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第六十話

「さあ、どうだ?」

 いよいよ蟻が最前線の畑に接触し、戦いの火蓋が切って下ろされた。

 ある程度の確信こそあったものの、実際に見ない事には不安だったが、杞憂だったようだ。

 うん。畑だけで余裕だわ、これ。

「いくら統合ライセンスとはいえ、所詮は上級だもんな」

 神級のライセンス特典が、通じない道理はない。

 畑に近づく巨蟻を、ザクザクと切り伏せる案山子の心強さといったら。

 一応、念には念を入れて、畑の拡張は続けているが、これまでの経験上、畑の残留時間は試験の制限時間を上回っているので、大丈夫だとは思うが一応ね。

 そんな感じで、石橋を叩いて壊して鉄橋にする勢いで後半への対策をする。

 それから少しして、敵の編成に変化が生じる。

「お、今度は中型犬位の蟻の大群か」

 これらも、歩行と飛行の二種が存在する。

「サイズが縮小し、登坂能力は下がったが、被弾面積も縮んだが…」

 少しの間、固唾を飲んで見守る。

「…大丈夫そうだな。流石に犬っころ位大きければ、十分当てられるサイズだわな」

 ウェーブ2も、問題無く畑だけで乗り切れそうだ。


「さあ、今度は握り拳程度か、これは様子を見るまでも無く、多少はしゃしゃらないと突破されるな」

 例え、登坂能力が劣ろうとも、被弾面積の低下した蟻の大群を防ぐには、畑だけでは心許ない。

「良し、ここらでツチノコを解き放つか」

 そうそうツチノコが被弾するとも思えないが、拳サイズの蟻なら話は変わる。

 悍ましい程の数で、隙間ない黒い濁流となって迫る奴らなら、跳べないツチノコを追い込むのは容易な筈だ。

 そして、小さい故に2万の反射ダメは、十分な威力として、数を減らすのに役立ってくれる筈だ。

 そんな思惑からツチノコを放ったが、どうやら上手くいったようで、遠方で黒波に乱れが生じている様子が見て取れ、気持ち密度が薄くなって見えた。

 とはいえ、こんなのは焼け石に水と言っても過言ではないので、今少し様子を見る事に。


「うーん、やっぱ相手が小さすぎて、案山子じゃ防ぎきれないか」

 前回の試験なら、防衛対象が家という事もあって、使い魔の密度でどうにでもなったが、今回は試験そのものの難易度が高く、対象も大きく範囲が広い為、このままでは手が回らずに城が喰い尽くされてしまう。

