……美玖?)


学校にも同じ名前の女子がいる。


だけど、目の前の彼女と学校の原田さんはまるで別人だった。


学校の原田さんは派手な金髪で、いつも強気な態度。


目の前の原田さんは黒髪で、おとなしく、人と目を合わせることさえ苦手そうだ。


同姓同名なんて珍しくはない。


偶然だろう。


「では、よろしくお願いします」


緊張した様子で再び頭を下げる原田さん。


その姿を見て、俺も軽く会釈を返した。


「よし」


店長は満足そうに頷くと、今度は俺の方を見る。


「白金」


「はい」


「お前に任せる」


「……はい?」


意味が分からず聞き返す。


すると店長は真っ直ぐ俺を見て言った。


「原田の教育係を頼む」


「えっ!? 僕ですか?」


思わず大きな声が出る。


教育係なら俺以外にも適任はいる。


朝比奈先輩だっているし、他にも経験豊富な先輩はたくさんいる。


「店長、どうして俺なんですか?」


店長は腕を組み、少しだけ笑った。


「理由は二つだ」


一本指を立てる。


「一つ。お前は面倒見がいい」


次に二本目の指を立てた。


「もう一つ。後藤を一人前に育てた実績がある」


後藤さん。


去年まで新人だった後藤さんも、今では立派な戦力になっている。


「あいつを育てた時のお前を見ていた」


店長は続ける。


「相手のペースに合わせて教えられる。焦らせない。質問もしやすい」


「そういう奴が教育係には向いている」


店長はニヤッと笑う。


「だから今回も期待してる」


そこまで言われてしまえば断れるはずがない。


「……分かりました!」


俺は大きく頷いた。


「精一杯頑張ります!」


「よし」


店長は満足そうに頷き、その場を離れていく。


残された俺は原田さんの方へ向き直った。


「改めまして」


軽く頭を下げる。


「白金結城です。今日からよろしくお願いします」


「よ、よろしくお願いします」


まだ少し緊張しているようだ。


「そんなに固くならなくて大丈夫だよ」


そう言って笑うと、原田さんも少しだけ表情を和らげた。


「あ、ありがとうございます」


その笑顔を見た瞬間。


どこかで見たような気がした。


(……あれ?)


ほんの一瞬だけ、学校の原田さんの笑い方と重なった気がした。


だけど、そんなはずはない。


あんな派手な人と、このおとなしい原田さんが同じ人だなんて。


「白金さん?」


「……あ、ごめん」


慌てて意識を戻す。


「じゃあ、まずは店内を案内するね」


「はい!」


俺は店内を歩きながら、一つひとつ仕事を説明していく。


レジ。


ドリンク。


厨房。


洗い場。


原田さんは真剣な表情でメモを取りながら話を聞いていた。


「最初から全部覚えようとしなくても大丈夫」


「まずは一つずつ覚えていこう」


「はい!」


返事は小さい。


でも、その瞳には「頑張りたい」という気持ちがしっかりと宿っていた。


(この人なら、きっと大丈夫だ)


そう思った俺は、まだ知らなかった。

読んでくれてありがとうございます!

次回もよろしくお願いします!

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