10 幻のビーフシチュー
昼休み
今、俺は食堂に向かっている。
完全に俺は墓穴を掘った。
その原因が、幻のビーフシチュー
朝、島崎さん達を欺くネタとし使ったのはいいが、それを有言実行しなければならない。
いつ、どこで島崎さん達が目を光らせるかわからない。
俺は食堂に着く。
けれど、食堂には行列が出来ていた。
やっぱり、幻のメニューだけあってみんなも食べたがっているに違いない。
だが、俺にとっては好都合だ。
ビーフシチューは980円。
幻のメニューだけあって少々、お高い。
普段からアニメグッズとかにつぎ込んでいる分、こういうところで無駄金を使いたくない。
だけど、この行列によってビーフシチューが完売してしまえば、俺はビーフシチューを食べずに済む。
よって無駄なお金を使わずに済む。
けれど、現実と言うものは残酷なものだ。
「良かったわね~これが最後だったわよ」
そんなことを言われて、嬉しくないと思ったことはあったのだろうか?
どうして、最後の一個が俺に……
運がいいのか、悪いのかは分からない。
思わぬ運のお陰で、痛い出費をした俺は、食堂の端で、一人、寂しくビーフシチューを食べる。
ここの学校に来てから初めてビーフシチューを食べるが思っていた以上に、本格的なビーフシチューだ。
これならお店を出せるレベルだと思う。
俺は、どこかの評論家になった気分でビーフシチューを堪能していた。
すると……
「白金君ここ、いいかな?」
目の前に末永さんが現れた。
もう一度、言う。
俺の目の前に末永 優樹菜さんが現れた。
風紀委員を務めるほどしっかりして、頭が良くて、何よりも可愛い末永さん。
そして、俺が一方的に思いを馳せている人物。
「末永さん!どうしたの」
目の前に末永さん。
やばい、どうしよう!緊張する!
鼓動が早くなるのを感じる。
だけど冷静に冷静にいかないと。
「ちょうど白金君を見つけてしまったの。だから来たの」
頬杖をつきながら俺を見る末永さん。
やばい、超可愛いんですけど……
俺はビーフシチューよりも末永さんに夢中である。
一方、末永さんの視線はビーフシチューだ。
「ねぇ、それって、幻のビーフシチューでしょ?」
「あっ、うん」
「へぇーいいな。私も食べようと思ったけど、もう無かった」
末永さんは、俺なんかよりビーフシチューに興味津々である。
しかも、食べたそうだ。
「よかったら、食べる?」
他の人には絶対にそんなこと言わない。
だけど、末永さんは特別だ。
「えっ!?いいの?」
「うん、いいよ」
「なら、お言葉に甘えて少し貰うね」
そう言った末永さんは俺が使っていたスプーンを取る。
そして、末永さんは俺のスプーンでビーフシチューを食べた。
「うん~美味しい~」
末永さんは満足そうだ。
俺は末永さんひビーフシチューをあげて良かったと思う。
思うけど……
それよりもそれよりもだ。
「す、末永さん……」
「どうしたの?」
「いや、だってそれって……」
言えない。
「それって俺のスプーンだよね?」
なんて言えない。
だって、あの末永と間接的ではないけど、キスしていることになる。
「それで、なんなの白金君!」
「いや、なんでもない。なんでもない!」
末永さんは「もぅ~!」と顔を膨らませ、不機嫌になった。
一方、俺は変な汗が止まらない。
こんなにも、大胆なことをしてくるとは思っていなかった。
俺よ、落ち着け、落ち着け。
頭がおかしくなりそうだ。
「はい、白金君。口開けて」
えっ、今……
「ほら、口開けて。私が白金君に食べさせてあげる」
綺麗な歯を見せニコッと笑う末永さん。
その姿は神々しいものだ。
けれどその前に今、なんて……
いや、まさか、まさかじゃありませんよね……
一体、白金はどうなるのか次回に続く。
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