「しゃーない…敵が小物の群れじゃ、今のままじゃ相性が悪すぎる、切り札の出番だな」

 先程の神級試験では、あまり役に立ちそうになく、選択肢にも上らなかった手札。

「さあ、ポイっとな」

 そうやって畑に投じたのは[火炎放射草の種]だ。

 大根よりも、遥かに育つのに時間が掛かる筈の作物(?)だが、それでも一瞬で成長し、真っ赤なチューリップの様な花が咲く。

 これを、城を囲む様に三重に植える。

 これだけで数百万の出費だが、出し惜しみしてしくじるよりはマシだ。

「一応、出来る事はやったが…これでイケるかな?」

 大型中型の蟻が貫けない様、前線で色々遣り繰りしながら、背後の城を見る。

 程なくして、カバーしきれていない方面から、小型蟻が畑を突破し、城に接近し…。

「良し!流石に面の攻撃だけあって、絶対に当たる様だな。それに、威力も小物を相手取るなら及第点だな」

 開いた花弁から放出される炎に、成す術無く焼却されていく小蟻共。

 何とか火炎放射を止めようと、果敢に挑みかかるが、噛み付きのみの蟻に対し、短射程とはいえ致命の威力を持った飛び道具は、情け容赦なく蟻を駆逐する。

 暫らく眺めていたが、小蟻が最終防衛ラインを突破出来ないと判断。

 その後も、新たな蟻が投入される事も無く、そのまま試験は合格となった。

 ま、上級試験ならこんなものだろう。


「お疲れ様です~、まだまだ先だとは思いますが~、次はいよいよ特級ですよ~」

 そういえば、特級からは固有の特典が付くんだよな。

 そういう意味では、統合せずに2つのライセンスの固有特典を得るのも、選択肢としては十二分にアリだな。

 尤も、俺の場合は階級の限界と、ライセンス自体の強化を求めて統合しちゃったけどね。

 まあ、それはさておき、使い魔の知能がどの程度上がったか、検証しようか。

 早速バグスターに向かい、蟲に一当てする。

「ほほう、囲む様に、貫通弾を警戒ときて、今度は陣取りを意識してるのか」

 要は、単体を囲もうとするのではなく、敵全体を囲む様に動く様になった。

「手早く各個撃破したい時は、若干足を引っ張りそうな仕様だな」

 勿論、個々を囲まないわけではないのだが、先ずは全体を囲むというプロセスを挟む為、若干だが速攻性は失われた形になる。

「と言っても、基本的にはこっちのアルゴリズムの方が凶悪なのは間違いないな」

 囲めば、敵全体は兎も角、個々の死角に関しては絶対に突けるわけだからな。

「後は、蜂がブワッと広がって突っ込むのが、視覚的に恐怖を誘えるのもPvPでは役立つだろう」

 地味に、ステータスが20%上がるのも嬉しいところだが、これに関しては、戻ったと言った方が適切かもな。

 なんにせよ、地味にではあるが強化されたし、次はいよいよ特級なので、期待も高まるというものだな。


 2つのライセンスを昇級させ、『ジャックオーランタン』はまだまだ100%に届かないので、金稼ぎを再開。

 丁度インしてきたアコを誘い、フォレストで金策を行う。

「あの2人は?」

「2人なら、検査でぐったりで、今頃寝てるわよ」

「何で、検査ってあんな時間掛かるんだろうな?」

 人でごった返す総合病院なら兎も角、専属契約を結んだ病院で、関係者しか居ない日ですらすげえ待たされるんだよな。

「まあそれは良いとして、アコも5回目に到達したのか?」

「ええ、テツ君に合わせて、お嬢様達と一緒にね」

「…って事は今朝か」

「そ、出掛ける前にちゃちゃっとね」

「フレッシュだな。それで?今回はどんな感じなんだ?」

「今回は《ミリ筋中級》を消去して、〖徹甲矢の刻印〗を取得したわ」


《ミリ筋中級》[筋力][射撃][銃器]の覚醒数が20上昇。

〖徹甲矢の刻印〗弓や弩での攻撃時、対象の全防御力と全軽減効果を20%低下させる。


「今回は火力を伸ばしたのか」

「ええ、デバフの数値だけを見ると低いけど、防御力とカット率両方に効くから、結構実感出来る筈だわ」

「ああ、実戦はまだだったのね」

「そうよ。という事で、検証しに行きましょうか」

 行き先は、適度に堅い蟲が都合よさげと思い、バグスターにした。

「お誂え向きに蟲人間が居るわ」

 早速弦を引き絞り、槍を射かけるアコ。

 ズドッと蟲人間に深々と刺さり、そのまま昇天した。

「うわあ…これじゃ、刻印お陰かパラメータ補正のお陰かが判らないわね」

 単純に、火力が倍になってるようなもんだからな。

 仕方なく、場所をアニマルに移し、適当な獲物を見繕う。

「あ、アルマジロだわ。アレなら以前でも三射以上掛ったから、判り易いわね」

 先程同様に、素早く槍を射かけると、一撃でアルマジロのLPが7割ほど消し飛んだ。

「お~、地味にだけど効いてるわね」

「確かに地味だな。でも本領を発揮するのはボス級を相手取った時だもんな」

「そうね、そこらの雑魚じゃ、防御力は兎も角、軽減なんてあってもたかが知れてるものね」

 あくまで、敵の防御力を如何にかする刻印なので、軽い検証では、こんな感想にしかならんだろう。


「あ、テツ君、居たわ」

「ん…俺にも見えた」

「それじゃ仕掛けるわね」

 三度目の正直。今度は堅牢な防御力を誇る、河馬を相手に槍を放つ。

「おお!減る減る♪」

「河馬相手に一発3割は凄いな」

「今度は、しっかりと効き目が見れたわね」

 更に射掛けた槍と、〖返し矢の刻印〗の追加のダメージで、河馬を仕留めた。

「やっぱ大物キラー用の刻印だな」

 河馬をいとも容易く仕留められたことで、気を良くしたアコが、次々と河馬を標的に槍を射る。

 都合が良い事に、手足の短い動物相手だと、背中はほぼ死角な為、返し矢の追加ダメがほぼ決まり、省エネ且つ時短に繋がり、サクサク狩れて非常に気持ちが良い。

「こうして改めて見ると、弓って火力出るよな」

「単純にパラメータ補正が多く乗るからね」

「その分、先細りし易いけどな」

 ギフトや刻印で、簡単に火力を盛れたり防御を貫ける近接と違い、弓は構成上の自由度が低いからな。

「そんな事言ったら、近接だって敵に近づいても生き残る為の手段が要るから、自由度の差は無いと思うけど…」

「そうだな、耐えるか避けるか…どちらにしても、腕前だけでどうこうなるもんじゃないからな」

 それこそ、パラメータをガチガチの防御系で固めるとかな。

「まあ、それでも弓が[筋力][射撃][銃器]で、火力の他に精度も補う必要があるのを、近接は[近接][穿孔]で済むからな。このパラメータ1つ分の差はどうしようもない」

