13 謎の再会
今日は、休日。
地獄の学校生活から抜け、今日は一日バイトだ。
そんな日の、午前のことだ。
それは突然の再会だった。
「あ、あの時はありがとうございました……お連れの女性に聞いたところ、ここで、会えるとお聞きになりましたので、つい来てしまいました……」
俺の目の前にいる人物。
その人物は、以前、ナンパしている人から助けた女子生徒だ。
まさか、こんな所で再会するとは思わなかったことにも驚いたが、それ以上に驚いたことがある。
以前、その女子生徒を見た時は、しっかり見ることが出来なかった顔。
だけど、今、まじかで見てびっくりした。
容姿から声まで、あの忌々しい、原田さんに似ている。
まるで、原田さんと話している気分だ。
「あ、あの……もしかして、迷惑でした?」
「いえ、そんなことはありません!むしろ、律儀にありがとうございます!」
「いえいえ、当然の事です」
「……」
「……」
緊張する。
けれど、原田さんではない。
違う、違う、絶対違う
こんなおとなしい子が原田さんのわけがない。
もし、このシチュエーションを本物の原田さんがやるなら、「おい!」「てめぇ!」「ちょっとキモオタ君ー……」
と言って威圧的な態度をとってくるだろう。
それに原田さんはもっと明るくて、見た目も派手だ。
だから、目の前にいるメガネをかけた地味な子ではない。
「あ、あの、せっかくなので、注文良いですか?」
「は、はい。どうぞ」
注文を終えた原田さん似の子は俺が見える位置に座った。
その原田さん似の子は勉強を始める。
その横顔は、本当に原田さんがいるように見えて仕方がない。
「先輩!ちょっと聞いてますか!」
その声がした方に俺は振り返る。
すると、俺の視界に顔を膨らませ俺を睨みつける後藤さんが映りこんだ。
しかも、その表情を見る限りだと、機嫌が悪そうだ。
「ごめん、聞いていなかった……」
「やっぱり!先輩さっきから、あの子のことばかり見てましたもん!」
顔を膨らませ、プイッと顔を反らした後藤さん。
その姿に俺は、そこまで機嫌を悪くさせていたことに申し訳ないと感じる。
けれど、後藤さんは凄い。
俺は、原田さん似の子を大胆にじーっと見ていたわけではなく、チラッと見ていただけだ。
それなのに、よく、後藤さんはあの女の子を見ていることに気づけたものだ。
俺は少しでも後藤さんの機嫌を直そうと、こう言った。
「す、凄いね。後藤さん。良くそこまで気づいたね」
「あっ、いや、それは!その!たまたまです!」
さっきまで、不機嫌だった後藤さんが一転、顔を真っ赤にし黙り込んだ。
もしかして、俺余計に悪い事でも……?
「後藤さん。大丈夫?もしかして俺……」
「だ、大丈夫です!そんな事よりも、仕事に集中しましょう!」
と言い残し、後藤さんはモップを片手に店の掃除に行ってしまった。
なんか、変な後藤さんだ。
そう思いながら俺は、気持ちを切り替えてバイトに集中した。
そして、一時間くらいたった頃だろう。
あれ?……
原田さん似の子は、いつの間には居なくなっていた。
この店の出入口は一つしかないのに、原田さんの存在に気づかなかった。
まぁ、それほどバイトに夢中だったと言うことだろう。
そう言えばあの子の名前とか聞き忘れた。
一体、あの子は……
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