11
俺は今、ピンチである。
どうするべきだろうか?この状況。
逃げようにも逃げ場はない。
なぜなら、目の前にいる末永さんが、俺がビーフシチューを食べるのを待っているからだ。
「ほら、食べて」
「う、うん……」
いや食べれないわけないだろ!
そもそも、この学校の美少女に食べされてもらう事態がヤバい。
周りには他の生徒もいる。
しかも、俺達は他の生徒に見られている。
この環境に対して、末永さんはなんとも思わないのか?
俺からしてみれば、公開処刑みたいなもんだぞ!
「どうしたの?食べないの?」
「あっ、うん。食べる食べる」
なんて言ったが、本当に食べて良いのだろうか?
この状況で、末永さんに食べさせて貰ったら…俺は、晴れて男子……いや、女子達からも敵視される可能性がある。
それに末永さんが今、持っているスプーン。
そのスプーンは、さっき、末永さんがビーフシチューを食べた時に使ったスプーンだ。
もし、このスプーンが口に入ったものならば……
考えるだけで恐ろしい。
「ほら、ほら早く食べないと、私が全部食べてしまうぞー!」
一層、それでも良い。
末永が食べさせようとしてくるビーフシチューは受け取らない。
それは大前提だ。
ならば、ビーフシチューは諦めるしかない。
そうなれば、あの手が一番いいかも知れない。
「あいたたた……」
「白金君。どうしたの?」
「うん、ちょっとお腹が……」
「えっ、大丈夫?」
「うん、大丈夫だと思うけど……今日はそのシチュは食べれないや。良かったら全部食べて」
「えっ!ちょっと!」
と言う口実をつけて、俺は末永さんから逃げるように食堂を後にすることができた。
我ながら完璧な口実だ。
たが、せっかくのチャンスと、高いお金を払って食べようと思ったビーフシチューは犠牲になってしまった。
本当は末永さんに、「あーん」されて、ビーフシチューを食べてみたかった!
あー心残りだ!
さよなら、末永さん!そして!幻のビーフシチュー!
だけど、これでいいんだ!
末永さんが喜んでくれたし、末永さんも俺もハッピーエンドを迎えることが出来た。
だから、ビーフシチューの犠牲は無駄ではなかった。
――教室――
やばいどうしよう……
最初、俺は教室を見てそんなことを思った。
理由は、またしても島崎さん達が俺の席も占領していたからだ。
俺の机には小林さんが俺の机に乗っている。
そして、俺の机に沢山のごみが置かれている。
いつもそうだ。
俺が少し離れば、俺の場所を奪ってギャアギャアと騒ぐ。
そして、酷いときには、あの人達が散らかした後片付けもしたければならない。
どれもこれも、はっきり物事を言えない俺が悪い。だけど、人の机だからやめてほしい。
俺は作り笑いをしながら小林さんに言った。
「小林さん、そこどいてくれるかな?」
結果は分かっている。
どうせ、どいてくれないに決まっている。
この間、俺は手が震えて仕方がない。
なぜなら、なにが待ち受けているか分からないからだ。
もしかすると、島崎さん達に対して歯向かった罰として、リンチされることもあり得る。
だけど、今日は違った。
「ほら、今日だけは返してあげる」
「おぉー優奈優しいー!」
「良かったねーキモオタ君」
よ、良かったのか?……
そう思いたけれど、明らかに様子がおかしい。
島崎さん達を見ると、ニヤニヤしながら俺を見てくる。
絶対に裏がありそうな雰囲気をしている。
すると、島崎さんが俺に近づいてくる。
そして、俺の肩を組み、こう囁いた。
「ちょっとキモオタにお願いがあるんだけど……」
島崎さんのお願いの内容を聞いて俺は頭が真っ白になった。
「えっ、む、無理だよ……」
だってこんなお願い……
俺の学校生活は終わる……
読んでくれてありがとうございます!
次回もよろしくお願いいたします