 現状、パラメータ1つが、刻印と並ぶかそれ以上の強さを発揮するので、それを犠牲にする分、やはり自由度は低くなりがちだ。

「ただ、近接よりも、機会損失が遥かに少ないから、安定してダメージを取る事に関しては、弓は優秀だな」

 取り敢えず、射線さえ通れば攻めれるからな。

 とまあ、こんな感じでビルド談議しつつ、検証を終えて帰還した。


「「おはよ~」」

「おう、2人ともおはよう」

 翌早朝。ぐっすり眠ってすっきり顔の2人が、やって来た。

「哲兄なにしてるの?」

「光合成」

 只今、軒下で、ビタミンⅮを生成中。

 程なくして朝食の時間となり、朝餉を頂く。

 食後の休憩を経て、3人仲良く並んでログイン。

 今更だが、ゲーム内で他人のフリをする事は、とっくに止めている。

 態々同居してるとまでは言ってはいないが、リアルで知り合い程度だとは匂わせといたのだ。

 一々ログインをずらすのも面倒だったので、こんな塩梅にしておいたのだ。

「「「おはよう」」」

「あら、おはようございます」

 クラフトに精を出していた、おりょうさんと挨拶を交わす。

 おりょうさんに、これからユキとユナの刻印を披露してもらうので、一緒にどうかと誘い、同行を了承してもらう。

 おりょうさんも、数日前に大金が入り、5回目に突入してると言うので、おりょうさんのも見せて貰う事に。


「前回、私が選んだ刻印からの派生だと思うんだけど、〖祈祷の刻印〗ってのがあって、それを選択したわ。消去したのは《魔生信者》ね」


《魔生信者》[生命]と[魔力]の覚醒数を50増やす。


〖祈祷の刻印〗毎分竜巻を発生させる。


「要は、[旋風]のオートスキル版って事か」

「多分ね、まだ戦闘エリアに出てないから、実際の挙動は知らないけど、恐らくは」

 という事は、ユキは毎分、雨雲と竜巻を自動発生させれるようになったって事か。

 まあ、これ以上の言及は、実際の挙動を見てからにしておこう。


 次はおりょうさんの番と伝えると、先にユナの方が都合が良いでしょ?と言われたので、別にそんな事は無いが、折角だしユナから発信してもらう。

「それではお先に。今回私が選んだ刻印は〖崩星の刻印〗、消去は《吸血鬼信者》にしたわ」


《吸血鬼信者》[吸血鬼]の覚醒数を50増やす。


〖崩星の刻印〗毎分半径100m以内の敵を1m引き寄せる。


「毎分1mか、〖重力の刻印〗と違って、一度にドカッと引き寄せるのか」

「しかも、効果も上がってるわ」

「秒間換算なら1.7倍弱か」

「タイミングを逃す場合もあるから、一概に上位互換とは言えないけどね」

「そうだな。しかし、チマチマと引き寄せられてる中、急に1mも動くとか、相手からしたら相当ストレスだろうよ」

「直接的な戦闘力には繋がらないけど、イニシアチブを引き込む力は強い刻印だと思うわ」

 一連の刻印は、兎に角範囲が広いから、味方に1人位要ると、敵のリズムを崩せて強いかも。


「では、最期は私ですね。今回は[体力]を切って、〖悟りの刻印〗を取得しました」


[体力]HPゲージを追加。[体力]の値がそのままHPになる。


〖悟りの刻印〗ダメージを30%軽減。


「こりゃまた…無条件で30%カットですか」

「かなり強力ですよね、基本アパレルオンリーの私には、30%カットは凄く魅力的なので選びました」

 既に、5つものパラメータを失っているおりょうさん。彼女にとっては30%軽減は、他の人以上に価値あるものに見えるだろうな。


 3人の刻印を軽く予習し、フォレストにやって来た。

「まだ、安全地帯内だってのに、既に凄い狙われてるな」

 ユナの引き寄せが、そこら中のクロスイーターのヘイトを集めてるようだ。

「折角だし、このまま一分待ちましょう」

 戦闘中にこそ真価を発揮する刻印だが、戦闘中にはじっくり観察できないので、戦闘前のこのタイミングで検証してしまう事に。

「…そろそろ一分…今‼おお~、こう…グイって引っ張られた感じだったわね」

 安地のバリアにぶつかるクロスイーターが、一斉にバリアに押し付けられるように硬直した様は、なんかコミカルで面白かった。

「それにしても、一気に1mも引き寄せるとなると、若干だけど硬直させる効果もあるのね」

「良いじゃん。精密作業妨害の〖重力の刻印〗瞬間拘束の〖崩星の刻印〗中庸の〖恒星の刻印〗。良い感じで済み分け出来てるな」

「そうね、正直、どれか1つだけだと地味な活躍しか出来ないけど、この3つが揃えば…」

「運も絡むが、戦場を支配出来るポテンシャルは有りそうだな」

 相手のしたい事をさせない、ではなく、相手に100%の実力を発揮させない、といった感じだな。


「それじゃ、〖祈祷の刻印〗を見ましょうか」

 今発生してる竜巻の切れ目を計り、スッと安地から一歩踏み出すユキ。

 同時に多数のクロスイーターが飛来し、同時に雨雲と竜巻が発生。

 更に、置き土産として[ダークニンバス]と[旋風]も設置し、安地に戻り観察。

「おお…長持続の魔法でも、4つも重ねると凄いダメージが出るわね」

 まるで、暴風雨の中心の如く荒れ狂う、魔法ダメージの濁流に呑まれ、クロスイーターが数秒で溶けていく。

「良いわね、これなら次の淘汰で、一瞬…は無理そうだけど、一秒強位でクロスイーターを倒せそうね」

 小物なら、侵入してから一秒強で溶かすダメージゾーンを、一分も展開出来ると考えると、とんでもないな。

 しかも、持続が切れるまでの間、好きに動ける事も考慮すれば、攻めも守りも自在な、強力なビルドへと昇華される。

 まあ、ユキのビルド上、数が取り柄の小物相手限定だけどな。


「では、一応私も戦っておきますか」

 単純に、30%ダメージ軽減なので、態々挙動を見るまでも無いが、一応ね。

 安地から外へ踏み出し、クロスイーターの攻撃を存分に浴びる、おりょうさん。

「うーん…毒も酸もアパレルの耐性でほぼ無効化してますし、物理の方も、イマイチ解り難いですね」

 流石に、小物相手だと判り難いとの事なので、トレントを引っ張ってきて、再検証。

「あ、今度はしっかりと効き目を実感出来ますね。ただ、パラメータを切ってる分、これまで以上に被弾には気を付けないといけませんね…」

 現在、おりょうさんが切ってるパラメータは[耐久][精神][科学][穿孔][体力]で、[穿孔]以外は防御系のパラメータだ。

 当然、淘汰によるパラメータ補正も、現段階では非常に恩恵の薄いものとなっていて、ダメージの30%カットでは、とても相殺出来ない程、脆弱化著しい様だ。

「でも、あと2つ消したら、8~10回目で、[生命][持久][積載]の補正を倍に出来るから、それまでの辛抱です」

 確かに、途中経過は相当厳しいものになるが、そこまでいけば…。

 なんにせよ、おりょうさんの苦難は、もう少し続く。


 戦闘力が激落ちのおりょうさんの為、沢山染料の素材を集め帰還。

 おりょうさんがパーティーを外れ、代わりにベッタラとサチが加わる。

「これは、いつものパターンかしら?」

 合流早々、サチが俺の言わんとする事を察した様だ。

「なら、俺から先に良いか?」

「どうぞ」

 先に済ませたいベッタラに、先行を譲るサチ。

「サンキュ。今回俺が選んだ刻印は〖楔打ちの刻印〗で、消去は《剣の達人》にした」


《剣の達人》剣での攻撃が、2回分の当たり判定を持つ。


〖楔打ちの刻印〗攻撃をヒットさせた相手の防御力を半減させる。


「確か、〖剣の刻印〗で防御も軽減も半減出来たよな?更に防御を下げるのか」

「そら、防御力を貫けなければ意味が無いからな。あと、この刻印は防御力全般が下がるから、味方のダメージアップにも貢献出来るのが強みだ」

 確かに、簡単に味方の火力を増やせるなら、戦闘時間の大幅な短縮に繋がるし、取って損はない刻印だな。


「私の番ね。私は《海の恵みを頂く者》を消去して、〖罠の刻印〗を取得したわ」


《海の恵みを頂く者》[生命]と[罠師]の覚醒数を40増やす。


〖罠の刻印〗<まきびし>や罠が敵に見えなくなる。


「今度は罠の隠密性までケアしだしたか」

「だって、敵に見つかるのが、大概罠の設置からだもの、そりゃ対策出来るのならしない手は無いわ」

 存在感を薄れさせ、足音と匂いを消し、見た目と当たり判定を縮ませ、更には罠すら見えなくする。

「ここまですれば、ほぼ確実に奇襲は成功するだろうな」

「そうね、少なくとも先手を取れる確率は相当なものの筈だわ」

 といっても、固定ダメージの<まきびし>で奇襲に成功したところで、火力的な恩恵は無いんだけどね。

 それでも、自身の安全面と、少しでもダメージを稼ぐ事を考えると、罠自体に隠密性を持たせる意義は、大きい言わざるを得ない。

 ま、そういう部分の強さは、これから検証するんだけどね。


 バグスターに移動し、適当に蟲人間を相手に検証。

 早速、ベッタラが蟲人間に切り付ける。

 現在、ベッタラのダメージ判定数は一振り17回。

 なので、16回分のダメージ判定に、防御力半減が乗るので、ソロでも非常に恩恵が大きく、大幅に強化されたステータスと相まって、一撃で蟲人間を討伐してしまう。

「ありゃ、これじゃ味方のダメージアップを見れないじゃないか」

 まあ、無理して見ておきたい程でもないし、機会があったらで良いか。

 続いてサチの実戦。

 コチラもさして盛り上がりも無く、淡々と蟲に近づき、罠で不意打ちを喰らわすという、地味極まりない絵面で、一連の検証を終えた。

「自分で言うのもだけど…とっても地味だわ」

「見つからないのを、至上としてりゃ、ああなるでしょう」

 華は無いが、敵の死角を突けるし、いざという時に無傷でやり過ごし、復活の起点にもなりうるので、仲間としては心強い。

とまあ、こんな感じで検証と素材集めを終え、帰還した。


 二十四日後。

『アップデートVer3.0のお知らせ』

「ほうほう、3.0とな」

 ログインすると、大型アプデの告知が出ている。

『サービス開始二周年を記念して、DIYオンラインVer3.0へのアップデートを実施いたします』

 日程は今から一月後となっている。

『現在ユーザーが訪れる事が出来る、[アース][バグスター][フォレスト][アニマル][エルフィン][鬼ヶ島][ドラグーン]に、大幅な改修を施します』

「おー、ドラグーンも攻略されたし、大分コンテンツの残量が厳しかったけど、ちゃんと考えてた様だな」

 まだまだ、各惑星の隠し要素はごまんとある様だが、大多数のユーザーは、判り易い攻略対象を欲するからな。

『そして、人類連合の敵対勢力として、インベーダーを正式に実装。Ver3.0より各人類連合のテリトリーに侵略してくるようになるので、奮って撃退してください』

 といった感じの内容がつづられている。

「敵対勢力インベーダーか…いよいよって事か…」

 ま、そんな事よりも、追加の成長要素だよ。

『Ver3.0より、新たな成長要素として、[繁栄]を実装。淘汰10回目Lv200以上の状態から到達出来る』

 詳細は、アプデ時のパッチノートに記載されるとのことだ。

「繁栄…か、名称からして純粋に強化されそうな感じはするな、今度はどんな特典が容易されてるんだろうな?」

 まあ、それもアプデの怖さとお楽しみってやつか。


「お、こんにちはパミル」

「こんにちは、テツさん」

 僅かな時間差で、インしてきたパミルと挨拶を交わし、合流。

「アプデ情報出たな」

「ええ、既存の惑星への改修と、成長キャップの解放、明確な敵勢力の実装と、大規模なアップデートみたいですね」

「だな。ところで、パミルは6回目の淘汰に辿り着けたか?」

「まだですね、資産的には…イケますね」

「お、なら一緒に6回目の淘汰をしちゃおうぜ」

「そうですね、タイミング的にも丁度良いですし」

 と言う事で、パミルと連れ立ち、Lv上げの為教会に向かった。


「さて、どうするか…って言ったって、今回消去するのは《生命マニア》以外ないか」

 宣言通り、《生命マニア》を消去し、刻印選択に移る。


《生命マニア》[生命]の覚醒数を30増やす。


「フムフム…今回追加された刻印は3つか」


〖往生際の刻印〗LPが1減る毎に[生命]が5上昇し、この効果で[生命]が10000上昇する毎に[生命]が1%上昇する。


〖天才の刻印〗スキル変化に必要な因子とパラメータの覚醒数を15下げる。


〖大器晩成の刻印〗因子とパラメータに覚醒数200で6回目のスキル変化を追加する。


「~~~~~ッ!!」

 キターーーーーー!!

「〖往生際の刻印〗俺はお前を待っていた!!」

【生への執着】の代替になり得る刻印。そんな待ちわびた存在が、遂に目の前に。

「えーっと…これを取れば、仮に執着を切ったとしても…」

 細かい計算が怠いからざっくりしちゃうが、LPが200万も減れば容易く[スワンプマン]の発動条件を満たせてしまう。

「200万なんて、今のLPからしたら0.00…%とかの次元じゃん、掠り傷で発動まで漕ぎ付けるのはヤバい」

 なんにせよ、今回の刻印は決まりだな。

「他2つやこれまでの刻印も良いが、今回は競合相手が強過ぎたな」

 迷わず〖往生際の刻印〗を取得した。

「フフフ…これで消去の必要分は捻出出来た、後は如何に相性のいい刻印を選んでいくかだな」

 残りの4つは、《生命信者》を2つ、執着と保護をそれぞれ消せば完璧だ。

 後は現状のステータスだが割愛。前回のを2.2倍すれば大体合ってるからね。


「お待たせ」

 Lvを200まで上げ、先に終えていたパミルに合流。

「テツさんは、どんな感じに」

 2人でPAに戻り、今回の淘汰について話す。

「…ってな感じで、憂いも断てたし、一気に気が楽になったな。パミルは?」

「私は《鉱石商一人前》を消去して、〖風竜の刻印〗を取得しました。」


《鉱石商一人前》[鉱夫]と[宝石商]の覚醒数を30増やす。


〖風竜の刻印〗あらゆる動作が30%速くなる。


 ちなみに、パミルの5回目の淘汰時はこんな感じ。

 消去:《鉱石商見習い》[鉱夫]と[宝石商]の覚醒数を20増やす。

 刻印:〖水竜の刻印〗[凍傷]を無効化し、保水度が減らなくなる。

「お、これで地火水風の四属性が揃ったのか」

「ええ、これで7回目の淘汰時に、更に強力な竜関係の刻印が出る筈です」

「どんなのが出るか、楽しみだな」

「ですね、出来れば攻撃的なものが理想ですが」

 希望の刻印が、必ずしも出現するわけではないのが不安だが、逆に思ってもみなかった強力な刻印が出る事も往々にしてあるそうなので、どうしても期待してしまうな。


「おお~、凄い動き易いですよ!!」

 2人で鬼ヶ島に赴き実戦中だが、パミルが大興奮。

「全動作が対象だもんな」

「凄いです、予備動作や後隙も含めてなので、凄いスムーズです」

 場面によっては、これまで出来なかった連係や差し込みも可能になる事を考えると、数値以上の強さを発揮するだろうな。

 素手でザクザクとゴブリンを掘削し、ご満悦なパミルだった。


 場所は変わって、砂漠のダンジョンに来ている。

「最新情報で、ここの地下70階でオリハルコンが採掘出来るらしいんですよ」

「お、ゲームお馴染みの物質だな」

「遂に登場ですよ。で、特徴ですが、元も加工先もべらぼうに高コストな代わりに、非常に高性能という、判り易いものですね」

「成程、必ずしも最高の素材とは言えないな」

「ええ、コスト過多じゃ意味が無いですからね」

 装備出来ないんなら、ただの宝の持ち腐れだもんな。

「実際、かなり強化した剣を、オリハルコンを土台に強化したら、性能は数倍になったものの、コストが桁違いに上がって、仲間内では誰も装備出来なくて泣く泣く出品、という事態も起こってるそうですよ」

 現状の、インフレ状態でも、コストが足らない装備か…。

「装備さえ出来れば、最高なんだろうな」

「そうですね、装備さえ出来ればですが」

 つくづく、上を目指そうとする程、コストに悩まされるゲームだ。


「あ~しんどい」

「…強い、これほどとは」

 現在地下60階、俺の使い魔にも居る、スカラベの大群に大苦戦中。

 というか、大半の挑戦者がスカラベに足止めを喰らっている状態だ。

「これを突破して、先に進めるのは、一握りの猛者だけか」

「そうですね…後先考えなく進むだけなら兎も角、目的を果たすなら死に戻りなんて論外ですし、そうなるとやはり厳しいですね」

 折角、オリハルコンを求めてここまで降りて来たが、流石に2人じゃ厳しかった。

「では、ここ60階で採掘できる、アダマンタイトを掘って帰りましょう」

 オリハルコンと違い、金属系の装備を無難且つ確実に強化できる為、非常に需要の高い素材であるアダマンタイト。

 多分、最終的にはオリハルコンの方が価値は高くなるだろうが、現状ではアダマンタイトの方が断然勝っているので、こちらを掘れる60階に来れただけでも十分だ。

 パミルを護衛しつつ、存分にアダマンタイトとその他の希少鉱物を漁り、地上へ帰還した。


 アプデが告知され、ゲーム全体が活気づく中、G戦隊から声が掛かる。

「一緒に戦ってくれませんか?」

「なんだい? 妙な言い回しをしますね」

「実は、インベーダーと戦うクエスト中でして、援軍として来てほしいんです」

「え!? もうそんな本格的に戦えるんですか?」

 アプデまで、まだまだ時間がある筈だが。

「私達が懇意にしているDIYの住人に協力してたら、いつの間にか」

 NPCを住人、良い表現だ。そしてG戦隊にも特殊な伝手があるんだな~。

「俺一人で良いの?」

「はい、今回は一枠だけですので」

「メンバーへの事後報告は?」

「それは大丈夫です、別に秘密では無いですから」

「了解した、何時でも行けるよ」

 という事で、G戦隊に付いて行くことに。


 ギルドから転移し、巡洋艦? 中々大きな宇宙船に移り、目的地に向かう。

 移動中説明を受けて分かった事は、今からインベーダーの威力偵察艦隊へカチコミに行くのだとか。

 その為か、周囲にも沢山の宇宙船が存在した。

 俺達の役目は、白兵戦に持ち込む、又は持ち込まれた際の戦闘員として、同乗を求められた形で、報酬も結構良いのだとか。

 そんな事を、全員が腹這いのG戦隊から説明される、この何とも言えないシュールさよ。

 そうこうしてる内に、艦隊船が始まり、あっと言う間に白兵戦に持ち込まれる。

 早すぎる展開に面を喰らうが、基本白兵戦を楽しむゲームで、艦隊戦をダラダラやられても困るので、これが正解か。

 そして巡ってきた出番。

 ぶわっと艦内にポップする大量の使い魔に、困惑する味方クルー。すみません、気にしないでください。

 取り敢えず角で待ち構えていると、壁をすり抜けた光弾に被弾。

「痛い!! のやろう!!」

 自傷ダメでスワンプが起動し、ドッペルも発動。

 豚でギュウギュウな通路を進み、物量差でインベーダー共を潰しに掛かる。

 以前は全身が二進法だったが、今では全身タイツの様なスーツでのっぺりした見た目になったインベーダー。

 負けじとハイテク銃を撃ち返してくるが、隙間を縫ったG戦隊が足元を掻き乱し、ネチネチと下段を攻め隙を誘う。

 俺も負けじと敵の集団に切り込み、使い魔をねじ込んで乱戦に持ち込みグダらせる。

 後は連係が死んだ相手を、じっくりとしゃぶるだけの簡単なお仕事。

 程なくして、敵部隊を鎮圧した。


「こっちは凄い激しいなおい」

「弾幕が濃すぎますね」

 ゲームを間違えてるんじゃねえか?と思う程、濃すぎる弾幕が飛び交う敵マザーシップのカタパルト。

 こうも攻撃が激しいと、自重してる場合ではないな。

「ちょっと邪魔しますよっと」

 味方のビルディングを邪魔しない為に、自重していた開墾を解禁。

 百姓とマタギを呼び、メカメカしい内装に似つかわしくない土剥き出しの畑。

 合わせてG戦隊が攻撃を引きつけてくれる。その間に敵への直線上を全て塗り塗りしてしまう。

 マザーシップを塗ろう!! を強行し、G戦隊に追い付く形で敵の足元に畑をお見舞い。

 今更だけど、宇宙船でも畑なんだな。いや、水田や原木畑になったらもっとおかしいんだけどさ…。

 なんて余計な事を考えつつも、マザーシップを塗ろう!! を続けていると、歩兵とは別に防衛システムが作動した様で、壁から突起が生え、レーザーが放たれ畑を執拗に焼いてくる。

 他の侵入者そっちのけで、畑を親の仇かのように付け狙う。

 まあ人体に例えたら、肛門から入った雑菌が大腸を畑に変えてるようなもんだもんな。

 …オレハナニヲイッテルンダ?

 意味不明な例えが浮かぶあたり、疲れてるのかもしれないな。

 結局、G戦隊は先に進み、俺は焼却される畑の維持再建に掛かり切りで、気付いたら戦闘は終了していた。


「流石テツさん、大活躍でしたね」

 皮肉に聞こえるが、実際俺がMVPを獲得し、金一封を受け取っている。

 かなりの額を貰えたので、相当重要な一戦だった事が窺える。

 アプデまでに出来るだけ稼いでおきたいし、時間が余ってる時に誘われたら、積極的に参加するのも良いな。


 後日、金策をしていると、ローレンス氏とムゥ氏と遭遇。

「やあ、奇遇だね」

「丁度人手が欲しかったタイミングだったんだ」

 PAに入る直前の声かけだったので、誰が見ても偶然ではないタイミングだ。

「凄く嫌な予感がするんですが…」

「大丈夫大丈夫、ちょっと私とムゥとの3人で、インベーダーの小惑星にカチコミに行くだけだ」

 俺的には大丈夫じゃないんですけど。

 そのまま連行され、なし崩し的に対インベーダー戦に駆り出される。

 俺達3人は独立部隊で、少数で敵を陽動する役目を負っている。

 ドロップシップから小惑星に降り、廃棄口から侵入。

 堂々と床を耕しながら進んでいく。

 程なくしてインベーダーと遭遇するが、ムゥ氏が光線銃で絶命させる。

 見事な早撃ちに、歴戦のデュエリストの姿を見る。

 ローレンス氏も相変わらずで、インベーダーを魔法で引き寄せ、腹パンの刑で処刑。

 頼もしい前衛のお陰で、これと言った苦戦も無く進んで行った。


「ストップ、第一防衛ラインだ」

 ムゥ氏が制止を掛け、ジッと前を見据える。

「あの先に無策で突入すれば、あらゆる角度から射撃される事になるだろう」

「それは避けたいね、どうする?」

「私のサイコウェーブをぶち込む、ローレンスのグラビティボールを打ち込む、引き返す、テツ君の畑をぶち込む。どれが良い?」

「うーん、択になってないね」

「だな」

 傍で聞いていて、引き返すのかな? って思ってたら。

「それじゃテツ君」

「一丁かましてやってくれ」

 何でだよ!!


「あの、どうせちょっかいを掛けるなら、火力を重視した方が」

「いや、陽動なら少しでも時間を稼げる方が良い。君が入り口で鍬を振るい続ける方がリスクも低い」

 まあ、二人がフリーなら、その分安全マージンは大幅に取れるだろうけどさ。

「それじゃやりますよ」

 ドッペルと百姓を呼び、ルーム内に鍬を突き立てる。

 瞬間無数の光弾が飛来するが、二人がサポートしてくれてるので無傷。

 その間に、使い魔がインベーダーに殺到し、現場は大混乱に陥る。

 その隙を見逃さず、二人で着実に敵戦力を削り、持ち札がクールタイムに入った様で、一旦下がる様言われる。

「良いね、時間稼ぎと削りの両方が出来てる」

「ゲリラの真骨頂だな」

 上々の滑り出しに、満足気味の二人。

 その後も、全員のクールタイムが終える度に、威力妨害を繰り返し、着実に敵の戦力と時間を奪う。

「ぬ、敵が背後を取ろうとしてる様だ。潮時だ引き返そう」

「了解」

「ラジャー」

 流石は敵の本拠地だ。この二人が居てもなおこれ以上進めないし、裏取りもされて敗走を余儀なくされてしまった。


 アプデ日当日。

 全ユーザーに激震が走った。

「…え? ビルドのリセット?」

 パッチノートを見ても、内容が素直に染み込んでこない。

『[繁栄]について。淘汰を10回行いLvを200にした状態で、Lvを上げると突入する状態です。全ての能力をリセットし、それまでの行動や能力を参照に、超強力な天性の才能[タレント]を取得可能』

 これ以外にも衝撃的な制限なども盛り込まれていたが、兎に角積み重ねてきたものが崩れる事の衝撃が大きすぎた。

「嘘でしょ?この日の為に淘汰も10回済ませてLvも200まで上げたのに」

 以下、俺が新たに消去したモノと取得した刻印ね。

【生への執着】【核細胞保護】《生命信者》《生命信者》を消去して。

〖細胞活性化の刻印〗STAとLPに関係するデバフを無効化する。

〖大器晩成の刻印〗因子とパラメータに覚醒数200でスキル変化を追加する。

〖天才の刻印〗スキル変化に必要な因子とパラメータの覚醒数を15下げる。

〖地鎮式の刻印〗5%の確立で、畑に地鎮碑が立ち、畑として使用できない代わりに、隣接してる畑を含め耐久度を大幅に上げる。

 を取得した。取得したが、今回で全てが水泡に帰す。

 なんだってこんな事に…。


 暫らく放心状態だったが、先に進まないとこれ以上強くなれないのも事実。

 勇気を出して一歩踏み込んだ。

『これ以上Lvを上げると繁栄へ突入します。本当にLvをあげますか? Yes/No』

 固唾を飲みつつYesを選択。

『全ての能力が初期化されました。……タレントの候補を選出。選択肢を決定致しました』


 ここから新たなキャラメイクが始まるのだが、その前に幾つか重大な変化が。もうお腹いっぱいです…。

「えっと…」

 纏めるとこんな感じか。

・全能力をリセット。

・パラメータも因子も取得できない。

・HP、STA、COSTは繁栄到達時の値を参照とし、以後Lvアップでの変動無し。

・上記の3つ以外の数値も、後述のタレントの選出に影響する、

・超強力なタレントを1つ取得出来る。

・タレントを強化する、バロメータを取得出来る。

・Lv上限は100。

・Lv上げの費用は一律1億円。

・Lvはクラフトなどの様々な分野に補正を掛ける。

・倉庫の容量無限。

・ライセンスも消去され再取得不可

 どうして、そんな仕様にしたのかは不明だが、きっと目的があるんだろうな。

「取り敢えず、タレントとやらを見てみるか」


〔未来農業〕開墾速度と範囲が上昇し畑と作物とオブジェクトの耐久度も上昇し、壁や天井も開墾できる。

〔多種使役〕所縁のある使い魔を数種使役する。

〔空根性〕LPが1減る毎に、LPが100上昇しあらゆるダメージを1軽減する。

〔細胞活性〕LPに対する割合ダメージを無効化し、あらゆるダメージを20%軽減。

〔バンカー畑〕畑がタレットの四基付いたバンカーになる。作物の育成収穫は従来通り可能。

〔蛇使役〕所縁のある蛇系の使い魔を超強化して使役する。

〔影武者〕LPが30%以下の場合、自身と全く同じ見た目同じ能力の影武者を2体使役する。

〔墓所網羅〕ランタンのデメリットを無効化し、ランタン関連の効果を大幅に引き上げる。

〔鳥獣対策〕畑に電流柵と敵が近づくと爆発する風船を設置する。

〔熟練使い魔〕使い魔のアルゴリズムが超強化される。


「どれも凄まじい効果だな」

 そしてHP、STA、COSTは最終値を参照にして、LPが1.4E13(14兆)STAが12300000000、COSTが20000000000となった。

「んで、バロメータはと」

『バロメータ:〔喜〕〔怒〕〔哀〕〔楽〕の四つに分類され、それぞれ対応した条件に依ってゲージが増加。ゲージが100%の状態で発動する事で、一定時間タレントが強化される』

 となっていて、それぞれの増加条件は以下の通り。


・〔喜〕敵にダメージを与える

・〔怒〕ダメージを受ける

・〔哀〕デバフや状態異常を受ける

・〔楽〕時間経過


 となっている。

 一見〔楽〕が一番簡単にゲージを溜めれそうだが、条件が緩い分増加率は遅いんだろうな。


「さて、タレントを選ぶとして、どれを選ぶか…」

 これはかなり迷うな、ドッペルや免疫も消えてしまっている為、どれを選択しても以前の様に戦う事は出来ない。

 装備とペットのレインボーマンバとツチノコは健在なので、これを考慮してそれぞれを評価する。

 先ず〔未来農業〕から。もう書いてあること全部が強い。壁も天井も耕せるなんて革命だ。ただ、活躍するシチュエーションがやや限られるのが難点と言ったところか。

 次は説明がフワッとした〔多種使役〕で、所縁のある使い魔と言われてもね。今まで使役した事のある全種が対象というわけではない筈だから、これを取った自分のイメージがイマイチ掴めんのよね。

 お次の〔空根性〕は【生への執着】と[死への免疫]を足したような効果で超強い。

 その次は〔細胞活性〕で、これは【核細胞保護】の上位互換となっている。単体で割合ダメージを完封しダメージ軽減のおまけ付きだ。今回の有力候補と言える。

 お次は〔バンカー畑〕で、文面からしてそれは畑なのか? とも思うがそれは今更か。

 次は〔蛇使役〕で、これはイメージが湧きやすい。これまで使役してきた蛇系の使い魔といえば、白蛇から始まり最終的に<ヨルムンガルド>にまで変化し、長い事主力を担ってきた。これを選べば更に凶悪な蛇の使い魔を使役出来るのだから、これも最有力候補だな。

 最後は〔影武者〕これはドッペルとスワンプの超強化版といった感じで、条件さえ満たせば時間制限なしで使える極悪な使い魔だ。ただこれ単体だと条件の維持も含めやや扱いが難しいタレントと言える。

 そして残す3つはライセンスの代わりとなるタレントだ。

 ライセンスに関してだが、繁栄突入時に卒業又は殿堂入りという形で資格を剝奪され、代わりのタレントが用意されるとあり、〔墓所網羅〕〔鳥獣対策〕〔熟練使い魔〕の3つがこれに該当する。

 尚、剥奪されると言っても、専用エリアへの入場制限などは有資格状態と変わらないので、実質大した差は無いが、これまでと同様のビルドを組みたいのなら、これらの代替タレントを取得する必要がある分面倒ではある。

 ちなみに、俺は殿堂入りで資格を剥奪された。卒業との差異は報酬のアイテムやNPCとの接点のみで、タレントの性能には影響しないそうだ。

 さて、この3つでは〔熟練使い魔〕が真っ先に脱落する。理由は簡単、現段階では使い魔が居ないからだ。

 次は〔鳥獣対策〕だが、アビリティが消えてる以上、無いと以前のようなお手軽で使い捨てるに丁度良い畑が作れないので、欲しいところなのだが…他を押し退けてまでと言われると弱い。

 そして〔墓所網羅〕は有力候補の1つで、これが有ればランタンもペナルティなしで使えて性能も向上、ガーディアンも使えるので、近距離デバフと壁を同時に揃えられる非常にお得なタレントとなっている。

 これらを考慮して、今回選んだタレントは〔蛇使役〕

 畑は鍬があるから最低限拵えられるから、使い魔の確保を優先した。

「そしてバロメータは…」

 まあ、無難に〔楽〕を選んでおくか。


 という事で、ステータスはこのようになった。

 名前:テツ Lv:1

 LP:1.4E13 STA:12300000000 COST:20000000000

 タレント:〔蛇使役〕

 バロメータ:〔楽〕

 装備:[復興の道しるべ][シャツ][ズボン][靴][帽子][御霊の器][200フリーホルダー][フュージョンボックス][スチールランタン]×20

 装備の[100フリーホルダー]が変わってるのは、『ジャックオーランタン』が涅槃級に昇格した際の報酬で、ランタンが20個に増量してるのもそうだ。

「さて、試運転をしてみるか」


「「お待たせ」」

 繁栄を済ませ、PAに戻りボーっとしていると、ユキとユナも繁栄を済ませ戻ってきた。

「いやー… 参ったわ」

「同じく」

 2人とも、リセットは相当堪えた様で、げっそりした感じが伝わってくる。

 お互いの現状を確認するために、インベーダー狩りに出掛ける。

 既にアースの全域に降下してきており、衛星軌道上には無数のドロップシップが展開。

 地上戦と艦内戦両方を楽しめるそうだ。

 元を絶つのは人に任せ、俺らは地上の防衛に回る。

 西口からホームを出ると、在来種、悪党、善人、NPC、インベーダーの入り混じるカオスな空間。

 そして、よく見ると悪党はインベーダーの仲間扱いになっている様で、双方間ではダメージが発生していないし、インベーダー側も悪党を敵視していない。

(ふむ… ここに来て更にプレイヤーを二分化する様な仕様をぶち込む理由は何だ?)

 これまででさえ、そこそこのメリットしか無いにも関わらず、悪党に身を窶すのが一定数居る中、味方まで現れれば更に増える事間違いなしだ。

(寺門さん達や社長には何か考えがあるんだろうし、一介のプレイヤーが気にする事でもないか)

 思考を切り替え、目の前の事態への対応を考える。

「一旦退いて、格納庫辺りで試運転してから良い気がするがどうだ?」

「そうね」

「初陣でこれはね…」

 賛同を得られたので、ホームに引き返す。


 格納庫のネズミ駆除の依頼を受け、試運転を開始。

「テツ兄は何を選んだのかしら?」

 ユキからタレントとバロメータをを聞かれたので。

「俺は〔蛇使役〕と〔楽〕にしたよ」

 目の前を見ると、〔蛇使役〕によって使役された、5m位の白蛇がとぐろを巻いている。

「これって、テツ君が最初期に使役していた白蛇の大きいバージョン?」

「懐かしいわね」

 ユナもギルを演じていた頃に見ているし、ユキも当時を思い出し懐かしんでいる。

「正しく原点回帰って感じだけど、肝心なのは強さだよな」

 そう思っている所に、ネズミがやって来る。

「シャー!!」

 敏感にネズミの気配を察知した蛇がネズミに向け毒霧を散布。すると瞬く間にネズミが藻掻き苦しみ息絶えた。

「中々強いな」

「範囲も射程も申し分ないわね」

「威力はどうかしら」

 確かに、ネズミ相手では威力の程は測りかねるな。

 と、そこへ蛸型の宇宙生物が出現。

「シャー!!」

 今度は霧ではなく、ジェット噴射の様に毒を発射。

 それを浴びたタコは少しだけこちらへ近づいたものの、直ぐに動きが鈍化し最期は衰弱死した。

「威力も及第点ってところか」

 後は耐久面を調べれば、大体のスペックの把握は完了だ。

 少しの間格納庫内を歩き回り、ネズミが蠢く区画を発見。

 早速、蛇を嗾けてみると、碌にダメージを負わずにネズミの群れを駆逐。

「凄いな、パラメータ補正が無くてもこれか」

 これ、繁栄2回目で〔蛇使役〕を重ね取りしたら(もしかしたら重複できないかもしれんが)とんでもない強さになるな。

「んで、ここでバロメータを発動」

 これと言った演出も無くゲージが消費され、大蛇が二匹になる。

 そして30sec程で効果が切れ、一匹に戻った。

「秒間1%で100秒掛けて30秒強化か、まあ悪くないな」

 繁栄2回目以降の仕様次第では、あっと言う間に淘汰10回止めプレイヤーを凌駕出来るかもな。


「良し、俺の方の検証は済んだ。で、二人はどんな感じなんだ?」

 今度はユキとユナの構成を聞いてみる。

「私は〔専門魔導士〕と〔楽〕にしたわ」


〔専門魔導士〕クールタイム無しのファイアーオーブとアイススピアを使用可能。


「ほうほう、クールタイム無しでか。ところでパラメータ無しで魔法の威力って出るのか?」

「大丈夫だとは思うわよ? これまでの魔法とタレントの専用魔法は処理が別みたいだし」

 そうなのか、ってか俺の蛇も参照対象が変わっただけで、補正自体は受けてるから強かったって感じなのかな?

 と、そこへ巨大なネズミが登場。

「早速御出ましね、先ずはファイアーオーブ!!」

 杖から深紅の火球が射出され、巨大ネズミへ着弾。

 大体LPの二割ほどが削れ、怒りの形相でこちらへを向かって来る。

 その後も、アイススピアと交互に連射し、巨大ネズミを討伐。

「うーん…、回転は良いけど威力はあんまりね」

 独自の補正なのか、基本値が高いからなのか[魔力]が無い割にはダメージが出ていたが、一撃の重さがあるとは到底言えないな。

「それじゃバロメータ発動」

 そして、新たな巨大ネズミへファイアーオーブを発射するユキ。

「うわ、速い!」

 違いは一目瞭然で弾速が非常に速くなっている。

 続けてアイススピアを放ち、射程も大幅に伸びていることが判明した。

「弾速も射程も倍になってるみたいね」

 うん、火力の向上とはならなかったが、これはこれで非常に強力だな。


「そんじゃユナ、教えてくれ」

「私は〔巨大なリンゴ〕と〔楽〕にしたわ」


〔巨大なリンゴ〕半径100m内の敵を毎秒10㎝引き寄せる。


「毎秒10㎝!? いくら直接的なダメージが出ないとはいえ異常だろ」

 確か〖重力の刻印〗が毎秒1㎝だった筈だから、一気に10倍か。

 ただ、所詮は引き寄せるだけだ。俺とユキの検証の最中も、引き寄せてる様を見てはいたが、やはりチームプレイ前提という部分は変わっていない。

「せめて火力の出せそうなタレントが有れば良かったんだけどね…」

 ユナの場合は、内部の人間だったこともあって、普通じゃ成立しないビルドだった分、そのツケを払わされているのだろう。

 まあ、基本は俺とユキが一緒に居るので問題は無いか。

「さて、気を取り直してバロメータを発動するわね」

 イマイチ変化が分かり難く、少しの間変化を探し、漸く違いに気付く。

「これ、効果半径が倍の200mになってるっぽいわね」

 半径200mか、30秒だけとはいえ、急に毎秒10㎝も引き寄せられるようになるとか、PvPだと恐怖だな。

凄い久々の投稿。

ネタの捻出、仕様の変更への順応、娯楽への時間の浪費が重なって、遅くなってしまいました。

まだまだ明確な話の畳み方が思いつかないので、投稿ペースは遅いと思いますが、どうぞよろしくお願い致します。

それと、多くの添削ありがとうございます。

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